江戸川、江東両区内の市民団体が10月2日、羽田新ルートの荒川沿いルートにつき、政府交渉を実施。
荒川沿い北上ルートがズレている問題を検証してみた。
北風時の荒川沿いルート、国の説明と違う(東京民報)
江戸川、江東両区内の市民団体が10月2日、羽田新ルートの荒川沿いルートにつき、政府交渉を実施。騒音を考慮して荒川に沿って飛行するとの国の説明と違い、荒川から逸脱しているという。
国の説明、納得できない
羽田空港荒川新ルートで政府交渉羽田空港で3月29日から始まった北風時の荒川沿い新飛行ルートの騒音や安全問題をめぐって、江戸川、江東両区内の市民団体が2日、政府交渉を行いました。
市民団体の代表なと住民約20人が参加。山添拓共産党参院議員のほか、日本航空の元パイロット・山口宏弥氏も同席しました。
会場では、国側(国土交通省)担当者が住民側の質問や要望項目に沿って説明しました。参加者から「納得できない」と議論になったのは▽荒川ルートの国の設定理由に対する疑義▽騒音を考慮して荒川に沿って飛行するとの国の説明と違い、荒川から逸脱している問題――などです。(以下略)(東京民報 10月11日号)
検証結果:江戸川区の陸域にまでズレ込んでいる
羽田新ルートでは、北風時には羽田空港を離陸した航空機は荒川沿いを北上することになっている。
国交省がこれまで説明してきた資料には、シミュレーョンによる想定として、荒川に沿って飛行するルートがしっかりと表現されている(次図)。
上記の飛行経路はシミュレーョンにより想定される航空機の運行経路を示したものです。
FAQ冊子(v6.2)P121より
では、実際にはどうなのか?
国交省が運用しているサイト「羽田空港飛行コース」に公開されている「航跡図」で確認してみよう。
北風時の運用が実施された10月15日の17~18時の航跡は次図のとおり。荒川の河口から北上する際に、江戸川区の陸域にまでズレ込んでいることが確認できる。
これでは、「国交省がこれまで説明してきたことと話が違う」と非難されてもやむ得ないのではないか。
羽田空港飛行コース「航跡図」10月15日17~18時に追記
なぜ江戸川区議会では羽田新ルート問題への関心が低いのか?
北風時の羽田新ルートの運用時間帯は、7時~11時半・15時~19時(15時~19時については、この時間帯のうち実質3時間程度)。北風時の運用は年間運用の約6割と想定されている。つまり、南風時に都心を通過して羽田に向かう着陸ルートよりも運用される時間がはるかに長いのである。
じつは、江戸川区では羽田新ルートが導入される以前から、南風で悪天候等により視界が悪く、通常のルートが使用できない時に限り、安全を確保するため、誘導の電波に沿って江戸川区上空を通過して着陸するルートが運用されている(次図)。
航空機騒音|江戸川区
その悪天時に江戸川区上空を飛行する日数データを可視化したのが次図。悪天候は夏場に多いことが確認できる。
さらに、悪天時に江戸川区上空を飛行する機数データを可視化したのが次図。3か年平均で最も多い7月には900機を超えている(次図)。
(同上)
このように、江戸川区民にとって羽田新ルートは、泣きっ面に蜂状態なのである。
ところが、江戸川区議会の定例会一般質問ではこれまで、羽田新ルート問題ほどんど取り上げられてこなかった(次表)。
「羽田新ルート|20年第3回定例会(都・区議会まとめ)」より
なぜ、江戸川区議会では、羽田新ルート問題への関心が低いのか?
一つは、区長を6期も務めた多田正見氏から禅譲された役人上がりの斉藤猛区長には、都や国と一戦交えるような事案に立ち向かう根性もなければインセンティブもないこと。
また、多くの区議のマインドも区長と五十歩百歩なことは、区議会のパワーバランスを見れば明らかだろう(次図)。
そして、江戸川区議会で羽田新ルート問題への関心が低い最大の要因は、江戸川区民の政治への無関心だと思う。
20年7月の都知事選挙の選投票率50.70%は23区内ワースト3(2位足立区49.58%、1位港区49.32%)。23区平均は54.91%。