猛暑日になると騒音は約10%増加するという。
実際のところはどうなのか。8月の実測データをもとに、「最高気温」と「最大騒音レベル」との相関を調べてみた。
猛暑日になると騒音は約10%増加(Business Journal)
航空評論家の杉江弘氏(元JAL機長)によれば、猛暑日になると騒音は約10%増加するという。気温が上がると空気密度が低下し、航空機のエンジンの出力が低下するのでパイロットはスラストレバーを出してエンジンをふかすからというのである。
羽田新飛行ルート、住民に深刻な騒音被害…国交省が約束反故、危険な進入角度で事故の懸念
(前略)
気温が上がると空気密度も低下し、航空機のエンジンの出力が低下するのでパイロットはスラストレバーを出してエンジンをふかすかたちとなる。
国交省が昨年末公表してきた騒音予測値は標準大気の15℃でのもので、しかもそれらは専門家に委託した科学的なものでなく、全国の空港で採取した音から適当に役人たちが決めたにすぎない。
国交省も、気温が上がり猛暑日になると騒音は約10%増えることを、私が出席したヒアリングで認めている。(以下略)
8月の羽田の猛暑日は6日間(8/27現在)
猛暑日の航空機騒音10%増加現象説については、以前から気になっていた。
気象庁が公開している羽田の気温データを見ると、8月は27日までに猛暑日(=1日の最高気温が35℃以上の日)が6日間出現している。最も高かったのは8月17日の37.2度だ(次図)。
(気象庁の羽田のデータをもとに筆者作成)
「最高気温」と「最大騒音レベル」との相関は…
東京都は羽田新ルート周辺5か所に設置された騒音測定局のデータを平日毎日公表している。
5か所のうち、南風時に都心低空飛行の騒音影響を受ける着陸ルートに係る4か所の測定結果を次図に示す。渋谷区の猿楽小学校▲と千駄谷小学校▲の最大騒音レベルは75dBを超える日がある。
「羽田新ルート|東京都の騒音測定結果を可視化【随時更新】」より
南風時に都心低空飛行の騒音影響を受ける3つの小学校に設置された測定局が記録した最大騒音レベルと、上述の羽田の日最高気温との関係を可視化したのが次図。
横軸が日最高気温、縦軸が最大騒音レベル。猛暑日が出現した6日間のうち、南風時のルート運用があったのは5日間。
35度以上の猛暑日(ピンク囲み部分)で、右肩上がりの傾向が見られるのかと期待していたのだが、そのような傾向は見られなかった。
【結論】気象庁が公表している「最高気温」と東京都が公表している最大騒音レベルからは、「猛暑日になると騒音は約10%増加する」というような関係性を見出すことはできなかった。
「日最高気温」と「日最高騒音レベル」との関係を見るだけでは限界があるのかもしれない。「日最気温」と「大型機1機ごとの最高騒音レベル」との関係を調べたいところだが、残念ながら国交省はそのようなデータを公開していない。
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