不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、不動産(マンション購入・賃貸)に係る分析記事を提供しているブログメディア


都パブコメ「分譲マンション適正管理促進制度」を読み解く

東京都は9月25日、「東京におけるマンションの適正な管理の促進に向けた制度の基本的な枠組み案」へのパブコメの募集を開始した(締切り10月24日)。
同案は、「マンションの適正管理促進に関する検討会」(座長:齊藤広子横浜市立大学教授)により今年3月以来5回の会議を重ねてまとめられたもの。

第4回検討会(7月18日)に公表された素案(PDF:839KB)と比べて、若干変わっているところがあったので、3か所ピックアップしておいた。

不動産業界の利益代表者の抵抗の跡が読み取れる……。

※素案については、「画餅!? 都の老朽化対策「要届出マンション」」参照。


もくじ

「マンションの社会的な機能の向上に資する取組」とは?

素案では、管理組合の責務・役割は「適正な管理を行う」ことだけが規定されていた。

  • 法令等の定めるところに留意して、適正な管理を行う
    (P5)

パブコメの案では、「適正な管理を行う」ことのほかに、「マンションの社会的な機能の向上に資する取組」が努力義務として追加されている。

  • マンションの管理の主体として、法令等の定めるところに留意し、適正な管理を行う
  • マンションの社会的な機能の向上に資する取組を行うよう努める(P5)


「マンションの社会的な機能の向上に資する取組」努力義務とは、何を言っているのか?

管理不全の兆候があるマンションに対して、「マンションの適正な管理及び社会的な機能の向上に関する情報提供」することが施策のひとつとして掲げられている(P9)ことから類推すると、マンション劣化の3要素(物理的劣化、機能的劣化、社会的劣化)のひとつである「社会的劣化」に対応した取り組みのことを指しているのだろう。

ちなみに、マンション社会的劣化とは、物理的な劣化はなくても、生活様式や居住ニーズが変化して使用に耐えられなくなることをいう。

そのためにはリフォームなどで対応することになるのだが、そんなことをマンション管理組合の努力義務として課していいのだろうか。チョット違うような気がする……

いずれにせよ、パブコメ案で追記された「マンションの社会的な機能の向上に資する取組を行うよう努める」の意味は分かりにくいので、もう少し丁寧に記述することが求められる。

なぜ、「マンションの適正な管理を促進するための施策と連携」が削除された?

分譲事業者の責務・役割として、素案では、次の2項目が規定されていた。

  • マンションの管理運営にも配慮したマンションの供給に努める
  • 都及び区市町村が実施するマンションの適正な管理を促進するための施策と連携する(P5)

パブコメの案では、管理運営配慮という表現が設立・運営・円滑配慮というより具体的な表現に置き換わるとともに、施策との連携が削除されている。

  • 管理組合の設立及び運営が円滑に行われるよう配慮したマンションの供給に努める(P5)


なぜ、「マンションの適正な管理を促進するための施策と連携」が削除されたのか?

素案を策定したときの第4回会議の議事録にそのヒントが読み取れる(第5回会議録はまだ公開されていない。9/25日現在)。

飛田委員代理が、「管理組合がマンション管理の主体」「分譲事業者(略)はそれに協力するということであればまだ何となく納得もできる」「管理組合のところは1行しか書いていないのに、マンション管理士と分譲事業者の方に多く書いてあるのがちょっと不自然ではないか」と抵抗しているのである。

飛田委員代理

  • 事務局の方に質問なのですけれども、5ページの「マンション管理士、マンション管理業者」と「分譲事業者」のところに両方に書いてあります「都及び区市町村が実施するマンションの適正な管理を促進するための施策と連携する」。これは、私は正直、意味がわからないのですが、どういったことを指されているのでしょうか。(P22)

栗谷川民間住宅施策推進担当部長

  • (略)「管理組合の運営に対する相談・支援」ですとか、「マンションの適正な管理及び社会的な機能の向上に関する情報提供」とか、この辺もまだ具体的な支援策は決まっておりませんけれども、こういったところをマンション管理士、マンション管理業者、もしくは分譲事業者にもいろいろと御協力いただくことがあると思いますので、そういった意味合いも含めて書いてございます。(P22-23)

飛田委員代理

  • 今まさに、御協力という言葉が出たと思うのですけれど、6ページの(1)の「管理組合の運営体制の整備」のところにまさに書いてあるのですけれど、管理組合がマンション管理の主体なのでありますから、今おっしゃっていたようなことの主語に当たるのは管理組合であるべきではないかと思うのです。
  • それで、よくよく9ページ(制度運用のイメージ)を見ると、「制度運用のイメージ」のところも「分譲マンション」とか「要届出マンション」となっていて、マンションが主体かのごとく書いてあるのですけれど、これはマンションの管理組合がやるべきことだということですよね。そこを明確にした方がよろしくて、あくまで主体は管理組合であって、分譲事業者なりマンション管理業者というのはそれに協力するということであればまだ何となく納得もできるかなとは思うのですが、5ページ(各主体の責務や役割)の管理組合のところは1行しか書いていないのに、マンション管理士と分譲事業者の方に多く書いてあるのがちょっと不自然ではないかなと思うのです。そのあたりを御検討いただければと思います。(P23)

飛田委員代理とは誰なのか?

委員名簿(PDF:151KB)にその名はない。第1回の議事録を読むと、飛田氏は不動産協会事務局長 森川委員の代理出席者であることが分かる。

 一般社団法人不動産協会事務局長の森川委員でございますが、今日は所用のため御欠席ということで、代理で、飛田事務局長代理においでいただいております。

不動産業界の利益代表である飛田氏の抵抗によって、分譲事業者の責務・役割から「マンションの適正な管理を促進するための施策と連携」が削除されたのであろう

ちなみに、不動産協会事務局長の森川委員の「所用欠席」は、このあと4回目まで続く(5回目は議事録未公開につき不明)。

なぜ、「制度運用のイメージ」に素案ではなかった分譲事業者の責務・役割が書き加えられた?

「制度運用のイメージ」として、素案では記載のなかった分譲事業者の責務・役割が書き加えられている(次図)。

制度運用のイメージ
「制度運用のイメージ」(P10) 

なぜ、「制度運用のイメージ」として、素案では記載のなかった分譲事業者の責務・役割が書き加えられたのか?

素案を策定したときの第4回会議の議事録における、篠原座長代理(弁護士)の発言にそのヒントが読み取れる。

「(飛田委員代理から)どうしてそこが抵抗あるのかというのは、ちょっと私はよくわからない」との篠原座長代理の発言を受けて、事務局が「制度運用のイメージ」のほうには「分譲業者」の責務・役割を書き加えたのではないのだろうか。

篠原座長代理

  • それで、管理組合が管理の主体であるというのは誰も疑わないと思うのですけれども、既存の管理組合なのだけれど規約がまだできていないということであれば別なのですけれども、管理組合が動き出すためには、やはり分譲事業者が初期設定をきちんとしていかないと、それはまずできにくいというか、ほとんどできないような話になると思うのです。
  • そういう意味では、分譲事業者も行政が定める条例なり何なりの精神とかやり方を尊重して、そして例えば、分譲事業者が届出をしてもいいじゃないですか。
  • どうしてそこが抵抗あるのかというのは、ちょっと私はよくわからないのですけれども。そういうふうにしてあげないと、管理組合に「やってくださいね」と言ってすぐに組合でできるかというと、そんなにすぐにはうまくいかないし、管理業者もまた、間の管理業者にやらせればいいじゃないかといっても、間に業者が一つ入るということは、そこで忘れたり間接的になったりするので、やはり当初の、分譲事業者が渡すのがいいように私は思います。(P26-27)

あわせて読みたい

2020年6月1日、このブログ開設から16周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.