東海道・山陽新幹線のグリーン車両の座席収納 ポケットで見かける月刊誌『Wedge』(ウェッジ)。
18年10月号の特集は『マンション サバイバル時代』。裏表紙は橋本環奈。
全18頁、5つのパートで構成されている。
- PART 1:「老朽化マンション」の不都合な真実
- PART 2:マンションの本当の価値は管理組合が握る
- PART 3:住民合意、資金、容積率… 厳しいマンション建て替え
- PART 4:憧れのタワーマンション 購入後に待つ困難
- PART 5:「マンション自治」を進める法整備を
ブログ読者の興味を引きそうなところ3か所を紹介しょう。
「PART 2:マンションの本当の価値は管理組合が握る」として、恐ろしい事例が紹介されている。
管理費5カ月以上滞納で、名前が掲示板に張り出される
管理費滞納者の問題を解決する手段として、イニシア千住曙町(24階建て、総戸数515戸)では、管理費5カ月以上滞納で、部屋番号と名前が掲示板に張り出されるという。
管理費に関して管理組合が頭を悩ます問題のひとつに、滞納者の問題がある。イニシア千住曙町では、厳格なルールを定めている。
組合の財務会計細則には「5カ月以上管理費を滞納した場合は、部屋番号と名前を掲示板に張り出す」と明記してある。現に、掲示板には1人の滞納者の名前が張り出されていた。それでも払ってくれないので、應田氏は「近く法的措置を取るつもり」という。
こうした法的な問題に備えて、管理組合法人が弁護士とも顧問契約している。一人でも滞納者が出ると、堤防の穴が崩れるように滞納者が続出するリスクがある。それだけに厳しくする必要があるが、このマンションのように掲示板に名前を張り出すというのは珍しい。(P17)
滞納者が続出するリスクを避けるために、5カ月以上滞納者の名前を開示板に張り出すとは……。
財務会計細則にこの”さらし者作戦”を取り込むことに多くの住人が賛成したのだろうが、いざ自分がそのような立場に追い込まれた場合のことを想像したのだろうか。恐ろしや~。
「PART 5:『マンション自治』を進める法整備を」として、有識者や本省局長らのコメントが掲載されている。
マンションの「管理」に関する法整備は進んでいない
鎌野邦樹 早稲田大学法科大学院教授・日本マンション学会会長によれば、マンションの「管理」に関する法整備は必ずしも進んでいるとはいえないという。
―マンションの「管理」に関する法整備は、進んでいるのか
【鎌野】必ずしも進んでいるとはいえない。例えば、管理費滞納に関して、管理費滞納債権の取り立てを、抵当権に優先するなどの立法措置も検討すべきだろう。また所有者不明住居の処理も、組合の負担が軽くなることが望ましい。このように、10年後には顕在する問題に備えて、今のうちから組合をサポートする法整備の議論を行う必要があるだろう。現時点で組合ができることは限られている。まじめに活動する組合に対して、行政が支援しやすくすることも必要だろう。(P28)
本書では言及されていなかったが、組合をサポートする法整備の議論のひとつとしては、都が7月18日に公表した「東京における分譲マンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み 素案(案)」がある。
※詳しくは、「画餅!? 都の老朽化対策「要届出マンション」」参照。
国土交通省住宅局長、新築戸数の総量規制はできない
石田優 国土交通省住宅局長は、新築戸数の総量を規制することはできない、市場経済の中で開発業者がどう判断するかだという。
―日本の人口が減少する中で供給過剰を防ぐため新築戸数の総量を規制するような枠をはめる考えはないか
【石田】それは難しい。居住の自由とも関係してくるので、住宅の数を規制することはできない。役所として情報を提供し、市場経済の中で開発業者がどう判断するかだろう。(P29)
また、同局長は建て替えを促進するために次々と例外的に要件緩和を認めるのは難しいという。
―建て替えられたマンションはわずか250件しかない。建て替えを促進するため政策の必要性は
【石田】2002年にマンション建て替え円滑化法を施行、その後、敷地売却制度を導入、2年前に都市再開発法を改正して、事業制度的に建て替えをやりやすくした。ただ、区分所有法のあるなかで、次々と例外的に要件緩和を認めるのは難しい。(P29)
マンションの供給過剰、空き家問題、スラム化問題など、解決しなければならない問題が山積している。役人の不作為で問題が先送りされていることはないのか。
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