ALPA Japan(日本乗員組合連絡会議)は6月14日、「羽田(東京国際空港)の新しい進入方式」追加運航情報その2を発行した。
20年1月29日に「羽田における新しい進入方式」追加運航情報を発行し、羽田新ルートの運営開始から2か月が経過したので、この間に寄せられた声を中心に追加情報をまとめたという。
今回発表された資料はA4判3枚(次図)。
次の7項目で構成されている。
- 運用時間について
- 必要な管制間隔について
- ILS RWY16L APP における注意点
- ILS RWY16R APP における注意点
- 南西風が卓越するときの注意点
- ILS APP を要求する場合の注意点
- RNAV RWY 16L/R 実施時の GPWS Warning
航空関係者以外には難しい内容ではあるが、気になった内容を一部(上記の朱書項目)、分かりやすく整理しておこう。
悪天時、C滑走路到着ルートは西側にズレる可能性
南風時の悪天時に運用されるC滑走路到着ルートへのILS進入(地上から精密誘導電波を利用する従来方式)により、LORRY(成増駅付近)手前で航路設定するタイミングによっては自動運転で西側にズレることがある。西側へのズレは不可侵区域(No Transgression Zone-NTZ)への侵入となるので(西側にはA滑走路到着ルートが設定されている)、管制から進入やり直しを指示される可能性がある。
ILS RWY16L APP における注意点南風且つ悪天時において実施されるILS RWY16L APPにおいて、LORRY(ILS Final Course への会合ポイント)手前で APP Mode をセットした場合、Auto Pilotは Capture Mode に入った後、右旋回を行うことによってLocalizerコースよりも西側へDeviationするケースがパイロットより報告されています。
この動きはNo Transgression Zone(NTZ)へ侵入することを意味し、場合によっては管制から進入やり直しを指示される可能性があるため、パイロットは操縦席で APP Mode をセットするタイミングについて十分に留意する必要があります 。
つまりこういうこと(次図)。
eAIP(電子航空路誌)に加筆した(着色部分)
南西強風時、新ルートではなく従来ルートでの着陸を
羽田では強い南西風が卓越していて、南西強風時に多くの Go Around(進入やり直し)事例が発生している。気象条件が厳しい時には、RWY16L/R(A/C滑走路到着ルート)を利用するのではなく、より安全な従来のRWY22/23(B/D滑走路)への進入着陸を管制側に要求することも考慮すること。
南西風が卓越するときの注意点
(前略)2020年3月から開始された新しい運用では、強い南西風が卓越している場合でも日本時間15時から19時の間でRWY22/23が利用出来ず、RWY16L/Rの使用を強いられることになります。その結果、以下の状況が重なることに留意しなければいけません。
- ① 3.45度と通常よりも深い降下角(または 1,000ft までに 3度Path へ会合しようとすることによる、2,000-1,000ft 間での不安定なPath変化)
- ② 日中午後時間帯での熱雷発生によって、都心上空は気流が不安定となる
- ③ 強い南西風によって低高度では建築物の影響で気流が不安定 となる
- ④ 空港北側にある運河等によって、着陸前(1,000ft 以下)の気流変化が大きい
新しい運用が開始されたのが春季ということもあって、南西強風時に多くの Go Around(進入やり直し)事例が発生しています。
南西強風時でもRWY22/23の進入着陸は問題無く実施出来ていたという過去の実績から、 羽田空港を熟知した パイロットは、こうした気象条件下においてRWY22/23を使用する方が有利であることを知っています。
従って、RWY16L/R 進入に際して横風制限やその他の気象条件が理由で 安全上の懸念がある場合、RWY22/23の進入着陸を管制側に要求することも考慮してください。
↓ 南西風と着陸ルートの関係
従来方式での進入、大幅な遅延が発生する可能性
何らかの理由でILS進入(従来方式)を実施する必要がある場合、早いタイミングで管制機関に伝えたとしても大幅な遅延が発生する可能性 がある。
ILS APPを要求する場合の注意点
南風好天時の日本時間15時-19時は、原則としてRNAV進入が実施されます。何らかの理由でILS進入を実施する必要がある場合、出来る限り早いタイミングでその理由も附して管制機関(TYO CTRLが望ましい)に伝えてください。(中略)
RNAV16L/R同時進入は適用されますが、RNAV進入とILS進入の同時進入は適用 されないことから、RNAV進入を実施する前後の航空機との間に通常以上の 管制間隔を確保する必要があるなど、他の到着機にも影響が及ぶことに留意してください。
結果として、早いタイミングで管制機関に伝えたとしても大幅な遅延が発生する可能性 があること、遅延時間がどの程度になるかは直ぐには判明しないこと等が予想されます。
夏場の大型機、降下角3度で警報回避
過大な降下率(SINK RATE)を継続した場合、地上接近警報装置(GPWS:ground proximity warning system)により音声警報が発せられる。
高温時で機体重量が重い場合(夏場の大型機)、SINK RATE(降下率)がある一定の閾値を超えると警告が出る。従って、途中で降下角3度にすることでWarning発生を回避することが可能。
RNAV RWY 16L/R 実施時の GPWS Warning
① 「SINK RATE」Warning
RNAV16L/R実施時に、過大な降下率を継続した場合に発せられるGPWS Voice Alert「SINK RATE」が発生する可能性があることが確認されています。
このWarningはRadio Altimeterによる降下率を使用しており、真高度の降下率に等しくなります。
RNAV進入実施中、外気温が高温で機体重量が大きい場合において真高度による降下率がある一定の閾値を超えることによってこのWarningが発生します。(中略)従って、高温時かつ機体重量が重い場合では、Tailored Approachのように1,000ftまでに通常の進入角(3度)へ会合することで、このWarning発生を回避することが可能です。
② 「GLIDE SLOPE」 Warning
(省略)
↓ 1,000ftまでに通常の進入角(3度)へ会合する
ALPA Japan「『羽田新進入方式』追加情報」20年1月29日の「手順 B-2)」より
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