国交省は2020年7月21日、「羽田空港の新飛行経路の定期運用報告」を公表した。
本記事は、同報告で公表される 運用実績・騒音・安全対策等のデータを、月次で追跡・可視化する定点観測 である。 国交省の公開データ更新にあわせ、数値と図表を差し替える形で継続的に更新していく。
※初投稿:2020年7月22日(更新:2026年3月18日:NEW)
定期運用報告の公表項目・頻度
国交省は「 羽田空港の新飛行経路の定期運用報告」において、 新ルートの運用状況を以下の項目について定期的に公表するとしている。
2020年3月29日より運用されている羽田空港の新飛行経路について、 運航便数や騒音・部品欠落等の情報を定期的に公表いたします。
(略)
※各騒音測定局の騒音測定結果・部品欠落件数及び欠落部品内容については、 とりまとまり次第公表いたします。
定期運用報告における公表項目と公表頻度は、次表のとおり整理されている。

※2021年7月20日公表分から、「その他」の項目が追加された。
【補足:騒音測定データの速報化】
「各騒音測定局の騒音測定結果」については、1か月ごとに速報値(一部未精査であるため、参考値)が公表されることになった。

「 新飛行経路下における騒音測定結果(7月分)の速報値」より
騒音対策
国交省は複数の測定局で騒音を常時計測しており、 本ブログではその公開データを基に可視化・検証を行っている。
安全対策
国交省の定期運用報告では、「安全対策」として 落下物(部品欠落)と立入検査に関するデータが公表されている。
まず、落下物事案について整理する。
「部品欠落件数及び欠落部品内容(夏ダイヤ(2020年4月1日~9月30日分))」によれば、新飛行経路における落下物事案と確認されたものは0件とされている。
2.羽田空港の新飛行経路における落下物の発生件数
3.部品欠落報告制度の拡充と報告件数
- 羽田空港の新飛行経路の運用開始以降(2020.3.29~11.30)において、新飛行経路における落下物事案と確認されたものは0件。
- 落下物には至らないものの、部品欠落についても情報収集を強化し、落下物の未然防止に活かすため、2017年11月、国際線が多く就航する空港について、外国航空会社も含めた全ての航空会社から航空機の部品欠落情報が報告されるよう、報告制度を拡充。本制度により2020.4.1~9.30に報告された部品欠落件数は562件。
※NEW:26年3月17日公表データ(25年10月~11月分)を反映

数値を追うと、件数の多くが10g未満に集中している。 10g以上50g未満まで含めても、分布の中心はこの範囲に収まる。
100gを超える欠落は各期で確認されるものの、 発生は散発的で、件数の並びに大きな変化は見られない。「件数は多いが、重量は軽い」。 この関係は、年度が変わっても大きくは崩れていない。
次に、立入検査の実施状況を見る。
ランプインスペクション実施状況
- 昨年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響はあるものの、水際対策の緩和等により徐々に復便がなされており、今年度は実施件数が増加しております。
(夏ダイヤ(2022年4月1日~10月31日分))
※2025年8月13日公表データ(2024年度分)を反映

2020〜21年度は、新型コロナウイルスの影響で 実施件数・対象国数・航空会社数ともに大きく減少している。その後、復便が進んだ22年度以降は、 検査件数が段階的に増加し、 24年度には94件まで戻っている。
立入検査の増加は、 特定事案への直接的な対応と断定できるものではないが、 運航規模の回復に伴い、検査対象そのものが増えた と読む余地はある。
運用実績
国交省は「羽田空港の新飛行経路運用状況」として、 風向別・滑走路別に 運用時間と機数を公表している(次表)。

南風時に使用されるルートの位置関係を示す。

(羽田新ルート概念図 ※破線は「悪天時」ルート)
以下では、この公表データを基に 整理する。
※NEW:2026年3月17日公表データ(2025年11月~12月分)を反映
南風時(都心低空飛行ルートと川崎ルート)
南風時のA/C滑走路着陸ルート・B滑走路離陸ルートの1日あたりの「通過機数」の推移を次図に示す。

南風時のA/C滑走路着陸ルート・B滑走路離陸ルートの1時間当たりの「通過頻度」の推移を次図に示す。

北風時(荒川沿い北上ルート)
北風時のC滑走路離陸ルートの1日あたりの「通過機数」の推移を次図に示す。

北風時のC滑走路離陸ルートの1日あたりの「通過機数」の1時間当たりの「通過頻度」の推移を次図に示す。

飛行機数の月次変化(風向・ルート別)
飛行機数を月次で並べ、風向とルート別に重ねたものが次図である。

北風時運用時間(7時~11時半・15時~19時)が南風時運用時間(15時~19時)より長いぶん、荒川北上ルートの便数が多くなる。
江戸川区民は、この荒川北上ルートだけでなく、従来の南風・悪天時の着陸ルートの飛行騒音の影響も受けている。詳しくは、「羽田新ルート|北風時の荒川沿いルート、江戸川区の陸域にまでズレ込んでいる」参照。
滑走路別運用比率
※追記:2025年8月15日
「羽田空港滑走路別運用実績について(2024年度)」として、「到着経路」と「出発経路」の運用比率が公開されていたので、次表に可視化しておいた。
南風運用時の新ルート運用比率の合計は8.7%。つまり2024年度は15~19時の間で1割弱の都心低空飛行があったということだ。
また、北風運用時の新ルート(荒川沿い北上ルート)運用比率は14.9%。江戸川区民にとっては、これに南風・悪天運用時の従来ルート・B滑走路の2.9%を加えると合計で17.8%となる。
川崎ルート(南風・新ルート)運用比率は3.9%

その他
※追記21年1月7日
「その他」として、公開された資料が2つ。
大気環境調査結果
羽田空港大気環境調査(2021年12月13日~12月20日)の結果として、大気汚染物質、臭気とも基準値を満足したとされている。
空港周辺における大気汚染状況調査
- 大気汚染物質について7日間連続測定を行ったところ、すべての物質、地点において調査期間中の全日で環境基準(日平均、1時間値)を満足していた。
空港周辺における臭気状況調査
- 悪臭について臭気指数(臭気濃度)の東京都(大田区)の規制基準との比較を行ったところ、基準値を満足していた。
- また、悪臭成分22物質について悪臭防止法施行規則第二条の規制基準と比較したところ、規制基準値を満足していた。

「令和元年度 羽田空港大気環境調査」P1より
夏場における新飛行経路の運航の実態
夏場の高温時に懸念されていた、降下角がより大きくなることに伴うゴーアラウンドやハードランディング発生の報告はなく、安全上問題なく運航できているとしている。
新飛行経路の運航状況(2020年11月末時点)
- パイロットは計器の高度を確認しながら降下しており、気温が高い夏場には計器の高度より実際の高度が高くなるため、降下角がより大きくなる傾向にあるものの、これに伴う
・着陸のやり直し(ゴーアラウンド)は発生していない。
・ハードランディング発生の報告はない。- また、安全上の支障を及ぼす事態の報告について、新飛行経路を飛行した航空機から降下角の引き上げに起因する事例の報告はない。
パイロットと航空管制官からの意見
- 6月中旬から9月中旬にかけて、新到着経路を実際に飛行したパイロット(本邦7社)及び航空管制官と意見交換を実施し、安全上問題なく運航できていることを確認した。
- なお、出発経路に関しても航空会社から特段の安全上に関する問題の報告は受けていない。

「夏場における新飛行経路の運航の実態について」より
新飛行経路に関する問い合わせ状況
第7回(21年7月20日公表)からの公表項目に追加された。
主な問い合わせ内容
- 騒音・落下物に対する懸念について
- 経路や高度、風向きの判断基準等について
- 資産価値の下落や騒音による健康被害、防音等にかかる補償について
- コロナウイルスの影響により減便となっている状況下での新ルート運用中止の要望について
- 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会の検討状況等について
※NEW:26年3月17日公表データ(25年11月~12月分)を反映

公表データは手入力!?
※追記21年9月18日
「新飛行経路の運用実績・運航便数」のうち、第8回(21年9月14日公表)データには、明らかな間違いが1か所含まれている。「18:16」となるべき時刻が「18-16」と表記されているのである(次図)。
何が言いたいのかと言うと――、「新飛行経路の運用実績・運航便数」は自動的に処理されたデータではなく、一部に手入力データが含まれている可能性があることから、ほかにもデータに誤りがある可能性がゼロではないということ。

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- 羽田新ルート運用実績(年度推移)※国交省「定期運用報告」ベース
国交省が毎月公表している月次データを年度ごとに集計。