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解明!23年度「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」【報告書編】

羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務は6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注している(累計約17億円!)。ところが、23年度は東北新社が受注したのだ(次表)。

2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑によって23年2月28日、東京地検特捜部は博報堂など法人6社、を独占禁止法違反の罪で起訴。その結果、博報堂はこの業務の入札日( 23年3月27日)を含む期間、国交省から入札への指名停止措置(23年3月6日~12月5日)を食らっていたのである。

羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務
「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」2.47億円」より

 

タナボタの東北新社の報告書は、博報堂とどう違うのか?
東北新社が国交省に提出した23年度の成果報告書を入手したので、ひも解いてみた。


もくじ

2.47億円で東北新社に委託した成果報告書はたったの21枚

仕様書によれば、本業務内容は「(1)情報提供の実施」と「(2)意見把握の実施」の2本立てで、細目は次のように規定されている。

※朱書きは、前年度に博報堂に委託されたときの内容を示す。

  • (1)情報提供の実施
    • ① ホームページの更新
    • ② メディアでの発信
      • ポスティング広告
        (新飛行経路下の14区市+1県に各1回(1県は配架))
      • WEB上でのバナー広告(年度のうち、9か月間実施)
        ※年度を通して実施
      • 経済誌広告(1回) ※2誌で各1回
      • ニューズレターの作成・発送
        通常版(東京・神奈川・埼玉)1回、各40,000 部程度 ※2回
        地域版(千葉)1回、各 6,000 部程度※2回
    • ③ その他の情報発信手法の提案
  • (2)意見把握の実施
    • ①メールフォームに投稿された意見の取りまとめ及び分析
    • ②報道クリッピング及びそれに基づく報道傾向分析
    • ③ インターネット上の意見分析
    • ④その他の意見把握手法の提案

前年度に博報堂に委託されたときと比べて委託金額はさほど変わらないのだが(というか東北新社のほうが約1千万円高い)、上記朱書きのように、広告やニューズレターの回数が少なくなっている。それでは帳尻が合わないかと言えば、じつは帳尻は合っている。

「③ その他の情報発信手法の提案」として、博報堂の時にはなかった次の項目が追加されているのだ。

更なる効果的な情報提供を行うため、騒音・落下物対策や、「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」での議論等を踏まえ実施する国の取組み及び羽田空港そのものの経済的重要性や機能強化のメリット等に関する分かりやすい資料や動画の作成等について、発注者の求めに応じ、協議の上、提案・実行する。

報告書は、A4判21枚。うちのり弁は2枚だけ(次図)。

報告書は、A4判21枚

23年度の契約金額は約2.47億円。23年度の報告書はたったの21枚。よほど中身が濃いのか!?

ちなみに、墨消し部分に関して、国交省は「行政文書開示決定通知書」のなかで、「不開示とした部分とその理由」として次のように記している。

開示する行政文書「報告書」のうち、「羽田空港のこれから」ホームページの改修準備及び研修概要については、当事業を実施する法人のノウハウに関する内容であり、法第5条第2号イに規定する「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。

開示された報告書をひも解く

以下、開示された報告書をひも解いていく。

情報提供の実施結果

「ホームページの更新」業務の成果として、国交省が運営しているサイト「羽田空港のこれから」の「トップページ」と「お知らせ記事一覧」が掲載されている(次図)。

「トップページ」と「お知らせ記事一覧」

 

「羽田空港のこれから」ホームの改修準備として、全面のり弁(次図)。

「羽田空港のこれから」ホームの改修準備

 

「メディアでの発信」業務の成果として、WEB上でのバナー広告1枚(次図)。

メディアでの発信

「経済誌タイアップ広告」として2枚。

経済誌タイアップ広告

 

「ニューズレターの作成・発送」として、2枚(次図)。

ニューズレターの作成・発送

 

「研修の実施」として、のり弁状態の研修概要1枚(次図)。

研修の実施

意見把握の実施結果

「意見把握の実施結果」として、次の文章が1枚に収められている。仕様書に規定された4項目は掲げられているが、具体的な内容は一切掲載されていない

  • ➀メールフォームに投稿された意見の取りまとめ及び分析
    • 「羽田空港のこれから」内のメールフォームに投稿された意見を取りまとめ、 発注者に報告しました。併せてそれらの内容を分析し、2 .の情報提供にも活 かしました。
  • ②報道等のクリッピング及びそれに基づく傾向分析
    • 羽田空港の機能強化に関して採りあげられた新聞、雑誌、WEB記事、テレビ 番組等を随時クリッピングし、報道傾向や影響等も踏まえつつ、2 .の情報提供にも活かしました。
  • ③インターネット上の意見分析
    • 新飛行経路下の住民等から寄せられたインターネット上の意見等(羽田空港の機能強化に関するWEB記事に対するコメントやSNSにおける発言等)の傾向や拡散状況などについて意見分析を行い報告しました。
  • ④その他の意見把握手法の提案
    • 上記以外にも、より効果的な意見把握の手法等について、随時検討・提案を行いました。

前年度の博報堂の報告書との違いは、東北新社のほうは「ですます調」であることくらい。記載内容はほぼ同じ(次図)。

博報堂報告書と東北新社報告書の比較


最期のページに「4.令和5年度業務全体の振り返りと次年度への課題」が記されている。

(前略)「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会については、第6回検討会の開催に向け引き続き技術的な検証を行っている段階であり、検討結果について、次年度以降での情報発信が期待されています

また、1月2日の羽田空港滑走路上での事故についても、二度とこのような事故が発生しないようにハード・ソフト両面でのさらなる安全・安心対策を検討しており、こちらの取組についても併せて発信と意見収集を行っていかねばなりません。

これらの状況を踏まえ、次年度においても、引き続き羽田空港の機能強化について多様な広報施策を進めるとともに、地域住民の関心事項である「新飛行経路の運用状況」「騒音対策」「落下物・安全対策」等について、継続的・定期的に情報提供していくことが重要であると考えます。

引き続き、わかりやすく丁寧に、また当初より掲げている羽田機能強化の意義・目的についてしっかり情報を行い、ひろく意見を集めていくことが大切であると考えています。

「次年度においても、引き続き、(略)継続的・定期的に情報提供していくことが重要である」という文言は、コンサルが来年度も仕事を受注するための常套句。国交省としてもそのような文言があることで、予算をつけやすいという事情もあるのではないか。

雑感(東北新社の報告書、博報堂の37枚よりも少ない21枚!)

  • 博報堂は6年連続(17~22年度)で「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」を受注している(6年間の契約金額の合計は約17億円)。指名停止措置を食らった博報堂に代わってタナボタ受注の東北新社の報告書は前年の博報堂とさほど変わらない金額で受注しておきながら(というか東北新社のほうが約1千万円高い)、報告書枚数は博報堂の37枚よりも少ない21枚!
  • 博報堂よりも、経済誌広告やニューズレターの作成・発送の回数が半減されている代わりに、「③ その他の情報発信手法の提案」として、博報堂の時にはなかった固定化回避検討会での議論を踏まえ実施する「国の取組み及び羽田空港そのものの経済的重要性や機能強化のメリット等に関する分かりやすい資料や動画の作成」が追加されている。同追加内容を知りたいところであるが、報告書にはそのあたりの内容が見当たらない。
  • 報告書21枚のうち墨消しは2枚だけ。決して透明性が高いのではなく、開示請求対策として、肝心の中身を報告書から外したと疑いたくなるような建付けになっている。

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