国土交通省は7月28日「マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(令和3年度)」を公表。
過去データを含めて可視化してみると、マンション管理業者への是正指導率は13年度以降4割程度で推移していたが、20年度31.8%、21年度22.6%と2年連続で大幅に減少した。なぜなのか……。
マン管業者への是正指導率、2年連続減少
「マンション管理業者への全国一斉立入検査結果(令和3年度)」文書を開いてみると、19社に是正指導を行ったことが記されている。
2.検査結果
今回の立入検査では、昨年度に引き続き、管理業務主任者の設置、重要事項の説明等、契約の成立時の書面の交付、財産の分別管理及び管理事務の報告の5つの重要項目を中心に、全国84社(令和2年度85社)に対して立入検査を行い、19社(令和2年度27社)に対して是正指導を行いました。(以下略)
この調査は05年度から毎年実施されている。過去のデータを含めて可視化してみた。
マンション管理業者への是正指導率は13年度以降4割程度で推移していたが、20年度31.8%、21年度22.6%と2年連続で大幅に減少していることが分かる(次図)。
是正指導された内訳を見ると、「重要事項の説明等」は10年度をピークに減少傾向が見られる(次図)。
なぜ是正指導率は2年連続で減少したのか
なぜ、是正指導率はこれまでの4割から22.6%にまで急減したのか?
「マンション管理業者の全国一斉立入検査結果(令和3年度)概要」によれば、「新型コロナウイルス感染症の影響もあり、昨年度同様、例年度に比べて立入検査実施件数が減少」したという。
国土交通省の各地方整備局及び北海道開発局並びに内閣府沖縄総合事務局において、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、昨年度同様、例年度に比べて立入検査実施件数が減少しましたが(平成27年度から令和元年度における立入業者数の平均は約142社)、全国のマンション管理業者のうち84社に対し、令和3年10月から概ね3ヶ月の間に事務所等への立入検査を実施しました。
2年連続で是正指導率が大幅に減少した理由として考えられるのは3つ。以下に述べる。
コロナの影響(20・21年度)
20年度の是正指導率の減少理由として、ひとつは新型コロナ感染拡大の影響で十分な調査ができず、不具合か所を見つけ出せなかったため。二つ目は、これまでの国交省の指導などが功を奏したため。
筆者は、前者の可能性が高いと考えている。なぜならば、国交省は過去4年(18~21年度)、「一般社団法人マンション管理業協会 理事長 」宛に完コピの要請文書を発信し続けているからだ。
ただ、20年7月1日付で土地・建設産業局が再編されて「不動産・建設経済局」が誕生。「一般社団法人マンション管理業協会 理事長 」宛の要請文書の発信名義はこれまでの「土地・建設産業局不動産業課長」から新設された「不動産・建設経済局参事官」に変ったことの影響がゼロではないかもしれない。
IT重説の導入効果(21年度)
上述した是正指導率の減少理由に加えて、3つ目の理由として、21年3月30日から開始されたIT重説(オンラインによる重要事項説明)の影響が考えられる。
IT重説を実施するためには、説明に用いる図面も含め、重要事項説明に必要な資料類を事前に送付しなければならいことになっている。オンラインによる説明だから、どのような説明を受けたのか証拠動画を簡単に残すことができる。
また、IT重説の本格運用にあたって、トラブル等に備えるための相談窓口が開設された。
このように、IT重説の導入が重説トラブルに係る是正率の減少に寄与したことが考えられる。
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