不動産プロデューサー牧野知弘著『街間格差-オリンピック後に輝く街、くすむ街』中央公論新社(2019/1/9)を読了。
不動産価値だとか、リセールバリュー(再販価値)とかが気になって仕方がない人におススメしたい1冊。
揺らぐ「駅から徒歩何分」という価値基準
2020年以降は、「駅から徒歩何分」という絶対的な価値基準が、住まい選びの条件としては後方へと追いやられるという見方。
揺らぐ「駅らか徒歩何分」「都心まで電車で何分」という価値基準
(略)これまでにあった「駅から徒歩何分」という絶対的な価値基準が、住まい選びの条件としては後方へと追いやられ、自分たちが根を下ろす足元の街の環境や機能へ、あらためて目を向けることになりそうです。
駅から少し離れれば、都内でも自然が豊かな住宅地は多くあります。東京とは思えないような静かな住宅地も見つかります。都心のタワーマンションを背伸びして選び、着飾った生活を送ろうとせずとも、都内にはすでに住みやすい街はちゃんとあるのです。
そしてそれらの街が再発見されることで東京の住まい選びは、不動産デベロッパーが作った「マンションポエム」と那楡される広告宣伝に惑わされるようなものでなく、じっくりと腰を据えて住むべき一街」を選ぶ、より高いレベルのものに変わっていくはずです。(P74-75/第2章 2020年以後)
※不動産価値を気にする人は多いが、羽田新ルートがマンション価格に影響することを気にする人は多くないのでは(羽田新ルート|マンション価格への影響(まとめ))。
「住まい=資産」という考え方からの決別
「住まい=資産」という考え方から決別したほうが良いという。
住まいの値段に振リ回されるな
(略)これまでの日本人の住まい選びにバイアスをかけてしまっている概念として、「住まいが値上がりするか」「値下がりするか」という価値観があります。実際、週刊誌の特集などで「値上がるマンション、値下がるマンション」といった特集を組むと売れ行きが良いと聞きます。
しかしこれからの住まい選びでは、この「住まい=資産」という考え方と早く決別したほうが良いようです。(略)
しかし住まいの選択肢が増加するこれからは、家の値段の上下に一喜一憂するような視点を捨て、あくまで自分が住みたい、生活の根を下ろしたいと思える「街」をじっくりと、背伸びをしない範囲で選ぶべきです。(略)(P158-161/第3章 街間格差)
※若いうちは「住まい=資産」という考え方に拘泥するのかもしれないが、あと何年マンションに住めるのかという視点も重要(人生100年時代の住宅すごろく|あと何年マンションに住めるのか?)。
ライフスタイルに応じた「街選び」をする時代
これからは、あくまで自分のライフスタイルに応じた「街選び」をする時代になるという。
この区ならあの「街」に住もう
これからの住まい選びは、ただ単に交通利便性の良い場所だとか、お洒落な街並みへの憧れで選ぶものではありません。まして住宅ローンの支払い可能額やマンションブランドだけで選ぶものでもなくなります。これまでのように住まいが「一世一代のお買い物」という時代が終わってしまうからです。
つまり、これから先は、あくまで自分のライフステージやライフスタイルに応じた「街選び」をする時代になるということです。住まいを「買う」もよし、「借りる」もよし、今よりも、もっと柔軟な思考で捉えることができるのです。(略)(P165/第4章 輝く街、くすむ街)
※年老いて足腰が弱くなったとき、あるいは車椅子のお世話になったときのことを想像すると土地の起伏はとても気になる。環境にやさしい自転車を使えること、年をとって足腰が弱ったときのことなどを考慮し、居住地周辺は平坦地を選びたい。
本書の構成
5章構成。全267頁。
第1章 2020年以前 何が東京を形作ったのか
第2章 2020年以後 「働く」「暮らす」東京の再発見
第3章 街間格差 あなたの人生は住む「街」で決まる
第4章 輝く街、くすむ街 この区ならあの「街」に住もう
第5章 東京の未来 「住まい探し」から「街探し」の時代へ