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解明!23年度「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」2.47億円

博報堂が過去6年連続で受注している「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」。

7年目の23年度分については、23年2月15日に同業務に係る企画提案書の提出を招請する公告が出たが(提出期限3月27日)、その後どこの企業がいくらで受注したのか公表されていない。

国交省に情報開示請求してから49日(請求6月14日⇒受領8月2日)、ようやく関係文書を入手できたので、ひも解いてみた。


もくじ

契約業者は6年連続の博報堂ではなく、東北新社!

入札公告(航空局)23年2月15日
提出期限 23年3月27日17時00分

履行期間:契約締結日の翌日から24年3月31日まで

※企画競争

 本業務は、令和2年3月29日より羽田空港において運用が開始された新飛行経路の運用状況や、騒音・落下物対策に関する国の取組み及び羽田空港そのものの経済的重要性や機能強化のメリット等について、各種広告媒体を通じた情報提供を行うとともに、主に新飛行経路下の住の意見把握を行うものである。

この業務は6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注している。今回もまた博報堂と思いきや、なんと東北新社だった(次表)。

「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」契約実績

※東北新社は、2021年2月当時内閣総理大臣であった菅義偉氏の長男を含む東北新社の役職員が、監督官庁である総務省の幹部職員を接待していた問題を起こしている(WIKI

開示請求により入手した文書

筆者は今回、次のように開示請求をした。

※前回、前々回の開示請求で本件に係る文書は把握できていたので、今回もピンポイントで文書請求。

国土交通省航空局航空ネットワーク部首都圏空港課長が令和5年2月15日に企画提案書の提出を招請した「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」に係る以下の文書
(1)特定通知書
(2)非特定通知書
(3)企画提案に関する評価結果
(4)予定価格調書
(5)請負契約書
(6)企画提案書

そして今回、国交省が開示したのは次の7つの文書。

  • 企画提案書(A社)(PDF:47KB)←東北新社
  • 企画提案書(B社)(PDF:1MB
  • 企画提案に関する評価結果(PDF:40KB
  • 特定通知書(PDF:74KB) ←A社(東北新社)に送付された文書
  • 非特定通知書(PDF:87KB) ←B社に送付された文書
  • 請負契約書(PDF:603KB
  • 予定価格調書(PDF:33KB

以下、順にひも解く。

企画提案書:全頁のり弁

企画提案書はA社(東北新社)24枚、B社16枚。鑑(表紙)以外のページは全面マスキングされて真っ黒。いわゆるのり弁である(次図)。

これでは両社がどのような提案をしたのか全く分からない。

企画提案書

 

企画競争実施の公告文書には次の記載があったにもかかわらず、全頁がのり弁となった。

(7)特定した提案内容については、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)において、行政機関が取得した文書について、開示請求者からの開示請求があった場合は、当該企業等の権利や競争上の地位等を害するおそれがないものについては、開示対象となる場合がある


なぜ、全頁がのり弁となったのか。

「行政文書開示決定通知書」(PDF:458KB)には、のり弁理由につき、次のように記されていた。

⑥の文書(筆者注:企画提案書)のうち、企画提案内容については、当事業を実施する法人のノウハウに関する内容であり、法第5条第2号イの「公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。

企画提案に関する評価結果:ほぼのり弁

「企画提案に関する評価結果」は、A4横1枚。ほぼのり弁(次図)。

招請に応じたのが2社(うち1社が東北新社)であることと、受注に至ったA社(東北新社)の評価点90.6に対して、B社は63.6点と低得点であったことが分かる。

企画提案に関する評価結果
拡大


「提案内容に対する評価」に係る項目は非公開となっている。なぜ非公開なのか。

「行政文書開示決定通知書」には次のように記されていた。

③の文書(筆者注:企業提案に関する評価結果)のうち、詳細な評価項目・配点については、職務上必要な関係者以外には知られていない非公開の情報であり、公にすることにより不特定多数の者が知ることとなった場合、企画提案書審査に伴う契約業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、法第5条第6号柱書きの「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。

ようするに、国交省がどのような点をどのように評価したのか、手の内は明かさないということである。

特定通知書:東北新社は100点満点の90.6点

本業務を受注した東北新社に通知された文書(次図)。

鑑1枚と点数表からなる。

特定通知書

 

上表を可視化したのが次図。

東北新社は90.6点。

一方B社は63.6点。「業務の理解度」は東北新社の15点に対して9点。

羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務

 

B社が63.6点であることと、企画競争実施の公示文書の次の記載とは何か関係があるのか。たまたま足切りの60点をクリアしただけなのか。

(9)提出された企画提案書を評価した結果、評価点が満点の6割を満たす者のうち最高得点者を特定することを原則とする。 

非特定通知書:受注できなかったB社に通知された文書

本業務を受注できなかったB社に通知された文書(次図)。

非特定通知書

請負契約書:契約額2.47億円

請負契約書は全部で25枚。2枚目に記載されている履行期間(令和5年5月9日~令和6年3月31日)と請負代金額(247,067,370円、税込み)のほかには重要な情報は見当たらない(次図)。

3枚目以降に記された各条文は、「役務の提供等」の請負契約書に使用される標準的な書式が下敷きになっているからだ。たとえば東京航空局HPの「入札・契約関係の要領等」にも公開されている。

請負契約書

予定価格調書:予定価格の99%で契約

A4横1枚。この予定価調書によって予定価格が249,491,000円に決定されていたことが分かる(次図)。

ということは東北新社が今回、予定価格の99%(=247,067,370円÷249,491,000円×100)で契約できたことになる。

予定価格調書

雑感

なぜ博報堂は降りたのか

羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務は6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注している(累計約17億円!)。今回もまた博報堂と思いきや、なんと東北新社だった。

なぜ博報堂は降りたのか。

じつは、2020年東京五輪テスト大会をめぐる独占禁止法違反疑惑によって23年2月28日、東京地検特捜部は博報堂など法人6社、を独占禁止法違反の罪で起訴。その結果、博報堂はこの業務の入札日( 23年3月27日)を含む期間、国交省から入札への指名停止措置(23年3月6日~12月5日)を食らっていたのである。

指名停止を食らっていたのでは、博報堂は参加したくても参加できない。

B社には戦闘意欲なし!?

21~22年度の2社の提案書を評価した結果を可視化してみた(次図)。

契約に至ったA社の評価点数が90点超えであるのに対して、契約に至らなかったB社の評価点数は足切り60点をチョット超えるレベル。

B社には戦闘意欲が感じられない。いかにも当て馬臭い……。

羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務  評価点数の内訳(2社比較・年度別)

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