不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


新NISA|投資信託における国内株式と海外株式の買付金額「把握していない」(政府答弁)

第215回国会(24年11月11日~11月14日)の衆議院の質問主意書51件のなかに、11番目として新NISAに係る次の質問主意書が埋もれている。

松原仁 衆議院議員が11月11日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

※読みやすいように、一問一答形式に再構成。


質疑応答のポイント

松原仁 衆議院議員(無所属)

松原仁 衆議院議員
衆議院 予算委員会 24年2月28日 動画より)
松原仁 衆議院議員(9期、立憲民主党⇒無所属、早大商卒、68歳)

少額投資非課税制度(NISA)は株式や投資信託への投資で得られた利益について非課税とする制度であり、本年1月には、年間投資枠・非課税保有限度額が拡大し、非課税保有期間や口座開設期間が無期限化・恒久化した新NISA制度が開始された。資産運用をサポートするための制度として、税制を優遇することにより投資意欲を高めることが導入の狙いとされている。

金融庁の令和6年3月末時点でのNISA口座の利用状況調査によると、全体で買付金額が6兆円規模にまで拡大しているNISAであるが、現行制度では国内株式と外国株式について同一基準での運用がなされており、日本株式も外国株式も同じ優遇措置がなされている。


今後さらなる規模の拡大が見込まれる中で、日本株式と外国株式が同じ土俵にあることから、両株式の比率から日本の金融市場についての問題点が浮き彫りとなっているように見受けられるが、以下、政府の見解を問う。

NISA買付額6兆円の内訳(年代別)

問1:投資信託における国内株式と海外株式の買付金額?

金融庁の令和6年3月末時点でのNISA口座の利用状況調査によると投資信託の買付金額は3兆5000億円規模となっているが、証券会社の独自調査では8割が外国株と言われている。この真偽を明らかにされたい。また、令和6年3月時点での投資信託における国内株式と海外株式の買付金額を明らかにされたい

答1:把握していない

御指摘の「証券会社の独自調査」が具体的にどの調査を指すのかが明らかではないため、その内容に関するお尋ねについてお答えすることは困難である。


また、お尋ねの「令和6年3月時点での投資信託における国内株式と海外株式の買付金額」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、令和6年3月までに非課税口座(租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第37条の14第5項第1号に規定する非課税口座をいう。以下同じ。)において取得された投資信託の受益権に係る国内株式の取得価額の総額及び海外株式の取得価額の総額は把握していない

問2:国内金融商品取引市場の魅力向上、具体的に検討?

前項の事実が認められる場合、将来の第1次所得収支の拡大に貢献する面は否定できないが、国内の金融商品取引市場の魅力が危機に瀕しているのではないかという懸念を強く抱くという面の方がより強い印象を受ける。

政府としても、国内の金融商品取引市場の魅力向上に向けて、これまでにない施策を実施していくことが必要と考えるが、具体的に検討している施策があれば、明らかにされたい。

答2:「資産運用業の改革」「アセットオーナーシップの改革」・・・

御指摘の「国内の金融商品取引市場の魅力向上」を図ることは、政府として重要であると考えており、これまでも「資産運用立国実現プラン」(令和5年12月13日新しい資本主義実現会議資産運用立国分科会取りまとめ)に基づき、貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しするため、投資対象となる企業、資産運用会社等の各主体に対する働きかけを行ってきている。


具体的には、同プランにおいて示した「資産運用業の改革」、「アセットオーナーシップの改革」、「成長資金の供給と運用対象の多様化」、「スチュワードシップ活動の実質化」及び「対外情報発信・コミュニケーションの強化」に関する施策を行ってきている。

今後も引き続き、御指摘の「国内の金融商品取引市場の魅力向上」に取り組んでまいりたい。

問3:日本銀行が保有するETFを公募売出し(略)金融商品への投資を推進する施策を検討?

平成22年12月より、日本銀行は、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)の買い入れを行ってきた。その後、平成25年4月の量的・質的金融緩和の導入により日本銀行によるETFの購入額は飛躍的に拡大した。そして、日本銀行によるETF購入は令和6年3月終了した。


令和6年4月の日本放送協会の報道によると、日本銀行が保有するETFを時価換算すると約74兆円の価値があるとされている。


そこで、今後のNISA制度のさらなる普及と定着に向けて、日本銀行が保有するETFを公募売出し、同ETFの購入分について、さらなる非課税枠の創出など、金融商品への投資を推進する施策を検討するか。政府の見解如何。

答3:引き続き必要な検討を行ってまいりたい

お尋ねの「日本銀行が保有するETFを公募売出し、同ETFの購入分について、さらなる非課税枠の創出など」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、金融商品への投資を推進する施策については、非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(いわゆる「NISA」)の活用促進等、必要な取組を実施しており、引き続き必要な検討を行ってまいりたい

雑感

新NISAはオルカン(eMAXIS Slim全世界株式)とS&P500に人気が集中。その結果、キャピタルフライト(資本逃避)が懸念されている。

自国通貨建ての資産を防衛するという観点からなのか、松原仁議員の次の質問。

証券会社の独自調査では8割が外国株と言われている。この真偽を明らかにされたい。

また、令和6年3月時点での投資信託における国内株式と海外株式の買付金額を明らかにされたい。

政府は、「証券会社の独自調査」がどの調査を指すのかが明らかではないため、「お答えすることは困難」とはぐらかす。さらに、「国内株式の取得価額の総額及び海外株式の取得価額の総額は把握していない」と言い放つ。

国内の金融商品取引市場の魅力向上策として、政府は「資産運用立国実現プラン」に基づき、「資産運用業の改革」「アセットオーナーシップの改革」「成長資金の供給と運用対象の多様化」「スチュワードシップ活動の実質化」「対外情報発信・コミュニケーションの強化」を掲げているが、実効性はあるのか……。

あわせて読みたい

2024年6月1日、このブログ開設から20周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.