2020年3月29日から、羽田空港の新飛行経路(いわゆる「羽田新ルート」)の運用が始まった。
東京都は、羽田新ルート周辺に設置した騒音測定局(計5か所)において航空機騒音を常時測定し、その結果を騒音モニタリング結果(速報値)として公表している。従来は測定日の数日後に更新されていたが、2024年度以降は概ね1週間に1回程度の更新頻度に変更された。
※初投稿:2020年4月21日(最終更新:2026年11月6日)
- 東京都の騒音測定局の位置
- 南風運用時|最大騒音レベルの最大値(3か所)の推移
- 北風運用時|最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移
- 【参考1】「北・南風運用」と「南・北風運用」の表記の違い
- 【参考2】羽田新ルート南風時運用でなくても「南風時」記載
- 【参考3】データ更新の一時停止と都の回答(2026年10月)
東京都の騒音測定局の位置
東京都が羽田新ルート周辺で航空機騒音をモニタリングしている測定局は、以下の5か所である(次図)。
- 南風運用時
- 東京都中央卸売市場 食肉市場
- 渋谷区立猿楽小学校
- 渋谷区立千駄谷小学校
- 練馬区立向山小学校
⇒練馬区立こども発達支援センター(2024年10月22日から)
- 北風運用時
- 江戸川区立小松川第二中学校(~2021年3月31日)
(首都高7号線の影響が大きいことから、下記へ移設) - 江戸川区立小松川図書館(2021年6月2日~)
- 江戸川区立小松川第二中学校(~2021年3月31日)
南風運用時|最大騒音レベルの最大値(3か所)の推移
南風運用時に都心上空を通過して羽田空港へ到着する羽田新ルートは、午後(15時~19時のうち約3時間)に運用される。
2020年3月29日以降に観測された、最大騒音レベルの最大値(小学校3か所)の推移を次図に示す。
※渋谷区立猿楽小学校では、2025年6月23日に83dBを記録している。

※練馬区立向山小学校の測定地点は、2024年10月22日から練馬区立こども発達支援センターへ移設された。
- 本モニタリング結果は速報値であり、今後修正される可能性がある。
- 最大騒音レベル(単位:dB)とは、航空機騒音1回ごとに観測される最大値であり、騒音計の時間重み付け特性はS(Slow)に設定されている。
- 騒音発生回数は、最大騒音レベルが暗騒音より10dB以上大きい航空機騒音を集計したものである。
(東京都「航空機騒音モニタリング結果」注記より)
- 渋谷区立猿楽小学校および千駄谷小学校では、最大騒音レベルが75dBを超える日が継続的に確認されている。80dBを超える値が観測される日もある。
-
猿楽小学校はA滑走路の到着ルート直下に位置する。大型機(B777-300)は高度を下げながら通過する。
国交省FAQ冊子(v5.1.2、P51)によれば、着陸時の最大騒音レベルは高度2500ftで約72dBとされている。これと比較すると、都の測定データでは、この水準を上回る値が継続的に観測されていることが分かる。
- 2020年7月10日に中央卸売市場で観測された86dBについて東京都に照会したところ、「測定器に異常はなく、航空機騒音によるものと考えている」との回答を得た(同年7月20日)。
- 2021年2月5日に千駄谷小学校で観測された85dBについても、東京都から「航空機騒音によるものと考えている」との回答があった(同年2月24日)。
次に、南風運用時の騒音発生回数を小学校別に比較する。
千駄谷小学校(Cルート下)の騒音発生回数は、猿楽小学校(Aルート下)のおおむね2倍で推移している。
※千駄谷小学校では、2025年7月22日に過去最多となる99回を記録した。

これを月平均値として整理したものが次図である。
最大騒音レベルに大きな差がない一方で、騒音に曝露される頻度には明確な差があることが読み取れる。
※騒音発生回数は南風運用頻度という季節要因の影響を受けるため、前年同月比で見ると、2024年度以降の千駄谷小学校では増加から頭打ち傾向が確認できる。

メモ
- 2024年1月の騒音レベルが高くなっているのは、南風運用が2日間のみ実施され、いずれも高い値を記録したためである。
- 2026年2月の騒音発生回数がに低下したのは、観測された5日間のうち3日間の値が低かったため。
北風運用時|最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移
北風運用時には、羽田空港を出発した航空機が荒川沿いに北上する羽田新ルートが用いられる。運用時間帯は、午前(7時~11時半)および午後(15時~19時のうち約3時間)である。
2020年3月29日以降に観測された最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移を次図に示す。
※2021年3月31日以前の小松川第二中学校での測定値については、後述の理由から参考扱いとする。

測定場所:
- ~2021年3月31日:江戸川区立小松川第二中学校
- 2021年4月1日~6月1日:測定地点移設準備のため欠測
- 2021年6月2日~:江戸川区立小松川図書館
※測定局移設の経緯については、「騒音モニタリング地点の移設」参照。
測定局移設後のデータを月平均で整理すると、騒音発生回数が明確に増加していることが分かる。これは、移設前の測定では飛行騒音が十分に捕捉されていなかった可能性を示唆している。

小松川図書館(2021年6月2日~)
測定局移設後の騒音発生回数の推移を次図に示す。
※2025年2月1日には、過去最多となる155回を記録している。

以上のように、東京都が公表する騒音モニタリング結果を時系列で整理すると、最大騒音レベル(ピーク)と騒音発生回数(頻度)の双方について、測定地点ごとに異なる特徴が確認できる。
本記事は、今後もデータ更新に合わせて定点観測として継続的に記録していく。
【参考】小松川第二中(~21年3月31日)
※以下、測定局が江戸川区立小松川第二中学校に設置されていたときの分析。
最大騒音レベルにバラツキがみられる。考えられる理由としては、上昇中の飛行高度のバラツキが大きいこと。
具体的にいえば、測定局が設置されている江戸川区立小松川第二中学校の上空を通過する飛行高度は、国交省の計画では4000~8000ft(約1200~2400m)とかなりの幅がある。
ちなみに、大型機(B777-300)離陸時の直下の最大騒音レベルは、FAQ冊子v.5.1.2_P51によれば、高度4000ft(約1200m)で74dB、6000ft(約1830m)で69dBとなっている(高度8000ftの騒音値は公開されていない)。
※測定場所が首都高7号線に隣接している問題については、「測定場所に隣接している首都高7号線の影響」参照。
※(追記21年4月7日)都が4月1日に公表した資料には「江戸川区立小松川第二中学校については、測定地点の移設準備作業のため欠測」と記されていた。都は、測定地点の選定が不適切であったことを認めたのだろう。詳しくは、「【追記】東京都、測定地点の選定が不適切であったことを認めた!?」参照。
【参考1】「北・南風運用」と「南・北風運用」の表記の違い
※追記21年5月17日
21年4月25日の運用表記が従来の「北・南風時」ではなく、「南・北風時」となっていた(次図)。南北が入れ替わったのは初めてだった。

単なる誤記なのか、都環境局にメール照会したところ5月17日、環境改善部大気保全課から以下の回答を得た。ようするに誤記ではないということ。
東京国際空港(羽田空港)の新飛行経路の飛行に伴う騒音モニタリングの結果の「運用」欄について、「北・南風運用」と「南・北風運用」の違いは次のとおりです。
北・南風運用
- 7時から11時半まで新飛行経路の北風運用を行い、15時から19時(うち3時間程度)まで新飛行経路の南風運用を行った場合。
南・北風運用
- 15時から新飛行経路の南風運用を行っていたが、19時までの間に北風運用に変更した場合。(7時から11時半までは、新飛行経路の北風運用だった場合と、以前までの飛行経路による南風運用だった場合があります。)
【参考2】羽田新ルート南風時運用でなくても「南風時」記載
都環境局が毎日公表している騒音データのうち、22年3月26日の運用欄が「南風時」となっているのに騒音データが空白になっていた(次図)。

気象庁の過去データによれば、当日の羽田新ルート運用時間帯は概ね北北東の風であった(南風ではなかった)。また、国交省が運用している「羽田空港飛行コース」によれば、当日は羽田新ルートの運用は実施されていなかった。
そこで「お問合せフォーム」を使って、東京都環境局 環境改善部 大気保全課に「南風時」と記載した理由につき照会したところ、次の回答メールが送られてきた(22年4月1日)。
令和4年3月26日(土曜日)は新飛行経路の運用がなく、従来の飛行経路で終日南風時運用を行っていたため、便宜上、これまでどおり「南風時」と記載しております。
【参考3】データ更新の一時停止と都の回答(2026年10月)
2026年9月15日の公表を最後に約3週間にわたりデータの更新が停止していた件につき、東京都環境局へ照会を行い、以下の回答を得た。
- 遅延理由と現状: 担当者の体調不良および連休に伴う不在によるもの。滞っていたデータチェックを実施し、10月8日に更新を完了。システム障害ではなく運用上の遅延。
- 遅延時の告知および再発防止策: 更新遅延に関する事前の告知は実施されず。今後の告知ルールおよび再発防止策については「現在検討中」との回答にとどまる。
2026年5月に公表プロセスの再設定が行われたものの、担当者1名の不在によって約3週間にわたり公表が停止する運用構造(単一障害点)が確認された。データの継続性と信頼性を担保するため、不在時における代行フローの構築および遅延告知ルールの明文化が課題となる。
あわせて読みたい