博報堂が過去5年連続で受注している「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」。
6年目の22年度分については、22年2月4日に同業務に係る企画提案書の提出を招請する公告が出たが(提出期限3月16日)、その後どこの企業がいくらで受注したのか公表されていない。
国交省に情報開示請求してから約40日、ようやく関係文書を入手できたので、ひも解いてみた。
羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務
企画競争実施の公示(航空局)
提出期限 22年3月16日17時00分
(2)業務内容
(3)履行期間
- 本業務は、2020年3月29日より羽田空港において運用が開始された新飛行経路の運用状況や、騒音対策・落下物対策に関する国の取組み等について、各種広告媒体を通じた情報提供を行うとともに、新飛行経路に対する住民の意見把握を行うものである。
- 約締結日の翌日から令和5年3月31日まで
この業務は6年連続、企画競争を経て随意契約で博報堂が受注している。6年間の契約金額は総額16.8億円になる(次表)。
開示請求により入手した文書
筆者は今回、次のように開示請求をした。
※前回の開示請求で本件に係る文書は把握できていたので、今回ピンポイントで文書請求。
国土交通省航空局航空ネットワーク部首都圏空港課長が令和4年2月4日に企画提案書の提出を招請した「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」に係る以下の文書
(1)特定通知書
(2)非特定通知書
(3)企画提案に関する評価結果
(4)予定価格調書
(5)請負契約書
(6)企画提案書
そして今回、国交省が開示したのは次の7つの文書。
- 企画提案書(A社)←博報堂
- 企画提案書(B社)←昨年度は開示されなかった。
- 企画提案に関する評価結果
- 特定通知書 ←A社(博報堂)に送付された文書
- 非特定通知書 ←B社に送付された文書
- 請負契約書
- 予定価格調書
以下、順にひも解く。
企画提案書:全頁のり弁
企画提案書はA社(博報堂)22枚、B社15枚。鑑(表紙)以外のページは全面マスキングされて真っ黒。いわゆるのり弁である(次図)。
これでは両社がどのような提案をしたのか全く分からない。
A社(博報堂)は昨年度より1枚少ない、たったの21ページで約2.4億円(後述)をゲットできたのだから、1ページ当たり約1千100万円。なんともコスパの高い提案書である。
公告文書は、日付以外は昨年度と全く同じなので、昨年度の提案内容をコピペしただけなんてことはないのか……。
企画提案書 A社(博報堂)(PDF2.9MB)、B社(PDF1MB)
企画競争実施の公告文書には次の記載があったにもかかわらず、全頁がのり弁となった。
(7)特定した提案内容については、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(平成11年法律第42号)において、行政機関が取得した文書について、開示請求者からの開示請求があった場合は、当該企業等の権利や競争上の地位等を害するおそれがないものについては、開示対象となる場合がある。
なぜ、全頁がのり弁となったのか。
「行政文書開示決定通知書」(PDF1.8MB)には、のり弁理由につき、次のように記されていた。
⑥の文書(筆者注:企画提案書)のうち、企画提案内容については、当事業を実施する法人のノウハウに関する内容であり、法第5条第2号イの「公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
企画提案に関する評価結果:ほぼのり弁
「企画提案に関する評価結果」は、A4横1枚。ほぼのり弁(次図)。
招請に応じたのが2社(うち1社が博報堂)であることと、受注に至ったA社(博報堂)の評価点91.0に対して、B社は60.0点と低得点であったことが分かる。
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「提案内容に対する評価」に係る項目は非公開となっている。なぜ非公開なのか。
「行政文書開示決定通知書」には次のように記されていた。
③の文書(筆者注:企業提案に関する評価結果)のうち、詳細な評価項目・配点については、職務上必要な関係者以外には知られていない非公開の情報であり、公にすることにより不特定多数の者が知ることとなった場合、企画提案書審査に伴う契約業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、法第5条第6号柱書きの「当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
ようするに、国交省がどのような点をどのように評価したのか、手の内は明かさないということである。
特定通知書:博報堂は100点満点の91点
本業務を受注した博報堂に通知された文書(次図)。
鑑1枚と点数表からなる。
特定通知書(PDF:173KB)
上表を可視化したのが次図。
博報堂は91.0点。
一方B社は60.0点。「業務の理解度」は博報堂の15点に対して半分にも満たない6点。
B社が60.0点であることと、企画競争実施の公示文書の次の記載とは何か関係があるのか。たまたま足切りの60点をクリアしただけなのか。
(9)提出された企画提案書を評価した結果、評価点が満点の6割を満たす者のうち最高得点者を特定することを原則とする。
非特定通知書:受注できなかったB社に通知された文書
本業務を受注できなかったB社に通知された文書(次図)。
非特定通知書(PDF:220KB)
請負契約書:契約額2.4億円
請負契約書は全部で24枚。2枚目に記載されている履行期間(令和4年4月28日~令和5年3月31日)と請負代金額(237,381,738円、税込み)のほかには重要な情報は見当たらない(次図)。
3枚目以降に記された各条文は、「役務の提供等」の請負契約書に使用される標準的な書式が下敷きになっているからだ。たとえば東京航空局HPの「入札・契約関係の要領等」にも公開されている。
請負契約書(PDF:2.3MB)
予定価格調書:予定価格の95%で契約
A4横1枚。この予定価調書によって予定価格が249,875,514円に決定されていたことが分かる(次図)。
ということは博報堂が今回、予定価格の95%(=237,381,738円÷249,875,514円×100)で契約できたことになる。
雑感
なぜB社の企業名を伏せているのか
開示請求によって公開された文書により明らかになったのは、22年度に実施される「羽田空港機能強化に係る情報提供・意見把握検討等業務」に対して、2社(博報堂とB社)が応じたことと、博報堂が2.4億円(予定価格の95%)で受注したこと。
特に気になったのは、B社の評価点の低さ。博報堂が91点なのに対して、B社は60点でしかない。過去4年連続して本件を受注してきた博報堂に一日の長がある結果なのか、あるいは5年連続博報堂が受注している事案にB社がお付き合いで応じた結果なのか。
なぜ、国交省はB社の企業名を伏せたのか。「行政文書開示決定通知書」には次のように記されていた。
②の文書(筆者注:非特定通知書)のうち、非特定となった事業者名については、これを公にした場合、当該事業者の今後の営業活動において、正当な利益が損なわれるおそれがあることから、法第5条第2号イの「公にすることにより、当該法人又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」に該当するため、当該情報が記録されている部分を不開示とした。
「今後の営業活動において、正当な利益が損なわれるおそれがある」から公開しないという。
でも、そんなことを言ったら、国土交通省航空局が行った一般競争入札の結果は、競争入札経過調書として入札企業名が公開されているぞ。本件のような企画提案方式を経た随意契約だとなぜ、参加者が非公開なのか今一つよく分からない、というか納得できない。
※企画競争を経て企画提案書が特定されると、会計法第29条の3第4項(随意契約)、予算決算及び会計令第102条の4第3号の規定が適用され、特定された相手方と随意契約を締結することができる。
21年度との比較、B社には戦闘意欲なし!?
21年度と22年度の企画提案書の提出を招請した公告文書を比べると、日付以外は全く同じだった。だからということなのか、22年度の博報堂の企画提案書は21年度よりも1枚少ない21枚。なんだか手抜きの匂いがプンプン。
一方、2社の提案書を評価した結果を比べると、22年度のほうがほんの少しだけ厳しいことが分かる(次表)。
博報堂は「業務の実施方針」で21年度よりも2点マイナス。すでに5年間も類似の業務を実施しているのに(昨年度は全く同じ業務内容!)、発注者の意図を汲み取れていない実施方針だったのか……。
一方、B社は「提案内容に対する評価」で21年度よりも2点マイナス。当て馬(?)には戦闘意欲なしか。21年度と22年度に応札したB社が異なる企業である可能性はゼロではないが、下表の配点傾向を見れば同じ企業であった可能性は極めて高い。
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