20年3月29日から羽田新ルートの運用が始まった。
東京都は羽田新ルート周辺の騒音測定局(5か所)で測定した騒音モニタリング結果(速報値)を数日後に公表している。
※投稿20年4月21日(更新23年12月6日)
- 東京都の騒音測定局の位置
- 南風運用時、最大騒音レベルの最大値(4か所)の推移
- 北風運用時、最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移
- 【参考1】「北・南風運用」と「南・北風運用」の表記の違い
- 【参考2】羽田新ルート南風時運用でなくても「南風時」記載
東京都の騒音測定局の位置
東京都が羽田新ルート周辺で騒音をモニタリングしている測定局は、次の5か所(次図)。
- 南風運用時
- 東京都中央卸売市場食肉市場
- 渋谷区立猿楽小学校
- 渋谷区立千駄谷小学校
- 練馬区立向山小学校
- 北風運用時
- 江戸川区立小松川第二中学校(~21年3月31日)
(↓ 隣接首都高の影響大のため、下記へ移設) - 江戸川区立小松川図書館(21年6月2日~)
- 江戸川区立小松川第二中学校(~21年3月31日)
南風運用時、最大騒音レベルの最大値(4か所)の推移
南風運用時に都心上空を通過して羽田空港に到着するルートの運用時間帯は、午後(15時から19時、うち3時間)が対象。
20年3月29日以降の最大騒音レベルの最大値(4か所)の推移を次図に示す。
- 1 本モニタリング結果は速報値であり、今後修正することがある。
- 2 最大騒音レベル(単位:デシベル (dB))とは、(個々の) 航空機騒音の発生ごとに観測される騒音レベルの最大値で、本モニタリング結果は、騒音計の時間重み付け特性をS(Slow)に設定したものである。
- (3 省略)
- 4 騒音発生回数は個々の航空機騒音の最大騒音レベルが暗騒音より10 dB以上大きい航空機騒音の集計値である。
- (5~6省略)
(航空機騒音モニタリング結果「注」より)
- 渋谷区の猿楽小学校●と千駄谷小学校●の最大騒音レベルの最大値は75dBを超える日がある。たまに80dBを超える日もある。
-
猿楽小はA滑走路到着ルートのほぼ直下に位置している。
大型機(B777-300)は高度を下げながら通過する。国交省のFAQ冊子v5.12(P51)に掲載されている着陸時の最大騒音レベルのデータによれば、次のように変化する。
3000ft(70dB)⇒2500ft(72dB)都の測定データはほとんど72dBを上回っているじゃないかという話。
- 20年7月10日の中央卸売市場86dBにつき、東京都にメール照会したところ、「測定器に特に異常等はなく航空機騒音によるものと考えております」との回答を得た(7月20日)。
- 21年2月5日の渋谷区立千駄谷小学校の最大騒音レベル85dBにつき、東京都にメール照会したところ、「測定結果については、航空機騒音によるものと考えております」との回答を得た(2月24日)。
渋谷区の猿楽小学校と千駄谷小学校の騒音発生回数を比較したのが次図。
千駄谷小学校(Cルート下)の騒音発生回数は猿楽小学校(Aルート下)の概ね2倍。
月ごとの平均値に集計したのが次図。
渋谷区の猿楽小学校と千駄谷小学校の騒音環境は悪い。特に、千駄谷小学校(Cルート下)の騒音発生回数は猿楽小学校(Aルート下)の概ね2倍で、より悪い。
※騒音発生回数は、増加傾向が見られる。
北風運用時、最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移
北風運用時に羽田空港を出発して荒川に沿って北上するルートの運用時間帯は、午前(7時~11時半)と午後(15~19時、うち3時間)が対象。
20年3月29日以降の最大騒音レベルの最大値(1か所)の推移を次図に示す。
※21年3月31日以前の小松川第二中での計測値は適切ではないことが判明(後述)。
測定場所:
- ~21年3月31日:江戸川区立小松川第二中学校
- 21年4月1日~6月1日:「測定地点の移設準備作業のため欠測」
- 21年6月2日~:江戸川区立小松川図書館
※測定局移設の経緯については、「騒音モニタリング地点の移設」参照。
上図を月ごとの平均値に集計したのが次図。
測定局移設後(小松川図書館)は、移設前(小松川第2中)よりも騒音発生回数が増えている。移設前のデータは、飛行騒音を的確に把握できていなかったことが分かる(騒音発生回数が過小評価されていた)。
※騒音発生回数は、北風運用頻度という季節的要因に影響されるので、前年同月比で見ると増加傾向にあることが分かる。
【参考】小松川第二中(~21年3月31日)
※以下、測定局が江戸川区立小松川第二中学校に設置されていたときの分析。
最大騒音レベルにバラツキがみられる。考えられる理由としては、上昇中の飛行高度のバラツキが大きいこと。
具体的にいえば、測定局が設置されている江戸川区立小松川第二中学校の上空を通過する飛行高度は、国交省の計画では4000~8000ft(約1200~2400m)とかなりの幅がある。
ちなみに、大型機(B777-300)離陸時の直下の最大騒音レベルは、FAQ冊子v.5.1.2_P51によれば、高度4000ft(約1200m)で74dB、6000ft(約1830m)で69dBとなっている(高度8000ftの騒音値は公開されていない)。
※測定場所が首都高7号線に隣接している問題については、「測定場所に隣接している首都高7号線の影響」参照。
※(追記21年4月7日)都が4月1日に公表した資料には「江戸川区立小松川第二中学校については、測定地点の移設準備作業のため欠測」と記されていた。都は、測定地点の選定が不適切であったことを認めたのだろう。詳しくは、「【追記】東京都、測定地点の選定が不適切であったことを認めた!?」参照。
小松川図書館(21年6月2日~)
※以下、測定局が江戸川区立小松川図書館に移設された21年6月2日以降の分析。
測定局移設後は、移設前よりも騒音発生回数が増えている(次図)。移設前のデータは、飛行騒音を的確に把握できていなかったことが分かる。
23年3月21日、過去最大の135回を記録。
【参考1】「北・南風運用」と「南・北風運用」の表記の違い
※追記21年5月17日
21年4月25日の運用表記が従来の「北・南風時」ではなく、「南・北風時」となっていた(次図)。南北が入れ替わったのは初めてだった。
単なる誤記なのか、都環境局にメール照会したところ5月17日、環境改善部大気保全課から以下の回答を得た。ようするに誤記ではないということ。
東京国際空港(羽田空港)の新飛行経路の飛行に伴う騒音モニタリングの結果の「運用」欄について、「北・南風運用」と「南・北風運用」の違いは次のとおりです。
北・南風運用
- 7時から11時半まで新飛行経路の北風運用を行い、15時から19時(うち3時間程度)まで新飛行経路の南風運用を行った場合。
南・北風運用
- 15時から新飛行経路の南風運用を行っていたが、19時までの間に北風運用に変更した場合。(7時から11時半までは、新飛行経路の北風運用だった場合と、以前までの飛行経路による南風運用だった場合があります。)
【参考2】羽田新ルート南風時運用でなくても「南風時」記載
都環境局が毎日公表している騒音データのうち、22年3月26日の運用欄が「南風時」となっているのに騒音データが空白になっていた(次図)。
気象庁の過去データによれば、当日の羽田新ルート運用時間帯は概ね北北東の風であった(南風ではなかった)。また、国交省が運用している「羽田空港飛行コース」によれば、当日は羽田新ルートの運用は実施されていなかった。
そこで「お問合せフォーム」を使って、東京都環境局 環境改善部 大気保全課に「南風時」と記載した理由につき照会したところ、次の回答メールが送られてきた(22年4月1日)。
令和4年3月26日(土曜日)は新飛行経路の運用がなく、従来の飛行経路で終日南風時運用を行っていたため、便宜上、これまでどおり「南風時」と記載しております。
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