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『東京格差』資産価値競争では負け組になる!?

30年以上住まいの雑誌編集に携わってきた中川寛子著『東京格差 ─浮かぶ街・沈む街』ちくま新書(2018/12/6)を読了。

かなりの労作。「第3部 未来:再生と消滅の時代」から、資産価値を中心にピックアップ。


もくじ

下落する閑静な住宅街の資産価値

年々「閑静な住宅街」の資産価値は相対的に下落。閑静さよりも、利便性が選ばれるようになっているという。

下落する閑静な住宅街の資産価値

 しかも、年々「閑静な住宅街」の資産価値は相対的に下落している。よく、保育園反対運勣では閑静な住宅街に保育園=騒音施設(!)ができることで資産価値が毀損されるという言い方があるが、実際のところ、それ以前から閑静な住宅地の資産価値の下落は始まっているのである。(略)
大田区内では山王よりも有名なお屋敷街田園調布でもこの10年間で見ると1.01倍程度の変化しかなく、住環境には劣るものの利便性に勝る土地の価格上昇のほうが大きい。閑静さよりも、利便性が選ばれるようになっているのである。

(P95-98/第3部 未来:再生と消滅の時代)

※閑静さよりも、利便性が選ばれるようになっている傾向もあろうが、今後、羽田新ルートの騒音問題は利便性判断にどの程度影響するのか。
航空機からのパネル落下報道があっても、いまのところ羽田新ルート周辺のマンション価格に影響を及ぼすには至っていないようだ(羽田新ルート|マンション価格への影響(まとめ))。

資産価値競争では大半が負け組になる

資産価値という基準で考えた場合に生き残る街は、都心5区のうちの、さらにごく限られた場所。多くの人には無縁となる資産価値で満足度を図ることには意味がないという指摘。

資産価値競争では大半が負け組になる 

(略)残念ながら、今後、資産価値を維持するであろうまちはそれほど多くはない。以前にも引用した清水千弘教授による、2010年から2040年の30年間で日本の住宅価格が平均でマイナス46%下落するという数字を思い出していただきたい。
 もちろん、場所によって下落幅は大きく異なるはずで、維持するところもあるだろうが、これほどの大下落の中で価値を維持する場所は誰がどう考えても都心部でしかあり得ない。首都圈のうちの、23区のうちの、都心5区のうちの、さらにごく限られた場所、そこだけが資産価値という基準で考えた場合に生き残るまちということになる
 場所として限られているだけではなく、当然だがそこに住宅を取得できる人はさらに限られてくる。現在でも住宅価格、賃料は二極化と言われているが、今後はさらにそれが激化してくる。そこで資産価値を満足度を図る基準とすることには意味がない。多くの人には無縁だからである

(P200/第3部 未来:再生と消滅の時代)

※23区では、都心3区の中古マンションの成約単価が飛び抜けている(次図)。

中古マンション成約単価の推移(23区)
首都圏中古マンション市場動向(18年11月)」より

マンション住まいの常識を変える人々

マンション間の連携や地元町会との連携などにより、自分たちの住む建物の価値が上がることに繋がるはずだという。

マンション住まいの常識を変える人々

(略)江東区豊洲や同有明、千葉県流山市など大規模物件が多く、比較的若い居住層が多い地域ではマンション間の連携が始まりつつあるし、地元の町会と防災訓練、祭りを協働している中央区日本橋の再開発マンションリガーレ日本橋人形町などの例もある。マンションの管理組合としてどれだけ中だけでなく、外に目を向けることができるか。それが自分たちの住む建物の価値を上げ、日々の生活を豊かにし、まちを持続させることに繋がるはずである。

(P228-229/第3部 未来:再生と消滅の時代)

※マンション間の連携や地元町会との連携の前に、まずは マンションの維持管理がシッカリなされていく必要があろう。
詳しくは、「『100年マンション 資産になる住まいの育てかた』日経プレミアシリーズ 」参照。

本書の構成

3部構成。全282頁。

第1部 過去:まちの単機能化が進んだ2000年以前
第2部 現在:まち選びの「発見」
第3部 未来:再生と消滅の時代

東京格差 ─浮かぶ街・沈む街

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