不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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老朽マンションに出口戦略はない!『すべてのマンションは廃墟になる』

2月10日に発売された、榊淳司先生の9冊目『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)を読了。

帯に記されたキャッチコピーは、とても刺激的。「どうすれば マンションの粗大ゴミ化を食い止められるのか」


もくじ

すべてのマンションは廃墟になる

ブラックリストに載ると人気物件は買えない!?

販売側は顧客の過去の購入履歴やトラブル履歴データを持っているので、ブラックリストに載らないように気をつけようという話。

新築マンションの抽選に当たる方法

(前略)消費者側にも、したたかな人がいる。わざと何も知らないふりをして、自分はいかにもトラブルを起こさない「いい客」に見せようとするお方だ。
 しかし、販売側を舐めてはいけない。彼らはマンション購入希望者についてのビッグデータを持っている。「モデルルーム訪問は初めて」と言うのなら話は別だが、2件か3件でも訪問履歴があれば、すぐに顧客特性が出てくる。もちろん、過去の購入履歴やトラブル履歴もわかる。
 彼らのブラックリストに載ってしまうと、人気物件はまず買えない。そういう人が買える新築マンションは、竣工済みのものだけ。それも、「現況有姿(そのままの状態)で確認・承諾しました」という書類に、署名捺印することが条件になるはずだ。(以下略)

(P63/第2章 35年ローンで手に入るのは廃墟化マンション?)

※多くのモデルルームを見てなかなか決め切れない人の接客を、時間の無駄と考えている不動産会社は多い。
⇒「5物件目からはブラックリスト!? モデルルーム見学」参照。

老朽マンションに出口戦略はない

この国には分譲マンションの「終わり」を想定した出口戦略がほとんどないという指摘。

老朽マンションに出口戦略はない

(前略)そして、この国には分譲マンションの「終わり」を想定した出口戦略がほとんどない。わずかにあるそれは、まったくの出来損ないか、もしくは未完成品である。
 すべての分譲マンションの区分所有者が今考え、さらに立ち向かわねばならないのは、管理組合のなかで「みんな仲良くしましょう」という目先のイベントを企画することではない。
 分譲マンションという、制度的には未完成とも言える日本の住居形態は、必ずや「終わり」のときを迎えることを正しく認識し、その終末期に向けてどのような道筋をつけるか、ということである。
 今はまだハードランディングである廃墟化しか見えていない。そこで、ここからはもっとなめらかに終末へといざなえるソフトランディングについて考えてみたい。

(P140-141/第6章 なぜマンションを建て替えられないのか)

※東京都はマンションの老朽化問題に取り組み始めたところ。
⇒「都パブコメ「分譲マンション適正管理促進制度」を読み解く」参照。

滞納5年で所有権を管理組合に移転するという提案

管理費滞納問題を解決するために、滞納5年で所有権を管理組合に移転するという大胆な提案。

5年以上管理費滞納は組合が所有権を自動取得

(前略)私としては次のような制度を作ればよいと考える。

  • 滞納が5年分に達した場合は、所有権が管理組合に移転する。


 滞納が5年分に達した場合、管理組合は自らの債権を証明するだけのごく簡単な裁判で、その住戸を競落したのと同じ状態にできる、という制度だ。
 仮にこの制度ができた場合、滞納者はなるべく支払おうと考えるはずだ。この制度があること自体で、世の中の管理費等の滞納の多くを防げるのではないかと思う。(以下略)

(P175/第8章 マンション廃墟化を食い止めるために)

※管理費5か月以上滞納で、名前が掲示板に張り出されるマンションもある。
⇒「5か月滞納でさらし者!『マンション サバイバル時代』」参照。

本書の構成

9章構成。全211頁。

第1章 マンションが粗大ゴミになってしまった
第2章 35年ローンで手に入るのは廃墟化マンション?
第3章 あなたのマンションは何年もつのか?
第4章 管理組合がマンションを廃墟化させる
第5章 管理組合が果たすべき役割
第6章 なぜマンションを建て替えられないのか
第7章 穴だらけの区分所有法
第8章 マンション廃墟化を食い止めるために
第9章 廃墟化が見えたマンションから逃げ出す方法

すべてのマンションは廃墟になる

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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