2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、羽田空港の国際線発着回数を増やすため、都心上空を飛行する羽田新ルート計画。
羽田新ルート近くのマンション価格に影響は出ていないのか?
着陸ルートが設定されている11区のうち6区(品川、目黒、港、渋谷、新宿、中野)については、すでに中古タワーマンション相場への影響を調べた。
本日は残りの5区(豊島、練馬、板橋、北、大田)に係る調査結果を紹介しよう。
Google Earthで中古タワマンを選定
まずは、羽田新ルートのおさらい。
南風時(年間4割)15~19時のうち3時間、「A滑走路到着ルート(下図の青線)」は1時間当たり14回(4分17秒ごと)、「C滑走路到着ルート(下図の橙線)」は1時間当たり30回(2分ごと)の頻度で上空から騒音が降り注ぐ。
「騒音影響を受ける区民100万人超」より
羽田新ルート近くのタワーマンションをどのようにして調べるのか?
SUUMOに渋谷区で登録されている「20階以上」の中古マンションにつき「地図表示」機能を使って拾い上げ、グーグルアースで確認していくことにした。たとえば、A滑走路到着ルート高度900m(悪天時)から練馬駅周辺は、グーグルアースでは次のように見える。
(A滑走路到着ルート高度900mから練馬駅周辺)
羽田新ルート近くの中古タワマン配置
5区(豊島、練馬、板橋、北、大田)で、羽田新ルート周辺に位置する中古タワーマンションは少ない。
ルート直下から2km以内に位置する物件を含めても次の8件。ルート直下に比較的近いのは練馬区内にある物件B(370m)と物件C(710m)。あとの6件は1kmを超えている
※【 】内の距離は、羽田新ルート直下から当該物件の中心までの水平距離を示す。
- 板橋区(1件)
物件A【1.7km】(30階建て、155戸、02年7月竣工、駅徒歩1分) - 練馬区(2件)
物件B【370m】(29階建て、257戸、09年2月竣工、駅徒歩8分)
物件C【710m】(35階建て、287戸、01年3月竣工、駅徒歩3分) - 豊島区(3件)
物件D【1.4km】(34階建て、173戸、10年3月竣工、駅徒歩7分)
物件E【1.7km】(38階建て、358戸、04年3月竣工、駅徒歩2分)
物件F【1.9km】(31階建て、411戸、15年2月竣工、駅徒歩5分) - 大田区(2件)
物件G【1.2km】(25階建て、565戸、05年1月竣工、駅徒歩3分)
物件H【1.1km】(24階建て、434戸、02年6月竣工、駅徒歩6分)
4区(豊島、練馬、板橋、北)の物件A~Fの配置を次図に示す。
特に、練馬区内の物件B・Cに近いA滑走路到着ルートについて、好天時の飛行高度は1,350mと高いが、悪天時には900mと低いためルート直下の騒音レベルが70dBと高いことに注意を要する。
次に、大田区内の物件G(1.2km)と物件H(1.1km)の配置を次図に示す。
飛行高度150mのルート直下での大型航空機による騒音レベルは82dB。物件G・Hはルート直下から1kmあまり離れているとはいえ、騒音レベルは68dB程度。
中古タワマン相場の推計方法
マンション売買・賃貸情報サイト「マンションマーケット」には、中古マンションの価格相場として、物件ごとに最大過去6年間の月別m2単価・坪単価が掲載されている(次図)。
そこで、上記8件のうち、比較的羽田新ルートに近いタワーマンション2件(練馬区B・C物件)につき、m2単価の推移を可視化してみることとした。
羽田新ルートに近い中古タワマン相場の推移
比較的羽田新ルートに近いタワーマンション2件(練馬区B・C物件)と練馬区平均のm2単価の推移を次図に示す。
練馬区平均の単価が上昇し続けているに対して、物件B(370m)・物件C(710m)とも上昇している。
※区平均は中古タワマンに限らない、すべての中古マンションの平均(以下、同じ)。
タワーマンション2件の価格変動状況を比較しやすいように、13年5月の単価を100とした場合の変化を可視化したのが次図。
物件B(370m)・物件C(710m)とも、練馬区平均と同様上昇していることが確認できる。
練馬区の2物件は、羽田新ルートにそれほど近くないこともあり、価格が羽田新ルートの影響を受けていないのではないか。
【データ更新】20年8月25日
20年7月までのデータを反映したグラフを次図に示す。
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