江戸川区議会の「21年第1回定例会」予算特別委員会(3月2日)で、羽田新ルートに関して、大橋美枝子議員(共産)の質疑応答があった。
録画放映をもとに、テキスト化(約4千200文字)しておいた。
※以下長文。時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。
※答弁は環境推進課長
大橋美枝子議員(共産、区議3期、千葉大卒、71歳)
苦情について
大橋:40件の苦情、主な中身をもう少し詳しく
今日の本題は、羽田空港機能強化、荒川新ルートについてお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いします。
まずは初めにたくさん資料をいただきまして、ありがとうございました。(資料の)なかで40件の苦情があったというふうに資料では頂いておりますが、主な中身をもう少し詳しく教えてください。
環境推進課長
課長:「頻繁に飛んでいる」「コースを外れている」「うるさい」
主な苦情の内容ということでございますが、3点でございます。「頻繁に飛んでいる」「コースを外れている」「うるさい」と、この3つが主な苦情でございます。以上です。
ユナイテッド航空便事故に関連して
大橋:ユナイテッド航空便事故、国の説明?
大変、適切な意見だと私は逆に思いましたけれども、その辺が1番皆さん関心が高いというのを改めて感じます。
それで最近、特にアメリカのコロラド州デンバー発ホノルル行きのユナイテッド航空便ボーイング777離陸直後の右エンジン爆発・炎上と住宅街への部品落下事故がありました。本当に重大な事故であり、緊急な対応ということが求められるということで、離陸直後ですから、荒川沿いルートと川崎上空のルート、これ離陸便です。落下物の危険が増すことにつながるのではないかと感じたところです。
国からこの事故に関して江戸川区の方に何か説明があったかどうか。説明がないとしたら、区から是非この事故の対応について聞いてもらいたいと思うんですが、どうでしょうか。
課長:途中経過情報提供が2回ほど届いております
これ日本時間で、2月21日の日曜日午前9時過ぎに起こった事故でございますが、もうすでに当日中に、国から同系列のエンジンを搭載した航空機を運航する国内会社のJAL並びにANA、合計32機ございますが、それに対して、当面の運行停止を指示したという情報提供はございました。その後も随時、途中経過情報提供が2回ほど届いております。以上でございます。
大橋:海外の機材情報を全て明らかにするよう国に要請してほしい
やっぱりそういう情報をきちんと関係自治体に届けるっていうのは当然だと私も思いますけれども、そういうことを踏まえて改めて意見として述べたいのですが、いま仰ったように国土交通省がそういうふうに指示を出したわけですけれども、海外キャリアに対しては停止措置はできないため、同型で、戦陣機材で飛来しないよう国交省が(文書を)発出したというふうにも聞いていますで、羽田空港でもそういう事故が起こる可能性があるということを、私も別に不安を煽るわけではございませんが、やはりエンジンの一部が燃えながら、そういう映像が大変衝撃的でした。
荒川沿いも川崎上空も住宅や工場が密集して今回のような事故が起きたら、重大な事故につながるということを改めて認識し、そして落下物の危険を回避するには海上ルートしかないと実感したところでございます。
もう1点、昨年の12月4日の那覇空港発羽田行き日本航空904便も同じエンジンを搭載しています。これでエンジントラブルで那覇空港に引き返しているんですけれども、この時は左エンジンの破損事故でP&W社の同系列エンジンを搭載していて、一連の事故原因に何らかの共通因子が存在する可能性があるのではないでしょうか。徹底した解明が必要です。
国はこの那覇空港の事故に対して、12月4日当日、同系列エンジンを使用する国内航空会社に緊急点検を指示し問題ないことが確認されたと発表しているんです。この那覇空港の事故について、元日航機長の杉江さんは「年劣化などでファンブレードが破損しカバーに衝撃を与えた可能性がある。燃料爆発などにつながる恐れも否定できないうえ、レードには、チタン製のものもあり、都心などで落下していれば危険だ」と徹底した原因究明と再発防止が必要だというふうに述べているところです。
そこで改めてお聞きしますけれども、様々なこういう問題があった時に区として、例えば国内の空港へのその問題と併せて、海外の様々な飛来する機材情報を全て明らかにするよう区としても国に要請してほしいと思いますが、どうでしょうか。
課長:区として要請する考えは、今のところはございません
先ほど申し上げましたが、既に国内の航空会社につきましては当面、運行停止を国が指示をしております。また、海外の航空会社に対しては、委員も仰るように「停止措置の指示はできない。飛来しないようお願いをすることしかできない」ということですが、それも国としてやってるということでございます。
また、国からは、このお願いに対して、「海外の航空会社からは同系列のエンジンを搭載した航空機は乗り入れていないということも確認をした」と聞いております。
そのようなところから、国においてしっかりと状況を把握し、必要な指示を出しているということから、区として要請する考えは、今のところはございません。以上でございます。
大橋:この事故が起こった段階で海上ルートに戻すことを国に求めてほしい
今のことで、まあ当面大丈夫って、ちょっと思いましたけれども、今後とも緊急にこういうことが起きた場合には引き続き国と連絡を取ってきちんと要請をしてくっていうことをお願いしたいと思います。
そこで、航空機の様々な落下物の対応について徹底したチェックが必要だというのは当然でございますが、2017年から部品欠落のデータが公開されるようになって、資料も頂いています。
情報公開という点では1歩前進したと思うんですけれども、まだ対策が不十分だというふうに捉えています。
先日、国交省が配布したこのチラシ(PDF:5.3MB)。こんなチラシが配られておりますけれども、この中に落下物対策について、「航空機の小さな部品についても、国の職員自ら徹底的に点検を行っています。2019年度は600機以上をチェックしました」とありますけれども、専門家、整備士ではない職員が事故に繋がる可能性の事前チェックができるのか疑問です。しかも、1年間で600機以上というチェックは少なすぎるんです。1日あたり、羽田空港は国内線で1千回、国際線は2200回と国が説明しています。
これを累計すると年間44万回になりますが、そのうち、なんと600機以上というのですから、1日あたり2機以下というのはあまりにも少ない。このことをきちんと、私としては問題として改めて江戸川区でこれから出来ることってなると、やっぱり海上ルートに戻すことを国に求めるべきと考えるんですけれども。
もう今までもお聞きしていますけど、改めてこの事故が起こった段階で海上ルートに戻すことを国に求めてほしいんですが、どうでしょうか。
課長:区として答える立場にはない
これまでもお答えをさせて頂いておりますが、航空行政というものは、国の判断のもとで行われるものと考えておりますので、区として答える立場にはないと、そのように考えております。以上でございます。
大橋:私はきちんと意見を言ってしてほしい
まあ、そういうご回答としたら、改めて、区民の命と健康、暮らしを守るという、本当に選ばれる江戸川区にするためにも、私はきちんと意見を言ってしてほしいと改めて強調させていただきます。
騒音対策について
大橋:清新町の学校も国の騒音を測定をやってほしい
次に、騒音対策について伺います。
先ほどの区民の苦情として出ていましたけれども、たいへん航空機の機数が増えました。当然ですけども、頂いた資料で1月31日速報値、荒川沿い北風新ルート261日で15,615機、悪天候58日で2,660機に通ってるというふうに、南風悪天候減っていますけれども、北風新ルートとが大変増加していて、本当に桁違いに多くなっていると。
実は2019年度はもうデータが出ていますので、それを調べますと、年間76日で8,554機です。年間に比べたら2倍、もうすでに飛んでいるということになります。特に10月からずっと南風が減りますから、北風が全面になるので、数字から比べましたら、10月の通過が2019年10月が315機だったのが2020年は2,555機で計算すると、8.1倍にもなってんです。このことが本当に私は問題だと改めて思うので、対策をお聞きします。
区内1か所防音工事といっていますが、どういうふうになっているか。2つ目は学校や病院、福祉施設などのこの騒音の聞き取りやってほしい、アンケートとってほしい。
3つ目は第5葛西小だけではなく清新町の学校も国の騒音を測定をやってほしいと思いますが、どうでしょうか。
課長:設置について、区が答える立場にはない
1点目の施設における防音工事ということでございますが、この対応は終わってると聞いております。国の助成基準に基づいて、具体的には換気口への防音カバーの設置などを行ったというふうに聞いております。
2つ目の防音対策でございますが、これは国の責任において適切に行うべきものと考えております。
それから3つ目、測定局ということでございますが、国が現在の第5葛西小学校に設置するにあたっては、区に相談がございました。飛行経路ですとか、区にも測定局があるんですけれども、その騒音測定局の位置関係などを考慮したと聞いておりまして、改めて設置について、区が答える立場にはないと、そのように考えております。以上でございます。
その他
大橋:説明会の開催を要望してほしい
本当に私はもっと国が責任持ってやってほしいと改めて思います。
国がやらない以上、区がどこまでできるかってことを検討してほしい。合わせて、この(チラシに記載されている)内容では不十分だと思いますので、チラシで終わらせず、是非とも説明会の開催を要望してほしいと思いますが、その点について、最後に(答弁を)お願いします。
課長:ことあるごとに説明会の開催を求めている
説明会の開催につきましては、これまでも再三お話をさせて頂いておりますが、区としても、かなり精力的に行っているつもりでございます。
都が定期的に開催しております国が出席する会議において、あるいは事務職員として事務連絡で国の職員に電話する時、あるい国交省の職員が訪れる時など、機会あるごとに要望をしております。
私がこの立場を拝命してから8か月弱ですが、もう既に9回直接面会、あるいは会議の場で話をしておりますし、私どもの部長も国の会議の場で3回。そうしますと2人合わせて12回ということで平均すると、月に1回はお話をさせて頂いております。さらに、職員レベルでも、本当に1週間に何度もやり取りをするんですが、ことあるごとに説明会の開催を求めているということでございます。
この件につきましては引き続き区としても必要と感じておりますので、説明会の開催についての要望は続けてまいりたいとそのように考えております。以上でございます。
大橋:引き続き国に問題を投げかけてほしい
また引き続き積極的に働きかけてほしいっていうことで、特に、本当に区がSDGsを推進するってことになれば、本当に区民一人ひとりの声をきちんと受け止めて、ぜひ頑張ってほしいと思いますが、区の姿勢については、私たちは問題点は指摘しつつ、是非とも引き続き国に問題を投げかけてほしいと思います。以上です。
雑感
江戸川区民はヒドイ飛行騒音環境に晒されている
江戸川区では羽田新ルートが導入される以前から、南風で悪天候等により視界が悪く、通常のルートが使用できない時に限り、安全を確保するため、誘導の電波に沿って江戸川区上空を通過して着陸するルートが運用されている(次図)。
南風で悪天時の多い7月には900機(3か年平均)が江戸川区上空を飛行している。
江戸川区民にとって、従来の南風・悪天時の着陸ルートに、羽田新ルートの北風時の出発ルート(7時~11時半・15時~19時)が加わったのである。北風時の出発ルートは、南風時に都心を通過して羽田に向かう着陸ルート(15時~19時)よりも運用される時間がはるかに長い。
新型コロナの感染拡大の影響で便数が大幅に減っているとはいえ、北風時の荒川沿い北上ルートの便数は、南風時の都心低空飛行よりも圧倒的に多い(次図)。
しかも、高高度(1.2~2.4km)を通過するルート直下の小松川第二中学校でさえ最大騒音レベルは70dBを軽く超えている(次図)。
また、北風時の出発ルートは、国交省の説明では荒川に沿って北上するはずだったのに、江戸川区の陸域にまでズレ込みまくっている(次図)。
「北風時の荒川沿いルート、江戸川区の陸域にまでズレ込んでいる」より。
江戸川区議(43名)はどこを向いて仕事をしているのだ
江戸川区民はこんなにもヒドイ飛行騒音環境に晒されているにも係わらず、江戸川区議会 20年第1回定例会(2/22-24)本会議の一般質問で、登壇した10名のうち共産党の2名(小俣則子議員5期71歳、牧野けんじ議員2期43歳)を含め、誰も羽田新ルートの問題を取り上げなかった。
江戸川区議43名は、いったいどこを向いて仕事をしているのだ。
今回、大橋美枝子議員(3期71歳)が予算特別委員会の舞台で展開した丁寧な質疑内容については高く評価できるものの、広く区民に伝わることもなく、議事録の肥やしにしかならないのか……。一般質問以外の舞台での議論は存在していないも同じ、と私は思う。
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