都議会議員に交付されている政務活動費は適切に使われているのか。
都議会議員の多い5会派(自民・都ファ・公明・共産・立憲)のなかで、「政務活動費」に占める「人件費」の割合が目立つのが自民党であることは既にこのブログで紹介した(都議会|5会派の「政務活動費」)。
本日は、都議会がHPで公開している「収支報告書・会計帳簿・領収書等」を元に自民党の23年度の「政務活動費」につき、さらに深掘りする。
※以下、敬称略
「政務活動費」支出内訳
共通・議員合計「政務活動費」の支出内訳(23年度)を次図に示す。
※自民党に交付された23年度の「政務活動費」(1億6,950万円)は、「自民党」(≒議員共通)と30名の各議員(24年衆院選辞任1名、23年区長選辞任2名、23年10月死去1名を含む)で帳簿が整理されている(執行残約829万円、執行率95%)。
条例で規定された全14項目のうち、最も多いのは「広報紙(誌)発行費」。次いで「人件費」「事務所費」「事務費」。
「人件費」「事務所費」「事務費」といった「調査活動補助費」としての固定的経費を除くと、ほとんどが「広報紙(誌)発行費」を占めていることが分かる。
「政務活動費」月次変化
共通・議員合計「政務活動費」の月次変化(23年度)を次図に示す。
共通・議員合計とも、年度末になると「広報紙(誌)発行費」が激増している。
※各月の棒グラフの左側が共通、右側が議員合計を示している。
議員ランキング
自民党に交付された23年度の「政務活動費」(1億6,950万円)のうち、「都議会自民党」(≒議員共通)分(約6,428万円)と執行残(約829万円)を除く約9,694万円につき、30名の各議員(24年衆院選辞任1名、23年区長選辞任2名、23年10月死去1名を含む)の支出内訳を次図に示す。
23年途中で辞任・死去した下記4名については、金額の多寡留意要。
- やまだ加奈子(2期、北)23年4月23日:北区長選挙、当選
- 清水孝治(4期、立川)23年9月3日:立川市長選挙、落選
- 髙島なおき(6期、足立)23年10月2日:死去
期数と政務活動費との関係は特に見られない(次図)。
政務活動費
「政務活動費」が最も多いのは石島秀起 445万円(1期、中央)、最も少ないのは(※1)林あきひろ 90万円(2期、北多摩第三)。その差355万円。
※1:最も少ないのはやまだ加奈子 9万円(2期、北)だが、23年4月16日辞任⇒北区長選挙当選。
多い議員:石島秀起 445万円(1期、中央)
「政務活動費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:石島秀起 445万円(1期、中央)
- 2位:渋谷のぶゆき 440万円(1期、北多摩第四)
- 3位:浜中のりかた 439万円(1期、西東京)
- 4位:三宅正彦 438万円(4期、島部)
- 5位:柴崎幹男 437万円(3期、練馬)
- 6位:ほっち易隆 436万円(2期、足立)
- 7位:小松大祐 434万円(3期、世田谷)
- 8位:小宮あんり 433万円(4期、杉並)
- 9位:早坂義弘 427万円(5期、杉並)
- 10位:松田康将 427万円(2期、板橋)
少ない議員:おじま紘平 198万円(2期、練馬)
「政務活動費」が少ない議員上位10名を以下に示す。
やまだ加奈子(23年4月16日辞任⇒北区長選挙当選) を除くと、林あきひろ・田村利光の少なさが目立つ。
※千円以下は四捨五入
- 1位:★やまだ加奈子 9万円(2期、北)
- 2位:林あきひろ 90万円(2期、北多摩第三)
- 3位:田村利光 91万円(2期、西多摩)
- 4位:鈴木章浩 130万円(5期、大田)
- 5位:三宅しげき 170万円(7期、世田谷)
- 6位:★清水孝治 183万円(4期、立川)
- 7位:■髙島なおき 188万円(6期、足立)
- 8位:平田みつよし 221万円(1期、葛飾)
- 9位:本橋たくみ 249万円(1期、北多摩第二)
- 10位:こいそ明 251万円(6期、南多摩)
広報紙(誌)発行費
「広報紙(誌)発行費」が最も多いのは浜中のりかた 428万円(1期、西東京)、最も少ないのは 0円(10名)。
多い議員:浜中のりかた 428万円(1期、西東京)
「広報紙(誌)発行費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:浜中のりかた 428万円(1期、西東京)
- 2位:鈴木純 370万円(1期、台東)
- 3位:磯山亮 335万円(1期、小平)
- 4位:小松大祐 302万円(3期、世田谷)
- 5位:石島秀起 283万円(1期、中央)
- 6位:早坂義弘 282万円(5期、杉並)
- 7位:こいそ明 251万円(6期、南多摩)
- 8位:山加朱美 235万円(5期、練馬)
- 9位:ほっち易隆 224万円(2期、足立)
- 10位:柴崎幹男 211万円(3期、練馬)
「政務活動費」に対して「広報紙(誌)発行費」の占める割合が9割を超える議員は以下の6名。
- 磯山亮 100%(1期、小平)
- こいそ明 100%(6期、南多摩)
- 浜中のりかた 97%(1期、西東京)
- 鈴木純 92%(1期、台東)
少ない議員:0円(10名)
「広報紙(誌)発行費」がゼロ円の議員10名を以下に示す。
- ★やまだ加奈子(2期、北)
- 林あきひろ(2期、北多摩第三)
- 田村利光(2期、西多摩)
- 鈴木章浩(5期、大田)
- 三宅しげき(7期、世田谷)
- ■髙島なおき(6期、足立)
- 菅野弘一(3期、港)
- 伊藤しょうこう(2期、八王子)
- 宇田川聡史(5期、江戸川)
- 川松真一朗(3期、墨田)
人件費
「人件費」が最も多いのは宇田川聡史 342万円(5期、江戸川)、最も少ないのはゼロ(5名)。
多い議員:森村隆行 217万円(2期、青梅)
「人件費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:宇田川聡史 342万円(5期、江戸川)
- 給与2人分(実際の支出は1/2に按分)
- 2位:小宮あんり 280万円(4期、杉並)
- 3位:川松真一朗 279万円(3期、墨田)
- 4位:吉住はるお 242万円(1期、新宿)
- 5位:菅野弘一 239万円(3期、港)
- 6位:伊藤しょうこう 189万円(2期、八王子)
- 7位:■髙島なおき 171万円(6期、足立)
- 8位:松田康将 156万円(2期、板橋)
- 9位:三宅正彦 144万円(4期、島部)
- 10位:小松大祐 133万円(3期、世田谷)
ゼロ議員:5名
「人件費」がゼロの議員は、以下の5名。
下記5名は、総じて「広報紙(誌)発行費」の割合が高い。
- 平田みつよし (1期、葛飾)
- 鈴木純 (1期、台東)
- 浜中のりかた (1期、西東京)
- 磯山亮 (1期、小平)
- こいそ明 (6期、南多摩)
事務所費
「事務所費」が最も多いのは石島秀起 112万円(1期、中央)、最も少ないのはゼロ(5名)。
多い議員:石島秀起 112万円(1期、中央)
「事務所費」が多い議員上位10名を以下に示す。
※千円以下は四捨五入
- 1位:石島秀起 112万円(1期、中央)
- 2位:三宅正彦 102万円(4期、島部)
- 3位:吉住はるお 96万円(1期、新宿)
- 4位:星大輔 91万円(1期、町田)
- 5位:渋谷のぶゆき 91万円(1期、北多摩第四)
- 6位:川松真一朗 88万円(3期、墨田)
- 7位:林あきひろ 79万円(2期、北多摩第三)
- 8位:柴崎幹男 73万円(3期、練馬)
- 9位:伊藤しょうこう 70万円(2期、八王子)
- 10位:山加朱美 68万円(5期、練馬)
「政務活動費」に対して「事務所費」の占める割合が2割を超える議員は以下の8名。
- 1位:林あきひろ 88%(2期、北多摩第三)
- 2位:石島秀起 25%(1期、中央)
- 3位:星大輔 25%(1期、町田)
- 4位:三宅正彦 23%(4期、島部)
- 5位:鈴木章浩 23%(5期、大田)
- 6位:吉住はるお 23%(1期、新宿)
- 7位:川松真一朗 22%(3期、墨田)
- 8位:渋谷のぶゆき 21%(1期、北多摩第四)
ゼロ議員:5名
「事務所費」がゼロの議員は、以下の5名。
- 平田みつよし (1期、葛飾)
- 鈴木純 (1期、台東)
- 浜中のりかた (1期、西東京)
- 磯山亮 (1期、小平)
- こいそ明 (6期、南多摩)
【参考】政務活動費について
政務活動費とは、議員が行う調査研究、情報収集、政策立案、広報・広聴活動等に要する経費に対して交付されるもの。政務活動費の使途基準は、東京都政務活動費の交付に関する条例「別表」により次表のように定められている。
政務活動費の交付対象は、会派(所属議員が1人の場合を含む)。交付額は、議員1人につき月額50万円×所属議員数(政務活動費の概要 | 東京都議会)。
東京都議会の「政務活動費関係規程」を以下に列挙しておく。
- 地方自治法(抄)
- 東京都政務活動費の交付に関する条例
- 東京都政務活動費の交付に関する条例施行規則
- 東京都政務活動費の交付に関する条例施行規程
- 東京都政務活動費調査等協議会要綱
- 東京都政務活動費に係る領収書等の写しの閲覧に関する要綱
雑感
政務活動費は自己PRのため!?
都議会議員の多い5会派(自民・都ファ・公明・共産・立憲)のなかで、「政務活動費」に占める「広報紙(誌)発行費」の割合の低さが目立つのは自民党である。
23年度の「政務活動費」(交付額1億6,950万円、執行残約829万円、執行率95%)は、「人件費」「事務所費」「事務費」といった「調査活動補助費」としての固定的経費を除くと、ほとんどが「広報紙(誌)発行費」を占めている(次図)。
年度末になると「広報紙(誌)発行費」が激増している(次図、再掲)。
「広報紙(誌)発行費」が自己PRのため、特に年度末の予算消化として使われている状況が透けて見える。
ただ、広報紙(誌)発行費がゼロ円の都議が10名もいる(都民ファーストは1名だった)。
「政務活動費」が最も多いのは石島秀起 445万円(1期、中央)、最も少ないのは(※1)林あきひろ 90万円(2期、北多摩第三)。その差355万円。
※1:最も少ないのはやまだ加奈子 9万円(2期、北)だが、23年4月16日辞任⇒北区長選挙当選。
かつては「政務調査費」と呼ばれ、交付目的は「議員の調査研究」
そもそも「政務活動費」は、かつて「政務調査費」と呼ばれ「議員の調査研究」のために交付されていた。ところが、自治法の一部改正(2012年8月29日)のタイミングで議員修正によって「政務調査費」から「政務活動費」に改称された。そのときに交付目的が「議員の調査研究」から「議員の調査研究その他の活動に資するため」と変更され、使途が拡大されたのである。
その使途に関して住民から批判が絶えない一方で、議員の間には、「調査」に関わらせていることが使途を窮屈にしているという不満が少なくなかったといいます。地方議会議長会三団体からは、この政務調査費については、①支出と調査研究活動の厳格な関連性が要求され、政務調査活勣が自己抑制的になる傾向がある、②住民への議員活動の成果の報告が政務調査費の対象となるかが微妙である、との理由から、「現行地方自治法上、調査研究活動に特化されている政務調査費制度を見直し、幅広い議員活動等に充てることができることを明確にするよう法改正を行うこと」という要望が自民党等に寄せられていました。
そこで、「政務調査費」を「政務活動費」に改称し、交付の目的について100条14項に「その他の活動」の6文字を付加して「議員の調査研究その他の活動に資するため」とする改正が行われたのです。(大森 彌「自治体議員入門」第一法規 2021/11/24,p75-76)
政務活動費は、議員報酬とは異なり、「交付することができる」となっていて、支給可否も額も任意。すでに政務活動費が既得権益視されているなか、政務活動費を2016年に廃止した自治体がある。大阪市泉南市(人口6.5万人、定数18人)だ。それまで1か月あたり5万円支給されていた政務活動費を廃止した理由は次のとおり。
廃止理由は、①条例や法によって、あるいは制度で規制されたものを、政務活動費と称して費用を支弁されていることが議員活動そのものに規制を加えることになり、議員の自主的活動の中で、自律的な政策提言を行うことのほうが、より柔軟な政治活動を行えるのではないかと考えること、②政務活動費の支給などを受けずに、議員が、その自主的活動の中で、自律的な政策提言を行うことのほうが、より柔軟な政治活動を行えるのではないかと考えること、③議会議員は、個々の自己責任で自由に議員活動を行うべきであり、政務活動費の交付によって、その活動に制限が及ぶことがないよう、現下の社会情勢等も勘案し、条例廃止を提案するということでした。
(同上,p88)
都議会にいる現在の維新議員は1名。松田りゅうすけ氏(1期、大田)。次回都議選で(25年7月予定)、維新候補が「身を切る改革」として「政務活動費」の廃止を訴えることはないのか……。