不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」

首都圏を中心に、マンション選びのためのお役立ち情報を提供しています


羽田新ルート|高気温時の降下角3.8度を可視化

羽田新ルートが騒音対策のためとして降下角3.45度で運用されることに、世界中のパイロットが大いに懸念している。

特に、気温が高くなる夏場は、降下角が3.8度近くになる可能性が指摘されていた。

夏季の数ヶ月間、外気温は40℃近くまで上昇することから、進入角は3.8度近くにまで達し、ほとんどのパイロットが今まで経験したものとは大きく異なる進入角を経験することになります。

(IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)「羽田に関する新進入方式」20年1月20日)

※詳しくは、「羽田新ルート|降下角3.45度、パイロットらの懸念」参照。


もくじ

羽田の最高気温33度、83機(8月5日)

8月に入って猛暑が続いているなか、南風時に都心を通過して羽田に到着するルートは、8月3日~8日まで6日連続で運用されている(8月8日現在)。

羽田の最高気温が33度に達した8月5日(次図、ピンク色)、羽田新ルートを83機(15~18時)が飛んだ(内訳下表)。

羽田の気温の時刻変動
東京国際空港の過去48時間の天気」を元に筆者作成

 

羽田新ルート運用実績(8月8日)
Flightradar24を元に筆者作成

高気温時の降下角3.8度を可視化

Flightradar24のデータをもとに、A・C滑走路到着ルート(次図)を実際にどの程度の降下角で飛行したのか可視化してみよう。

羽田新ルート概略図
(羽田新ルート概念図 ※破線は「悪天時」ルート)

A滑走路到着ルート(23機)

横軸を滑走路末端までの距離、縦軸を飛行高度として、23機の飛行位置を描いたのが次図。

中野駅上空付近で降下し始めているのだが、3.45度より急角度で降下しているように見えないだろうか。渋谷駅上空あたりから3.45度に入り、大井町駅の手前あたりからより緩やかな3.0度に切り替えた航跡が何機も確認できる。

飛行高度の変化/A滑走路到着ルート23機(8月5日)
※国交省の想定高度(青色数字)は、「FAQ冊子v6.2」に掲載されている新飛行経路図中の数字による。(以下、同じ)

C滑走路到着ルート(60機)

同様に、60機の飛行位置を描いたのが次図。

新宿駅上空の手前あたりから降下し始めているのだが、3.45度より急角度で降下しているように見えないだろうか。品川駅上空の手前から、より緩やかな3.0度に切り替えた航跡が何機も確認できる。

飛行高度の変化/C滑走路到着ルート60機(8月5日)

 

念のため、上図に降下角3.8度のライン(ピンク破線)を追記してみた(次図)。

IFALPA(国際定期航空操縦士協会連合会)が予告してように、降下角が3.8度近くになっていないだろうか。

飛行高度の変化/C滑走路到着ルート60機(8月5日)

高気温時の降下角3.8度問題、政府のスタンス

この高気温時の降下角3.8度問題について、政府はどのように考えているのか。

衆議院「決算行政監視委員会」(4月6日開催)の場で、松原仁 議員(無所属)に問われて、赤羽国交大臣は「基本的には安全」という認識を示している。

夏場というのは、私ちょっと専門家じゃないんであれなんですけど、飛行機の構造上、想定より高度が高くなる。そうした場合に降りてくるときには、やはり2段階の(降下角を)3度に変えるスロット(発着枠)にしてほしい、というようなことがあり、それは基本的には安全なんだけれども。

衆院「決算行政監視委員会」質疑応答」より

また、翌月の5月18日に開催された参議院「決算委員会」の場でも、柳ヶ瀬議員(維新)問われて、赤羽国交大臣はJAL・ANAパイロットらのヒアリング結果を踏まえ「シビア・アクシデントになる可能性は限りなく低い」という認識を示している。

夏場については、これからなんですが、いま先生言われたように、計器の数値より実際の高度が高めになるということなので、3.45度で入っても実際はそれより角度が付くので、最終的には3度で着陸に入る方式、二段階方式でやった方がより安定した進入になるというお話もいただきました。

(略)例えば、仮にトラブルが発生をしても、幾重にも安全装置が用意されていることから、シビア・アクシデントになる可能性は限りなく低いといったようなお話も伺いました。

参院「決算委員会」質疑応答」より

さらに、松原仁 衆議院議員が提出した質問主意書(羽田空港新飛行ルートにおける航空機の降下率)に対して、政府は6月23日、「安全性の問題はない」と答弁している。

高気温時等において3.5度を超える降下角で進入後、途中で降下角を変更して最終的に3度で着陸する進入を許容する等といった対策を講じていること、3.5度の降下角は我が国及び諸外国の複数の空港の進入方式においても採用されていること、並びに当該降下角は好天時のみ使用されることを踏まえ、安全性の問題はないものと考えている。

質問主意書(航空機の降下率)」より

以上のように、高気温時の降下角3.8度に対して、赤羽国交大臣だけでなく、政府としても「安全性の問題はない」としているのである

 

さらにいえば、国交省が7月21日に公表した「新飛行経路 定期運用報告」では、2か月に1回「運用実績」を公表することになっているのだが、同実績には降下角の情報については全く触れられていない(国交省の「定期運用報告」を可視化 ※随時更新)。

 

まだまだ暑い日が続く。降下角3.45度リスクが顕在化しないことを祈るしかないのか……。

あわせて読みたい

2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
Copyright(C)マンション・チラシの定点観測. All rights reserved.