2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する羽田新ルート計画。羽田新ルート近くのマンション価格に影響は出ていないのか?
品川区内の中古タワーマンション相場への影響を調べてみた。
※他区の中古タワーマンション相場への影響については、こちら(港区、目黒区、新宿区、渋谷区)参照。
Google Earthで中古タワマンを選定
23区全体を一度に調べるのは大変なので、まずは羽田新ルートの影響が大きそうな品川区内を調査対象とした。なかでも大規模タワーマンションを対象に調べてみることにした。特に大規模タワーマンションを調査対象にしたのは、取引が盛んで相場が把握しやすいからだ。
まずは、羽田新ルートのおさらい。
品川区上空を通過する羽田新ルートは2ルート。A滑走路到着ルート(1時間当たり14回)とC滑走路到着ルート(1時間当たり30回)。
次の19地域が影響を受ける。
拡大図(PDF:450KB)
「羽田新ルートが通過する地域名(23区の町丁目)」より
- A滑走路到着ルート
大崎2丁目、大崎3丁目、大崎5丁目、勝島1丁目、勝島2丁目、上大崎2丁目、上大崎3丁目、西五反田1丁目、西五反田2丁目、西品川1丁目、西品川3丁目、東大井2丁目、東大井3丁目、東大井5丁目、東五反田5丁目、広町2丁目 - C滑走路到着ルート
東品川2丁目、八潮1丁目、八潮2丁目
A滑走路到着ルート近くのタワーマンションをどのようにして調べるのか?
SUUMOに品川区で登録されている「20階以上」の中古マンションにつき「地図表示」機能を使って拾い上げ、グーグルアースで確認していくことにした。たとえば、A滑走路到着ルート高度400mから大崎駅周辺は次のように見える。
(A滑走路到着ルート高度400mからの大崎駅周辺)
羽田新ルート近くの中古タワマン配置
品川区内でA滑走路到着ルート直下から水平距離で概ね200m以内に位置する主な中古タワーマンションは、次の4件。
※【 】内の距離は、A滑走路到着ルート直下から当該物件の中心までの水平距離を示す。
- 物件A【150m】(28階建て、202戸、07年10月竣工、駅徒歩2分)
- 物件B【180m】(27階建て、254戸、07年1月竣工、駅徒歩6分)
- 物件C【直下】(29階建て、271戸、04年1月竣工、駅徒歩4分)
- 物件D【E棟50m、W棟100m】(39階建て、1084戸、09年9月竣工、駅徒歩3分)
4つの物件の配置を次図に示す。
飛行機は600mから300mへと徐々に高度を下げていくので、国交省データによればルート直下の大型航空機による騒音レベルは74dBから80dBに上昇すると想定されている。
中古タワマン相場の推計方法
マンション売買・賃貸情報サイト「マンションマーケット」には、中古マンションの価格相場として、物件ごとに最大過去6年間の月別m2単価・坪単価が掲載されている(次図)。
そこで、上記で選定した羽田新ルート近くのタワーマンション4件につき、m2単価の推移を可視化してみることとした。
羽田新ルート近くの中古タワマン相場の推移
羽田新ルート近くのタワーマンション4件と品川区平均のm2単価の推移を次図に示す。
品川区平均の単価が上昇し続けているに対して、タワーマンション4件の単価は16年以降下落または頭打ちの傾向が見られる(ただし、物件Dだけは17年下期以降、上昇傾向が見られる)。
※区平均は中古タワマンに限らない、すべての中古マンションの平均(以下、同じ)。
タワーマンション4件の価格変動状況を比較しやすいように、13年5月の単価を100とした場合の変化を可視化したのが次図。
物件D(超大規模ツインタワー)以外は16年以降、下落または頭打ちの傾向が見られる。
第1フェーズ(15年7月~)、第2フェーズ(15年12月~)と国交省の説明会開催などにより徐々に羽田新ルート問題が世間に認識されていった結果、中古タワーマンションの価格に影響したのではないのか。
ただ、物件D(超大規模ツインタワー)の単価だけが17年下期以降、再び上昇したのはなぜなのか。不動産会社が事情を知らない外国人に「お買い得」として売りつけているのか……。
【データ更新】20年8月25日
20年7月までのデータを反映したグラフを次図に示す。
品川区平均の単価が上昇傾向にあるのに対して、タワーマンション4件の単価は全般的に下落傾向にある。
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