東京都は3月29日、「耐震診断が義務付けられている建築物の耐震診断結果」を公表。公表対象となった建物は、旧耐震基準の建築物のうち、「要安全確認計画記載建築物(特定緊急輸送道路沿道建築物)」(449件)と「要緊急安全確認大規模建築物」(398件)。
震度6強で3割倒壊 都、旧耐震基準の251棟に恐れ(日経)
東京都は3月29日、旧耐震基準で建てられた建築物の耐震診断結果を公表。東大教授は「自治体が建物名まで公表する制度は、耐震化の必要性が世の中に浸透した結果」だという。
震度6強で3割倒壊
都、旧耐震基準の251棟に恐れ 改修など対策急務東京都は29日、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建築物の耐震診断結果を公表した。震度6強以上の地震で倒壊する危険性が「高い」建物は156棟に上った。危険性が「ある」建物を含めると、調査対象の3割にあたる251棟で倒壊の恐れがある。
(略)
商業施設「渋谷109」が入居する道玄坂共同ビルは危険性が「高い」とされた。渋谷のランドマークだけにテナントからも耐震改修への要望が強く寄せられていたといい、同ビルは昨年12月に設計に着手。19年度に工事に入る予定だ。(略)
東大生産技術研究所の中埜良昭教授(耐震工学)は「自治体が建物名まで公表する制度は、耐震化の必要性が世の中に浸透した結果ともいえる。解決策がすぐ見つからない事業者も、耐震化を本気で考えなければならないフェーズに入った」と指摘する。
倒壊・崩壊する危険性が高いマンションは7件(23区)
今回耐震診断の結果公表されたのは、「要安全確認計画記載建築物」(449件)と「要緊急安全確認大規模建築物」(398件)。
特に衝撃的なのは、公的施設だけでなく、マンション名も診断結果とともに公開されていること(23区 PDF:540KB)。
23区で公開されたマンション(共同住宅)は、全部で53件。Ⅰ評価(大規模の地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い)とされているのは7件。Ⅱ評価(大規模の地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性がある)とされているのは15件(次図)
※要安全確認計画記載建築物(特定緊急輸送道路沿道建築物)とは、敷地が特定緊急輸送道路に接する旧耐震基準の建築物のうち、大地震で倒壊した場合、全面道路の過半を閉塞する恐れのある建築物のこと。
筆者が調べた7件の建物概要は次のとおりだ。
※実際には具体的な物件名で公開されている。
- A物件(品川区)【築42年】14階建て、107戸
- B物件(目黒区)【築46年】15階建て、150戸
- C物件(大田区)【築43年】14階建て、266戸
- D物件(世田谷区)【築48年】11階建て、124戸
- E物件(板橋区)【築46年】14階建て、144戸
- F物件(足立区)【築43年】12階建て、107戸
いずれも築40年を超えている。
2015年3月31日までに耐震診断を実施する義務は課せられているが、耐震改修等(建て替えを含む)の実施は努力義務となっている。
いくら助成金が出るといっても、工事費全額を補助してくれるわけではないので、改修や撤去・建て替えは難しいのではないか。
マンション実名が晒され、資産価値に影響…
そんな無理難題を押し付けられた「要安全確認計画記載建築物」の住人は困っているのではないか?
なのに「倒壊し、又は崩壊する危険性が高い」という都のお墨付きをもらって、もはや転売することも難しそうだ。
マンションの実名まで晒していいのだろうか? 資産価値に影響が……。
小池都知事のスタンドプレーかというと、そうではない。
2013年11月に改正された「建築物の耐震改修の促進に関する法律」により、耐震診断の結果を公表することが定められているのである。
※詳しくは、「建築物の耐震改修の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」第22条(法第9条の規定による公表の方法)参照。
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