都議会「22年第1回定例会」予算特別委員会(総括質疑 3月7日)で、「羽田新飛行ルートについて」白石たみお議員(共産党)の質疑応答があった。
予算特別委員会で4年連続(19年3月14日、20年3月9日、21年3月9日)羽田新ルート問題を取り上げている。
ネット中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約2千700文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
白石たみお議員(共産)一問一答
白石たみお議員(日本共産党、都議3期、都立大崎高校定時制卒、40歳)
白石:都民の理解や合意を得られていると考えているのか?
それでは質問に入ります。まず、羽田新ルートについてです。
羽田新ルートが本格運用されてから、間もなく2年が経過をいたします。羽田新ルート直下の住民は騒音や落下物の危険性など、日常から影響を受けております。
コロナの影響で、以前と比較して羽田発着便は国際線では7割減、国内線も2割の減便となっております。しかし、羽田新ルートの影響によって、例えば、江戸川区では航空機騒音の発生回数は、なんと2万回を超えました。運用前から2.6倍へと急増しております。驚くべき状況になっています。
実際に(私の)地元品川区をはじめ、羽田新ルート直下の方からは、例えば「朝、飛行機の騒音に起こされて精神的に参ってしまう」「うるさくて窓が開けられない」など、日常の穏やかな生活が脅かされているという声がいくつも寄せられております。大変深刻な実態です。
まず初めに伺います。知事は羽田新飛行ルートについて、都民の理解や合意を得られていると考えているのか。切実なこの声をどのように受け止めているのか伺います。
知事:(国が)地元の理解を得られたものだと判断した、そのように理解
小池百合子 都知事(2期、カイロ大卒!?、69歳)
新飛行経路についてのお尋ねでございます。新飛行経路につきましては、都民の皆様などから騒音、安全対策の実施など、さまざまなご意見があるということは承知をいたしております。
そして、お尋ねの新飛行経路の決定に責任を持つ国が、関係自治体などからのご意見などを受け止めて丁寧に対応するということを前提に、地元の理解を得られたものだと判断した、そのように理解をいたしております。
白石:(環境基準適用の)対象地域を定めるのは一体誰なのか?
知事ね、国がどう理解してるか、私聞いたんじゃないんですよ。知事が、この都民の意見や声やこの実態をどういうふうに受け止めてんのか、理解を得られてるのかという質問しました。
もう本当に他人ごとのように言われます。そもそも羽田新ルートが住民の理解も合意も得ずに開始されたのは、知事と東京都が国に対して「羽田新ルートを予定通り進めてください」と要望し、お墨付きを与えたことが原因なんです。
「理解を得られた」というのは、とんでもない話だと思います。渋谷区議会見ればわかります。渋谷区議会の意見書では、固定化回避の検討会では現在の滑走路の運用を前提としており、これでは住民生活環境は改善しないことを厳しく指摘をしております。
そして、羽田新ルートの運用停止。いいですか、運用停止を国に求めています。自民党の中からも、「せめてコロナでの減便中は新ルートの飛行は止めるべきだ」という声、出されてるんですね。
現在も7つの区議会で、羽田新ルート一時凍結を求める陳情が提出をされております。
よほど理解も納得も得られていないということは明らかだと思います。
環境基本法には、人の健康の保護、生活環境を保全する上で維持されることが望ましいとする環境基準が定められております。知事もよくご存知だと思います。
そこで伺います。羽田空港周辺の航空機騒音による被害を防止するため、対象地域を定めるのは一体誰なのか。また、環境基準が守られているかの監督責任の所在、どこにあるか、伺いたいと思います。
環境局長:環境基本法に基づき知事が指定する
栗岡祥一 環境局長
航空機騒音の環境基準を適用させる地域は、環境基本法に基づき知事が指定することとされております。
また、その環境基準の適合状況を確認するための騒音調査や必要に応じた改善要請は、都が行ってございます。
白石:指定地域外の航空機騒音の環境基準は適用されるか?
知事が航空機騒音の適用地域を決めるということを確認しました。
そして、では続いて伺いたいと思います。現在、航空機騒音の環境基準が適用される地域というのはどこなのか。また、指定地域外の航空機騒音の環境基準は適用されるかどうか。伺います。
環境局長:指定地域外では航空機騒音に係る国の環境基準は適用されません
羽田空港周辺における現在の指定地域は、航空機騒音の環境基準を適用させる地域として、都の告示で定められてございまして、その地域は、大田区、品川区および港区の一部でございます。
この指定地域外では航空機騒音に係る国の環境基準は適用されません。なお、都は現在、新飛行経路の本格運用を受けまして、現在の指定地域の見直しの是非を検討するため、令和2年度から専門家による検討会を立ち上げ、具体的な調査に着手してございます。今後、航空機需要の回復状況等を見極めながら、指定地域の見直し等を検討を進めてまいります。
白石:騒音や落下物のリスクを回避、羽田新ルートの運用を止める以外にない
聞かれたことだけ是非答えていただきたい。
いま、驚きました。羽田新ルートで都心上空をこれだけ飛んでいるのに、環境基準は都内のごく一部しか指定されていない。大田区、品川区、港区の一部だと。先ほど紹介した江戸川区、2.6倍になっている、2万回も超えていると。そういう中で、この江戸川区も含めて、他の地域、圧倒的に不適用になっている。
環境基準の不適用というのは一体どういうことか。都民の健康の保護や生活環境を保全する基準がないと現時点では言えますね。どんなに飛行機がうるさくても、調査、騒音調査や国への改善要請をする責任を都は負わないと、実質的になってしまいます。
知事は国の責任ばかり強調しますが、そもそもこれね、知事が指定できると。自らできるんですよ。だったら知事がすぐにでも、羽田新ルートの直下の自治体も含めて、まず指定をするということが本来あるべき姿だというふうに私は思います。そこに何ら壁はないと。
だって住民に規制がされるんじゃないんですから。騒音に対して規制がかかるんですから。すぐにでも指定すべきだと。
「検討会、いま2回やってるから、これから考えていく」じゃないんですよ。すぐにでもやるべきだというふうに思いですよ。
そもそもですよ、騒音だけの問題じゃないんです。落下物の問題。羽田新ルートを使う限り、落下物の危険性を取り除くことはできません。
2月中旬には、成田空港で60キロの部品が落下する事故がありました。
重量1キロ以上の部品の欠落は、報告されているだけで2018年度が8個、19年度が3個、20年度が8個です。
都心上空を飛び続ける限り、いつ重大な事故が起こってもおかしくない。命が犠牲になってからじゃ遅いんです。都民の理解を得られず、騒音や落下物のリスクを回避する方法は、羽田新ルートの運用を止める以外にないということを改めて強調したいというふうに思います。そして、次の質問、移りたいと思います。
雑感(特筆すべき2点)
今回の白石議員の質問内容には、2点特筆すべき点がある。
羽田新ルート問題を優先的に取り上げたこと
白石議員が今回、約70分の質疑応答なかで、羽田新ルート問題に費やした時間は8分足らず。極めて少ないのだが、他の2件(コロナ対策、都立病院・公社病院)に優先して取り上げたことは高く評価したい。
新型コロナ対策は重要事項であり、それに絡んだ都立・公社病院の独法化問題も都民にとっては関心が高い事項である。それにもかかわらず、羽田新ルート問題を最初に取り上げたことについては、たとえ時間が短かったとはいえ、共産党都議団としての羽田新ルート問題に取り組む決意のほどがうかがえる。
白石議員(品川区選出)が江戸川区の航空機騒音に言及したこと
もう一点強調しておきたいのは、品川区選出の白石議員が江戸川区の航空機騒音問題に2回も言及したこと。
- 例えば、江戸川区では航空機騒音の発生回数は、なんと2万回を超えました。
- 先ほど紹介した江戸川区、2.6倍になっている、2万回も超えていると。そういう中で、この江戸川区も含めて、他の地域、圧倒的に不適用になっている。
江戸川区選出の原純子議員(1期)は、初登壇となった第1回定例会本会議(22年2月24日開催)の一般質問で当初羽田新ルート問題を取り上げる予定だったのだが、時間的制約があるので取り上げなかった。
今回は、時間が足りず、すみませんでした。
都議団チームでしっかり取り上げます。私自身も引き続き新飛行ルート問題についての調査、研究に取り組みます。
都議団チームでしっかり取り上げた結果として、原議員の強い思いが、今回の白石議員の江戸川区への言及につながったのであろう。
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