某メディアから羽田新ルートに関して、エリア別の騒音影響やマンション市場への影響などの問合せを頂戴したので、過去記事をもとにザットまとめておいた。
エリア別の騒音影響について
騒音影響を受ける区民100万人超
筆者の試算によれば、東京23区の住民約930万人のうち、騒音の影響を受ける区民は100万人を超える(2015年国勢調査ベース)。
影響を受ける人口の割合が大きいのは渋谷区54%(12万人)と中野区53%(18万人)。次いで、品川区31%(12万人)、港区30%(7万人)、板橋区30%(17万人)、練馬区30%(21万人)(次図)。
※詳しくは、「羽田新ルート|騒音影響を受ける区民100万人超」参照。
羽田新ルート周辺の騒音影響マップ
大型機(777-300)が飛行した場合の、羽田新ルート周辺の騒音コンター(等騒音線図)を以下に示す。
新宿駅・渋谷駅周辺
新宿駅の上空900mを大型機が通過(C滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約70dB。
渋谷駅の上空750mを大型機が通過(A滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約72dB。
広尾駅(港区)・目黒駅(品川区)周辺
広尾駅(港区)の上空600mを大型機が通過(C滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約72dB。
目黒駅(品川区)の上空450mを大型機が通過(A滑走路到着ルート)する際に、地上での騒音レベルは約76dB。
※詳しくは、「「新飛行ルート問題」飛行ルート周辺の騒音マップを描いてみた」参照。
※騒音レベルを試算した方法については、「「新飛行ルート問題」騒音の影響を地図化してみた」参照。
マンション市場に影響を与える可能性
航空機からのパネル落下報道があっても、いまのところ羽田新ルート周辺のマンション価格に影響を及ぼすには至っていないようだ。マスコミの報道不足と国交省の”寝た子を起こすな作戦”が功を奏して羽田新ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていないからであろう。
ネット掲示板では、羽田新ルートが上空を通過するマンションについて、「気になる」といった趣旨の書き込みはある一方で、「そんなに気にする必要はない」といった楽観的な書き込みも見られる(業者の投稿か?)。
人は、無意識のうちに信じたい情報ばかりを集め、信じたくない情報を無視する傾向がある(これを「確証バイアス」という)。
羽田新ルートの事故・騒音等の問題が世間の共通認識になっていけば、それまであまり気に留めていなかった「羽田新ルート・リスク」への懸念が一気に広まり、マンション価格に影響を及ぼす可能性は十分考えられる。
具体的に考えられるのは2つのケース。
ひとつは、2020年に向けて羽田新飛行ルートの運用が始まり、実際に住民らが巨大な旅客機が頭上を飛ぶ状況を現認し始めたときだ。
もうひとつは、羽田新ルートで落下物が発生したとき。事故に至らなくても、「羽田新ルート直下は落下物による事故に遭遇する可能性があるので危険だ」という風評によって、マンション価格が下落することが考えられる。
※詳しくは、「航空機からのパネル落下報道は、羽田新飛行ルート周辺の不動産価値に影響するか」参照。
影響を受ける可能性のある地域
国交省が公開している「新飛行経路案」(18年11月5日現在)を町丁目レベルの行政境界マップに重ねることで、羽田新ルートが通過する地域名を確認することができる。
某首相の私邸がある渋谷区富ケ谷1丁目の上空には、A滑走路到着ルートが設定されている。また、港区の高級住宅地の上空にはC滑走路到着ルート設定されている。
↓ 港区の例
※詳しくは、「羽田新ルートが通過する地域名(23区の町丁目)」参照。
影響は出ているのか?
新築マンションへの影響
総戸数100戸以上で、かつ必要な価格表が入手できた大規模新築マンション(2件)の発売単価の推移を調べたところ、2件とも下落するどころか、むしろ上昇傾向にあった。
↓ 品川区の「新築マンションB」の例
現時点で新築マンション発売価格への影響が見られないのは、不動産会社のダンマリだけでなく、羽田新ルート問題を世間に知らしめたくない国(国交省)と忖度メディアの不作為の成果なのであろう。
※詳しくは、「羽田新ルート|新築マンション価格に影響は出ているのか?」参照。
中古マンションへの影響
「坪単価」の分布を表示することができる「LIFULL HOME’Sプライスマップ」に羽田新ルートを重ねてみたところ、羽田新ルート直下の中古マンション坪単価が特に安くなっているという状況は見られなかった(次図)。
現状ではまだ、羽田新ルート・リスクは、中古マンション価格に織り込まれていないのであろう。
※詳しくは、「羽田新ルート|新築マンション価格に影響は出ているのか?」参照。