2月13日に発売された『 負動産時代』(朝日新書)を読了。
朝日新聞の特別報道部により、17年6月から18年7月にかけて掲載された調査報道記事を大幅に加筆。
本の帯に記された「不動産は地獄の入り口だ!」とか「あなたの家も、いつか必ず負債となる」は必ずしもオーバーな表現とは言えないかも……。
ツタ覆うマンション、解体できず
たった一人の反対によって解体したくてもできない埼玉県郊外のマンション。階段は茶色くさびて、玄関ドアまでもツタで覆われている部屋も。
ツタ覆うマンション 解体できず
(前略)マンションを解体し、その跡地を売却しようとすると、耐震不足や大規模被災した場合を除き、所有者全員の同意が必要になる。こうした取り決めが、住民合意への高いハードルとなり、たった一人の反対によって解体したくてもできない状況に陥るケースがある。(中略)
マンションの2階、3階へとあがる階段は茶色くさびている。上階の渡り廊下は、各部屋の玄関へと通じているが、玄関ドアまでもツタで覆われている部屋もあった。廊下には枯れ葉が積もり、消火器や骨組みと柄だけになった傘が無残な姿で転がっていた。建物に人の気配はなく、昼間でも渡り廊下は薄暗く感じられた。(以下略)
(P43-44/第1章 捨てられる家と土地)
※これからは空き家がドンドン増えていくので、特に若い世代は急いでマンションを買う必要はないのではないか。
⇒「空き家増加!若い世代は急いでマンションを買う必要はないのでは… 」参照。
アパート経営、2割が赤字
家賃水準は、築15年までは新築の90%超を維持するが、築20年では75.1%に急落。赤字物件の割合は築15年と20年でいずれも20%前後。
アパート経営、2割が赤字
(前略)朝日新聞の情報公開請求で、調査結果の一部として、7行が融資した少なくとも672件の状況が開示された。
それによると、新築から5年経るごとに空室率は上がり、築20年では11.6%に達した。家賃水準は、築15年までは新築の90%超を維持するが、築20年では75.1%に急落した。家賃収入だけでは修繕費や返済金をまかなえない赤字物件の割合は築15年と20年でいずれも20%前後になっていた。(以下略)
(P101/第3章 サブリースの罠)
※サブリース問題から、いまやレオパレス21界壁施工不備問題へ。世の中そんなにうまい話はない。
⇒「引越し難民が発生!? レオパレス21界壁施工不備問題」参照。
政策後手、怠慢のツケ
宙に浮いた土地の増加、放置された空き家の管理不全問題などは、時代に合わせた土地・住宅制度の見直しをしてこなかった政府の怠慢による副産物だという指摘。
政策後手、怠慢のツケ
(前略)郊外の自治体は、わが街に人口を呼び込もうと、農地などに利用が限定されていた「市街化調整区域」に住宅を建てられる規制緩和に踏みきり、国は「景気対策」の名のもとに住宅ローン減税を繰り出し、人々の住宅購人意欲を剌激し続けた。タワーマンションの建設を後押しする規制緩和も相次いだ。(中略)
だれも相続登記しないまま相続人が何十人にも増えて所有者不明になる問題、相続人全員が相続放棄したものの国庫にも帰属せず宙に浮いた土地の増加、放置された空き家の管理不全問題などは、時代に合わせた土地・住宅制度の見直しをしてこなかった政府の怠慢による副産物なのだ。(P235-254/第6章 国の怠慢、ツケを払う国民)
※東京都は最近になって分譲マンションの適正管理に注力し始めた。
⇒「都パブコメ「分譲マンション適正管理促進制度」を読み解く」参照。
本書の構成
6章構成。全260頁。
第1章 捨てられる家と土地
第2章 リゾートマンションの黙示録
第3章 サブリースの罠
第4章 高すぎる固定資産税、相続税
第5章 負動産は生き返るか―海外の事例から
第6章 国の怠慢、ツケを払う国民
『 負動産時代』
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