元日本マイクロソフト代表取締役社長、成毛眞氏の新著『2040年の未来予測』 日経BP(2021/1/8)を読了。
少子高齢化で20年後の日本は暗くなりがちだが、テクノロジーの変革に明るい兆しが見えるという。備えあれば憂いなし。特に若い世代におススメしたい1冊。
※朱書きは、筆者メモ。
孤立死は避けられない恐ろしい未来
総人口は減るにもかかわらず、未婚の人口は今の3~4倍。独身で低所得だった場合、孤立死は避けられない恐ろしい未来。
老人ホームは高い
(前略)現在、都心部だと、看護師が夜も常駐している民間の老人ホームは、月35万円くらい出さないと入れない。安くても25万~26万円はする。
特別養護老人ホームの利用料でも、年金で入れるような月15万円くらいの施設は都市部にはない。特養であっても、経済的余裕がなげれば入れないのが実情だ。
施設に入れない人の介護を誰が引き受けるかというと、家族が自宅で面倒を見ることになる。自宅で亡くなる人の割合は東京は17.5%、大阪では15.4%だ。
(中略)
まさに今現在は、ギリギリのところで支え合って、耐えているという表現がぴったりくる。しかし、2040年にはこのモデルは持ちこたえられなくなっている可能性が高い。なぜなら、未婚率が上昇しているからだ。
2019年時点の75歳以上の未婚者は全国で70万人弱。2030年には約140万人に増え、2045年には約250万人になる。総人口は減るにもかかわらず、未婚の人口は今の3~4倍になるのだ。独身で低所得だった場合、孤立死は避けられない。
恐ろしい未来に、暗くなられただろうか。しかし、希望もある。
(P136-137/第2章 あなたの不幸に直結する未来の経済)
※老人ホーム選びは、マンション選び以上に失敗が許されない。失敗をリカバーすることが体力的にも経済的に困難である可能性が高いからだ。
体力・気力が充実しているうちに、住宅すごろくの最終段階の知見を蓄えておきたい。
定額制で日本各地の家に住み放題
2040年は住宅が飽和状態になり、定額制で日本各地の家に住み放題のサービスにより、平日と週末、季節ごとに気軽に家を変えて過ごすというライフスタイルも可能になるという予測。
マンションの価値は下がる
(前略)マンションに関して、お先真っ暗な未来しか描けないかもしれないが、希望もある。人口増が望めない以上、新築の物件は減り、戸建ての空き家はどこかで頭打ちになるはずだ。
資産価値が見込める一部を除き、住宅の価値は下落する。家を買うにしても借りるにしてもコストは下がる。おそらく、自分の家が欲しいと考える人は、サラリーマン層にはいなくなっていくだろう。家を買う必要がないと考える人が増えれば、家の価格はさらに下がる。つまり、マンションも戸建ても買わない方がいい。
昭和・平成の時代にサラリーマンを縛った「35年住宅ローン」は文字通り過去の遺物となり、買わずに借りるにしても家賃が収人に占める割合は劇的に下がる。そうなればローンを苦にした自殺者も減る。
すでに、2020年時点で、定額制で日本各地の家に住み放題のサービスがいくつも生まれている。2040年は住宅が飽和状態になる以上、こうしたサービスが増え、家はよりどりみどりになるはずだ。平日と週末、季節ごとに気軽に家を変えて過ごすというライフスタイルも可能になるだろう。住宅は発想を変えれば、意外に楽しめる一例ではないだろうか。
(P213-214/第3章 衣・食・住を考えながら、未来を予測する力をつける)
※全国定額(月額4万円、税別)で住み放題サービスを展開している「ADDress」では130件の家が利用可能(21年2月12日現在)。1年余りで22件から130件にまで増えた(次図)。
富士山が噴火いつ起きてもおかしくない
富士山が噴火いつ起きてもおかしくないから備えが必要だという。
富士山が噴火すると日本中の機能がストップする
(前略)おそらく1年以上、首都圏は機能しなくなる。日本経済が止まれば全世界の経済は滞り、世界のGDPは年率5%程度は下落するはずだ。
株価は絶望的に下落するだろうし、不動産価値は紙くずになるはずだ。
とはいえ、2040年代の日本は落ちぶれたとはいえ、いまだ世界有数の経済国であることは間違いないだろうから、ハイパーインフレにはなりにくい。世界経済のために、諸外国が支えてくれるだろう。
こう考えると、2章で預貯金は旨味はないと語ったが、国内株や国内の不動産よりは、意外にも普通預貯金が目減りしないという意味では安全な資産になるかもしれない。いずれにせよ、そうしたリスクの震源地になる国に我々は住んでいることを忘れてはいけない。
日本ではこの300年ほど大きな噴火は起きていないが、歴史的には珍しい。逆にいえばいつ起きてもおかしくないともいえる。現代の科学の力では、地震や火山がいつ起きるかは正確に予測できないが、いつかは起きる前提での備えが必要だ。(P259/第4章 天災は必ず起こる)
※富士山噴火に警鐘を鳴らしているおススメの本:
- 鎌田浩毅著『富士山噴火と南海トラフ』20XX年、国家存亡の危機 (ブルーバックス)
- 磯田道史著『天災から日本史を読みなおす』(中公新書)
本書の構成
4章構成。全271頁。
- 第1章 テクノロジーの進歩だけが未来を明るくする
- 第2章 あなたの不幸に直結する未来の経済ーー年金、税金、医療費
- 第3章 衣・食・住を考えながら、未来を予測する力をつける
- 第4章 天災は必ず起こる
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