不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

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『ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか』

Airbnb Japan株式会社執行役員・長田英知氏の著書『ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか』ディスカヴァー・トゥエンティワン(2021/2/19)を読了。

Airbnb Japanの執行役員なのに民泊にはあまり触れず、具体的な数字を示しながらポスト・コロナ時代の住まいのあり方を論じる姿勢は評価できる。

朱書きは、私のメモ。


もくじ

「客観的な価値」より「主観的な価値」

ポスト・コロナ時代に大切になってくるのは、他人から見た「客観的な価値」ではなく、「人間らしく生きる」ことが可能なのかという「主観的な価値」だという。

「あたらしい、ふつう」を取り戻す

(前略)ポスト・コロナの時代においては、生活や社会活動の中心が会社から自宅へと移っていきます。そうなったときに大切になってくるのは、駅近や築年数などの住居としての資産価値や効率性など、他人から見た「客観的な価値」ではなく、生きている充実感を自宅および自宅周辺のコミュニテイの中で感じ、「人間らしく生きる」ことが可能なのかという「主観的な価値」です
(中略)

具体的には、住む場所としてだけでなく働く場所として、あるいは遊ぶ場所として多目的に利用できるような間取りが求められるようになります。さらにはその間取りも容易に変えることができ、ライフステージの変化に伴い部屋を増やしたり、減らしたりすることが可能となるでしょう。また家族以外の様々な人々とシェアすることも想定して、プライバシー、セキュリテイを確保した仕組みをあらかじめ埋め込んでおくことも大事になってきます。

(P170-172/第6章 住み方・暮らし方を考える)

※ポスト・コロナの時代のマンション選びは、駅チカ一辺倒ではなく、自宅周辺環境にも目を向けたい。大規模公園に近いことなど。

その住まいは誰を幸せにするか

普段その住居に住んでいない人にとっての幸せを設計するという視点が大切になってくるという。

情緒的な視点

(前略)
 「その仕事は新しいか?」
 「その仕事は楽しいか?」
 「その仕事は誰を幸せにするか?」

この問いの「仕事」という言葉を「住まい」という言葉に変えると、そのまま私たちが物件の情緒的価値を評価する助けになります。
(中略)
もう一つ、見落としがちであるけれど大切なのは、普段その住居に住んでいない人にとっての幸せを設計するという視点です。

例えば遠方に住んでいる両親や親族が家に訪れたときに心地よく過ごすことができるのか。友人が訪れて家で飲み会をするときに、プライベートな動線との切り分けがうまくいくかどうかといったことは、これらの機会が多い人にとっては重要なポイントとなるかもしれません。

(P220-223/第7章 新しい「住まい」をデザインする)

※かつて国交省は「第8期住宅建設5箇年計画」(2005年度に終了)で、2015年の都市居住型誘導居住水準の目標として、4人世帯 で91m2を掲げていた。でも、現実はより狭く、より高くなっている(次図)。

23区のマンションで、両親・親族や友人の訪問を意識したプライベートな動線の切り分けは厳しい……。

分譲価格・専有面積の推移(23区新築マンション)
過去19年間の「首都圏新築マンション市場動向」を可視化(2020年版) 」より

働く場所と稼ぐ場所の分離

将来的に二拠点居住を選択する人が増えてきた場合、合わせて起きると考えられるのが働く場所と稼ぐ場所の分離だという。

「新しい日常」に合った暮らしを考える

(前略)こうしたアーリーアダプターの活動によって、都心部に偏っていた生活はやがて郊外の住宅地域や、地方へと広がっていきます。そしてより分散された地域での飲食や遊びなどの経済活動の機会が増え、やがては地方都市の不動産価値にも影響を与えることが予想されます

また将来的に二拠点居住を選択する人が増えてきた場合、合わせて起きると考えられるのが働く場所(=Work)と私たちが稼ぐ場所(=Earn)の分離です。

二拠点居住の場合、いずれか、あるいは両方の不動産を不在時に貸し出すことができれば、不労収入を得る(=Earn)ことができるようになります。

その収入だけで暮らしていくというのには足りないかもしれませんが、二拠点目の維持費+お小遣い程度の金額を稼ぐことができれば、それは生活の大きな助けとなるでしょう。

(P233-234/第8章 新しい「暮らし」をデザインする)

※国交省も都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ「二地域居住」を推進している。全国二地域居住等促進協議会が先月(3月9日)設立され、特設サイトが開設された。

本書の構成

8章構成。全276頁。

  • 第1章 新型コロナ前の社会のトレンドと住宅事情
  • 第2章 新型コロナがもたらした社会の変化
  • 第3章 ポスト・コロナ社会の特徴
  • 第4章 働き方・学び方はどう変わるのか
  • 第5章 遊び方はどう変わるのか
  • 第6章 住み方・暮らし方を考える
  • 第7章 新しい「住まい」をデザインする
  • 第8章 新しい「暮らし」をデザインする

ポスト・コロナ時代 どこに住み、どう働くか

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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