6月15日に発売された、榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)を読了。
帯に記されたキャッチコピーは、とても挑発的。「それでもあなたは住みますか?」
一部、強調し過ぎなところがなくもないが、タワマンの負の側面がシッカリ描かれているので、タワマン購入を検討されている人は目を通しておいて損はないだろう。
タワーマンションが生み出す社会問題
今やタワマンは、そこに住む人だけの問題ではない。完全に社会問題化しているという指摘。
タワーマンションは日本の住宅政策の象徴
(前略)タワーマンションの開発と分譲は多くの業界を潤し、経済成長に貢献する。そして新築好きの日本人にとっても豪華な共用施設が充実したタワマンは満足度が高い。そこにいったい何の不都合があるというのだろう。行政も業界もそう考えて当然である。
しかし、目先の利益に惑わされて、タワマンばかりを建設してきた結果が、住宅の過剰供給であり、空き家の急増である。
これまで本書で見てきたように、タワマン建設によってさまざまな問題が浮上している。急激な人口増によるインフラの崩壊、育児や教育現場の混乱、建設に伴う立ち退きや近隣住民への日照阻害、風害の問題………。
今やタワマンは、そこに住む人だけの問題ではない。完全に社会問題化しているのだ。(P77-78/第1章 迷惑施設化するタワーマンション)
※神戸市は昨年、持続可能なタワーマンションのあり方の検討を実施。同市は、維持管理が適正な物件を認証する制度の導入を目指して、19年7月に検討委員会を立ち上げる予定。
2037年、いくつかのタワーマンションが廃墟化
多くのタワーマンションは2037年前後に大規模修繕工事に時期を迎える。費用面などで同工事ができなくて廃墟化に向かうタワーマンションが出てくるという見立て。
2037年、いくつかのタワーマンションが廃墟化する
(前略)2022年前後に、多くのタワーマンションは1回目の大規模修繕工事を行うだろう。その15年後の2037年には容赦なく2回目を行う時期がくる。その時に、すべての夕ワマンが外壁補修を伴う大規模修繕工事ができるだろうか。そこは全く楽観できない。
仮に費用面などで外壁補修をできないタワーマンションが出てきたとすれば、どうなるのか。当然、雨漏りなどが五月雨式に発生するだろう。個別の対応工事では限界がある。(中略)区分所有者の中には必要な外壁の補修工事がなされないことを理由に管理費や修繕積立金の支払いを拒む人もいるかもしれない。
それはすなわち、廃墟への道ではないか。
このままでは2037年前後に複数のタワーマンションが廃墟化するかもしれない。それは、今の状況が続く限り、かなり確実性が高い未来である。(以下略)(P95-96/第2章 タワーマンション大規模修繕時代)
※「廃墟探索地図」で廃墟化したマンションを調べることができる。
長周期地震動という新たな脅威
東日本大震災で注目された「長周期地震動」。新築の超高層建築物には長周期地震動に対する安全性の検証が義務化されたが、中古の場合は義務化されていないという話。
長周期地震動という新たな脅威
(前略)東日本大震災の発生によって「長周期地震動」というものが注目された。(中略)
この長周期地震動は、どうやらタワーマンションのような超高層建築において、より危険が大きいようだ。つまり高層階ほど大きく揺れるので想定外の被害が出やすいのだろう。そしてこの長周期地震動というものを、現行の建築基準法では想定していない。
2016年6月、国土交通省は「超高層建築物等における南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動への対策について」を公表した。
それによると「対象地域」における長周期地震動への対策を、新築と中古に分けて示している。新築の場合は、2017年4月1日以降に性能評価を申請して、大臣認定に基づいて建築される「高さが60mを超える建築物と4階建て以上の免震建築物」の長周期地震動に対する安全性の検証が義務化されている。
中古の場合は、対象建築動は同じだが、「自主的な検証や必要に応じた補強等の措置を講じることが望ましい」とされた。ただし、義務化されていない。何とも中途半端な対策ではないか。(以下略)(P131-132/第3章 災害に弱いタワーマンション)
※中古タワーマンションの長周期地震動対策問題についてはまだ、世間の共通認識に至っていない。
⇒「「長周期地震動」が超高層マンションの資産価値に影響を与える!?」参照。
本書の構成
6章構成。全202頁。
序章 タワーマンションが大好きな日本人
第1章 迷惑施設化するタワーマンション
第2章 タワーマンション大規模修繕時代
第3章 災害に弱いタワーマンション
第4章 タワーマンションで子育てをするリスク
終章 それでもタワーマンションに住みますか?
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