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羽田新ルート|新宿区議会「23年第2回定例会」質疑応答

新宿区議会「23年第2回定例会」本会議の代表質問(6月13日)で、羽田新ルートに関して、佐藤佳一議員(共産)の質疑応答があった。

区議会中継録画をもとに、全文テキスト化(約4千文字)しておいた。

※以下長文なので、時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

佐藤佳一議員(共産)

佐藤佳一 議員
佐藤佳一 議員(共産、区議3期、早大卒、64歳)

日本共産党の佐藤佳一でございます。羽田新飛行ルートについて質問いたします。

羽田新飛行ルートの運用が開始され3年2か月が経過しました。羽田新飛行ルートは、安倍政権時に国際競争力を強化するために企業が活動しやすい国を目指し、首都圏に一層、ヒト・モノ・情報を集積するため、すでに羽田空港の離発着回数が限界に達していましたが、国際線の発着を年間3万9千回増やすため、都心飛行ルートが計画されました。

飛行ルート下の住民などから、騒音や落下物の不安など、運航開始3か月で3,374件の苦情が国土交通省(以下、「国交省」)に寄せられ、国交省は、現在の滑走路の使い方を前提とした上で騒音軽減等の観点から見直し可能な方策がないかについて、技術的観点から検討する「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」(以下、「検討会」)が設置され、これまでの2年2か月で5回行われましたが、具体的ルートについては明らかにされず、いつ結論出るかも決まっていません

北新宿に住んでいた翻訳の仕事をしている方は、新ルートの運用開始以来、騒音で仕事にならないため60万円かけて窓を二重にしましたが、完全に騒音は消えず、この4月に転居しました。

また、北新宿の方で騒音で健康を害してしまい、飛行機が飛ぶ午後3時から7時まで家にいられず、外出して過ごしているそうです。羽田新ルートの運用以来、転居せざるを得ない人がいるなど、住環境が悪化しています。

以下、質問です。

問1:区や区長が国交省に対しどのような意見や主張を?

第1は区長および新宿区の姿勢についてです。
区議会では2022年6月、「海上ルートの活用等羽田「新ルート」が固定化されることがないよう国に求める意見書」が採択されました。しかし、区長は2020年の柏木地域センターの区長トークで、「このルートが永久に続かないように国に言ってきましたが、他の地域に移してもその地域が迷惑になる」と曖昧な回答でした。

これまで、区や区長が国交省に対し、口頭・文書で何回、どのような意見や主張を伝えてきたのでしょうか。そして、国交省の回答についてお答えください。さらに、この回答についてどのように評価しますか

問2-1:運航前の当初説明との乖離(騒音)

第2は運航前の当初説明との乖離についてです。1つは騒音についてです。

落合第二小学校での騒音測定では、2022年度の1年間、中型機の実測平均は67.2dBで、最大値は70dBを超えています。これは事前説明では63から65 dBと推計されていましたが、推計値より2.2から4.2 dB高く、多くの住民が騒音に悩まされています。


この原因について、国交省はどのように説明していますか。また、騒音対策については、どのような説明がありましたか


港区では国交省の騒音測定局が1か所設置されていますが、区が独自に2020年5月から騒音測定器を2か所に設置し、毎年2か月から3か月測定しています。

現在6か所で測定し、調査の結果を元に国交省に対し、その内容を区民の意見を伝えるとともに、騒音対策、安全対策、住民説明会、飛行経路にかかる様々な運用の検討について要請しています。また、区独自の騒音測定結果の分析も行われ、ホームページで公表されています。

新宿区内では国交省の騒音測定局が落合第二小学校の1か所設置されていますが、騒音は区内の広い地域で発生しています。新宿区でも、港区を参考に同じように新飛行ルート下の小中学校などの公共施設数か所に騒音測定器を設置し、定期的に測定し、結果をホームページ等で公表し、騒音測定値の結果に基づいて国交省に対策等を要望すべきです。いかがでしょうか。

問2-2:運航前の当初説明との乖離(飛行間隔)

2つ目は飛行間隔についてです。当初の説明では着陸の飛行間隔はC滑走路では平均2分に1回でしたが、5月に北新宿で計測すると1分23秒から1分40秒の間隔で飛んでおり、平均すると約1分30秒です。

ルート下の住民からは最近頻繁に飛んでいるとの声を多数聞きました。その後、分かったのは2020年11月より国際基準である後方乱気流(管制)方式により運航間隔を短くしているとのことです。こうした運航方式について、国交省から事前・事後説明がありましたか

説明がなければ、全く住民や地方自治体を軽視したやり方ではありませんか。いかがでしょうか。

問3:落下物対策、国交省からどのような説明?

第3は落下物対策についてです。2022年3月13日に新宿区に隣接する渋谷区内のテニスコートに氷塊が落下しました。国交省はその時間帯に旅客機が飛行していたことは認めましたが、飛行機からの落下物とは断定できないと結論付けました。


成田空港では氷塊の落下物が飛行ルート下かで頻繁に発生し、1989年には19件の落下物があり、民家の屋根瓦が破損する事案も発生しました。原因が着陸時降下中に車輪を出す時に氷塊が落下することから、地上ではなく海上で車輪を出すように決め、対策を講じた1992年以降、年間0件から5件と氷塊は大幅に減りました。そして、定期的に国交省・空港職員が陸上に進入するときに双眼鏡で車輪が出されているか、今も監視を続けています。


国交省は2018年3月に「落下物対策総合パッケージ」を策定し、対策を強化したと言いますが、国内主要7空港での部品欠落は2020年1,005個、2021年1,645個と増えているのが現状です。また、1kg以上の落下物には97.3kgや83.4kgの部品も含まれています。

落下したのは海上だったため、大事には至りませんでしたが、都心で起きれば大変な惨事になります。落下物対策について、国交省からどのような説明があり、今後どのような対策が必要と考えますか

問4:元の海上ルートに戻すことを国交省にきっぱりと要求すべき

第4に検討会についてです。2020年に検討会が設置され、これまで5回行われましたが、新たな方式についてウェイポイント、通過地点を定め、シミュレーションを行っていますが、日本共産党・宮本徹議員が4月29日の国土交通委員会で「都心上空飛行を回避するものか」と聞いたところ、斎藤国土交通大臣は回避するとは答えませんでした。


検討会は現在の滑走路の使い方は変えない、騒音対策の技術的検討を行っていると繰り返し言っていますが、住民の要望は海上ルートに戻し、静音な住環境を取り戻すことです。区長は元の海上ルートに戻すことを国交省にきっぱりと要求すべきです。以上、お答えください。

環境清掃部長

環境清掃部長
環境清掃部長

答1:騒音対策や落下物対策の強化、文書で要望・要請

佐藤議員のご質問にお答えします。羽田新飛行ルートについてのお尋ねです。はじめに、これまで区や区長が国に対して伝えてきた意見や主張についてです。

平成26年8月に、都や関係区市での意見交換や国への要望を伝えるために設置した「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」幹事会や同連絡会分科会が開催される際に、区は騒音対策及び落下物対策などを講じるよう国に口頭で申し入れてきました

また、平成29年2月、令和2年6月、令和4年2月、令和4年4月、令和4年9月の5回にわたり、騒音対策や落下物対策の強化を講じることなどを文書で要望・要請してきているところです

こうした要望などをもとに国は、騒音の軽減のため航空機の更新を航空会社に求めていくことや、落下物対策総合パッケージを定め、航空会社への指導を行うなどを国は回答しています。

こうした中で区内にある測定局で観測された騒音が推計平均値を上回ることや、空港での検査において一定数の部品欠落が明らかになっていることなどの課題があることから、区は今後も着実に対策を進めるよう国に対して要請しているところです

答2-1:測定結果を踏まえた騒音対策等を講じるよう、引き続き要請

次に、運航前の当初説明との乖離についてのお尋ねです。はじめに騒音についてです。

国はご指摘の中型機から出る騒音が事前に示した推計平均値を上回ることについて、令和4年7月の羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡・会幹事会で区立落合第二小学校の上空で航空機が高揚力装置の操作等を行うことが原因と推測されることを明らかにするとともに、引き続きデータの収集・分析を進め、騒音の低減に向けた取り組みを続けていくと説明を受けています。

これに対して区は国から、航空会社に対し騒音の低い航空機の早期導入を行うよう働きかけることを申し入れているところです。

なお、羽田空港の機能強化に伴う騒音等の測定や結果の公開、騒音対策は国が責任を持って行うべきものであり、区としては測定局の設置や騒音の測定・公開は考えていませんが、国が主体となって測定結果を踏まえた騒音対策等を講じるよう、引き続き要請してまいります

答2-2:当初の説明と乖離はないものと捉えています

次に、飛行間隔についてです。国は細分化した後方乱気流区分を導入するための後方乱気流管制方式の運用を令和2年11月から開始しましたが、運用に際し区に対して事前の説明はありませんでした。

この管制方式の運用により、空中における飛行中の航空機相互の間隔が短縮されることがあるが、羽田空港の処理能力については空中での航空機の間隔ではなく、着陸時の航空機の滑走路占有時間などに左右されるため、羽田空港の処理能力を増加させることはないと国からは聞いております


管制方式の変更後も当初の予定通り、南風時の午後3時から7時のうちの3時間で着陸回数も2本の滑走路合計で1時間あたり約45回であり、これを超えた実績となっていないことから、当初の説明と乖離はないものと捉えています

答3:落下物として確認されたものはないと国は見解を示しています

次に、落下物対策についてです。国はご指摘の落下物対策総合パッケージに基づき、航空機のメーカーや航空会社と一丸となって落下物対策に取り組んでいます。この取り組みでは外国の航空会社も含め、落下物防止対策を盛り込んだ事業計画の策定を義務付けています。

また、羽田空港では落下物対策として、航空会社職員のほか国の職員による機体チェックも行っており、その際、部品欠落が発見された場合は、航空会社と航空機メーカーが連携して原因究明や対策を講じるよう国が監督しています。

こうした取り組みの結果、羽田空港の新飛行経路の運用開始以降は落下物として確認されたものはないと国は見解を示しています。区は今後もこうした取り組みを徹底し、安全な運航を継続するよう要請してまいります。

答4:海上ルートも含めた固定化回避のための新ルートの導入に向けた検討を進めるよう要望

次に、羽田新飛行経路の固定化回避に係る技術的方策検討会についてです。現在国は測位衛星からの信号をもとに、航空機のコンピューターが計算して進入する方式とパイロットの目視により進入する2つの飛行方式について技術的な検討を進めているところです。国からはこの夏から秋にかけてその検討結果を取りまとめると聞いています。

区は国に対してこの結果をもとに、海上ルートも含めた固定化回避のための新ルートの導入に向けた検討を進めるよう要望しているところです

以上で答弁を終わります。

佐藤:「海上ルートも含めて」一定評価してもいいかな

佐藤佳一 議員

ご答弁、ありがとうございました。4年ぶりにこの本会議場で質問させていただき(筆者注:2019年区議選落選)、いま「海上ルートも含めて」ということが付きましたので、一定評価してもいいかなというふうに思っています。まあ、この20期もこれから4年間ありますので、時期を捉えてこの問題を取り上げていきたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

雑感

新宿区議会、羽田新ルート問題への関心は高くない

新宿区議会では羽田新ルートに係る質疑応答はあまり活発ではない。21年第2回の三雲議員(立憲)を最後に、定例会本会議の代表・一般質問で羽田新ルート問題を取り上げる議員はいなかった(次図)。

委員会まで広げてみても、共産党の議員に社民党の河野達男議員(引退済み)が加わるだけ。

羽田新ルートに係る 定例会本会議代表・一般質問実績

新宿区議会での羽田新ルート問題への関心は高くない。筆者がこのように言うと、「委員会の場でシッカリ議論しているよ」と抗弁する議員がいる。

「代表・一般質問以外の舞台での議論は存在していないも同じ」というのが筆者の認識。詳しくは、「羽田新ルート|一般質問以外の舞台での議論は存在していないも同じ」参照。

佐藤議員(共産)の今後の活躍に期待…

今回登壇した佐藤佳一議員(共産)は現在3期目だが、前回選挙(2019年4月21日)では落選している。落選期間中、羽田新ルート問題については、かなり勉強されたのではないだろうか。

羽田新ルート問題のよく知る者にとっては、特に目新しい内容ではないが、ポイントを抑え、的確な質問を投げている。羽田新ルート問題に明るくない人にとっては、とても分かりやすい質問構成となっている。

区の答弁によって「海上ルートも含めた固定化回避のための新ルートの導入に向けた検討を進めるよう要望している」との言質が得られたことは、新宿区議会にとっては一つの成果だ。

佐藤議員の下記決意を信じ、今後の活躍に期待したい。

年ぶりにこの本会議場で質問させていただき(略)これから4年間ありますので、時期を捉えてこの問題を取り上げていきたいと思います

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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