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磯田道史著『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)

『武士の家計簿』の著者にして歴史学者である磯田道史氏の『天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災』(中公新書)を読了。

天災を勘定に入れて日本史を読み直す筆者の精力的な作業によって、災害から命を守る先人の知恵が浮かび上がる。歴史書としてもまた防災書としても読みごたえのある1冊。


もくじ

振動は4日間、火山灰は12日間

富土山が噴火したら、東京では目を守るゴーグルか飛ぶように売れるという著者の予言。

振動は4日間、火山灰は12日間

(前略)噴火による振動は4日間続いたらしい。(中略)

しかし、噴火被害の本番は降灰がやんでからだ。12月5日、12歳の秋田藩主は、行列を仕立てて、江戸の菩提寺、総泉寺(当時は現・台東区橋場二丁目にあった。関東大震災後、板橋区小豆沢に移転)に参拝した。ところが、灰に悩まされた。「風が少しあると、町屋の上の砂を吹き上げた」。7日には岡本も砂で目をいためた。「風が砂を家の上より吹き落とし、世間は、ほこりが立って目に入って、ことごとく難儀」したという。目を赤くした岡本に、子どもの藩主が「どうしたのか」と尋ね、岡本は「急ぎ馬に乗り(目をいためた)」と返答したほどだ。

 火山灰はガラス質。富土山が噴火したら、東京では目を守るゴーグルか飛ぶように売れることを予言しておく

(P57/第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火)

※16年10月8日以来、約2年半ぶりに小規模な噴火が発生した阿蘇山は大丈夫だろうか……。

大都市の高潮被害は過去のものではない

1917年に東京を襲った台風による高潮の影響で、築地や銀座、歌舞伎座付近までも水浸しになったという。

大都市の高潮被害は過去のものではない

(前略)1917(大正6)年10月1日、東京に最低気圧953ヘクトパスカル、最大風速40メートルの台風がきた。東京湾の潮位は海抜(東京湾平均海面りT.P.)3.1メートルまでみるまに上がり、高潮が市街に流れ込み、約500人が溺死した。現代人の多くは忘れているが、築地はもちろん、木挽町(現在の銀座、歌舞伎座付近)までも水浸しになった。(中略)
 長い時間でみると、高潮は信じられない高さで大都市を襲っている。大都市のゼロメートル地帯の高潮対策が重要だ。地下鉄の防水なども徹底しておきたい。津波と違い、高潮は数日前に来襲がわかる。スーパー台風がきそうになったら、低地の老人・子どもを早めに高台に移しておく心積もりや避難計画が必要だ。

(P109-110/第3章 土砂崩れ・高潮と日本人)

※巨大台風による高潮では、墨田区の99%、葛飾区の98%、江戸川区の91%が浸水するとされている。
⇒「墨田99%、葛飾98%浸水!巨大台風による高潮浸水想定 」参照。

津波時の川は「三途の川」と心得よ

河川をつたう津波は足がく、河口部ではしばしば時速30km(秒速8.3m)を超え、陸上の2~3倍の速さで襲ってくるという指摘。

津波時の川は「三途の川」と心得よ

(前略)この津波を生き残った牟岐町の中山清さんから、話を伺ううち、私は、人命にかかわる重大な教訓を得た。それは「津波の時は、なるべく川や橋に近づくな」ということだ。(中略)ところが、河川をつたう津波は足が速い。河口部ではしばしば時速30キロ=秒速8.3メートルを超え、陸上の2~3倍の速さで襲ってくる。川を渡って逃げようにも逃げきれず、川を高速でさかのぼる津波にさらわれる人も出たようだ。(中略)

 川を渡らないと高台に行きつけない場所に住んでいる人の避難はまことに悩ましいのだが、「近道をしよう」などと考えて安易に川に近づき、橋を渡ろうとしてはいけない。津波の時の川はまさに三途の川。あの世への近道になることもある。

(P169-170/第6章 東日本大震災の教訓)

※河川沿いのマンションには、「羽虫の襲来リスク」や「砂塵・土埃、バカ騒ぎリスク」だけでなく、「洪水リスク(津波を含む)」があることを認識しておきたい。
⇒「河川沿いのマンションのデメリット(まとめ)」参照。

本書の構成

6章構成。全215頁。

第1章 秀吉と二つの地震
第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
第4章 災害が変えた幕末史
第5章 津波から生きのびる知恵
第6章 東日本大震災の教訓

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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