世界的経営コンサルタント大前研一氏の新著『稼ぎ続ける力: 「定年消滅」時代の新しい仕事論』小学館新書(2021/4/1)を読了。
不動産ビジネスに言及している部分をピックアップ。
※朱書きは、私のメモ。
借金しないで不動産ビジネスを始める
あなたが土地・建物を所有していて、かつ今の建物の容積率に余裕があったら、建て替え時にABSスキームを使えという。
借金しないで不動産ビジネスを始める
(前略)手っ取り早いのが不動産の活用だ。あなたが土地・建物を所有していて、かつ今の建物の容積率に余裕があったら、それをテナントビルやアパートに建て替えて賃貸料を稼ぐという方法がある。
ただし、建て替え時に銀行から融資を受けるなど、ローンを組んではならない。50歳を過ぎてからの多額の借金はもってのほかだ。
では、どうすればよいのか。
この場合、活用したいのがABSという手法だ。
ABSとは「アセット・バックト・セキュリテイ(Asset Backed Security)の略で、「資産担保証券」とも呼ばれる。これは簡単に言えば、建て替えた物件の将来の賃貸収入(キャッシュフロー)を担保にしてお金を借りる、という仕組みだ。個人に対する信用ではなく、物件の信用力に対してお金を貸すのである。このスキームを用いれば、個人で借金せずに資金を調達できる。この手法は、アメリカやドイツでは一般的になっており。日本でも一部の銀行で扱っている。
たとえば、2階建ての建物を所有しているとしよう。これを5階建てに建て替え、1~3階は賃貸にして、自分たちは4~5階に居住する。1~3階の将来の賃貸料を抵当に入れて資金を調達するのが、ABSというスキームだ。(以下略)
(P140-141/第5章[実践編3]稼げるビジネスはこれだ)
※ABSについては、大和ハウス工業HPの<今さら聞けない「不動産証券化」>の「ABSは証券化の代表選手」に詳しく解説されている。
”住宅版メルカリ”
顧客の物件を買い取る時に、できるだけ新たな負担が少ない住み替え物件を紹介するというビジネス”住宅版メルカリ”の提案。
事業チャンスは”住宅版メルカリ”
(前略)本格移住とまではいかなくても、東京に住所をキープしながら、リゾート地にテレワーク用マンションを購人して「2拠点生活」をする人が増えているわけで、奇しくも新型コロナ禍によって日本人のライフスタイルが多様化しつつあるのだ。
そういう変化の中で新たなビジネスチャンスがあるとすれば。「不動産交換」だろう。つまり、顧客の物件を買い取る時に、できるだけ新たな負担が少ない住み替え物件を紹介するというビジネスである。今も住宅の買い替え時にそれまで所有していた物件を下取りするサービスはあるが、もっときめ細かくて自由度のある不動産取引サービスにするのだ。いわば”住宅版メルカリ”である。そうすれば、買い替えに対する顧客の不安を解消することができ、潜在的なニーズを掘り起こせるはずだ。(以下略)(P151/第5章[実践編3]稼げるビジネスはこれだ)
※”住宅版メルカリ”を実現するには法的なハードルが高そうだ(業界の横やりも)。
多拠点生活ニーズをとらえたビジネスの先行事例としては、空き家を市場に流通させる「家いちば」がある(「家いちば」という社会実験『空き家幸福論』日経BP)。
アパート経営、長期間の家賃保証などあり得ない
新築賃貸住宅が毎年30万戸増え、空き家率が上昇し続けているなかで、長期間の家賃保証などあり得ないという忠告。
アパート経営はもってのほか
(前略)サブリースの問題点は二つある。一つは、1億円以上の借金を背負うところからスタートすることだ。完済するまでにいったい何年かかるのか。あまりにも無謀である。
もう一つは、長期間の家賃保証などあり得ない、ということだ。担当者から経済事情の変動や近隣の相場家賃を持ち出され、早々に減額されるに違いない。なぜなら、賃貸住宅は毎年40万戸前後も着工され続けているからである。
国土交通省の「住宅着工統計」によれば、2013年は37万5000戸(全体の新築着工件数は98万7000戸)、2014年は36万6000戸(同88万戸)、2015年は39万戸(同92万1000戸)、2016年は43万3000戸(同97万4000戸)……という具合である。
近年は減少傾向にあり。毎年30万戸台に落ち着いているが、少子化で人口減が確実な日本の場合、世帯数が右肩上かりで上昇することはない。それは誰もが理解しているだろうにもかかわらず、新築賃貸住宅が毎年30万戸増え、空き家率が上昇し続けているのである。そういう状況の中で、長期間の家賃保証などあり得るだろうか。冷静に考えれば、「あり得ない」という解を得るのはそう難しいことではない。(P180-181/第6章[終活編]稼いだお金は死ぬまでに使い果たそう)
※国土交通省が21年4月28日に公表した「住宅着工統計(令和2年度分)」を可視化すると、「貸家」は、87年度の89万戸をピークに大きく減少し、20年度は30万戸とピーク時の3分の1(次図)。
「住宅着工統計(20年度)|首都圏分譲マンション、5.5万戸を下回る」より
本書の構成
6章構成。全206頁。
- 第1章[近未来予測]
2040年に「老後」は存在しない- 第2章[思考改革]
人生を「国任せ」にするな- 第3章[実践編1]
会社を実験台にして「稼ぐ力」を身につける- 第4章[実践編2]
"お金を生む"発想力を磨く- 第5章[実践編3]
稼げるビジネスはこれだ- 第6章[終活編]
稼いだお金は死ぬまでに使い果たそう
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