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「タワマン災害時の対策」質問主意書を読む

第198回国会(19年1月28日~6月26日)の衆議院の質問主意書74件(3月5日現在)のなかに、45番目として「タワーマンションの災害時の対策に関する質問主意書」が埋もれている。

柿沢未途 衆議院議員(民進→希望→無所属)が2月14日に提出した質問主意書に対する答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成し、各回答のあとに筆者のコメントを朱書きしておいた。
※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

柿沢未途 衆議院議員
柿沢未途 衆議院議員
(4期、民進→希望→無所属、東大法卒、48歳)

東京都内のベイエリアをはじめ、大都市圏を中心に、高さ60メートル超の建築基準法上の超高層建築物に該当する集合住宅、いわゆるタワーマンションが急速に増えている。

高さ60メートル超となるとおおむねフロアー数では20階以上となるが、これらのタワーマンションにおいて、地震や風水害といった災害時に必要とされる対策は、一般的な戸建住宅の住民が取るべき備えとは大きく異なるものになると考えられる。
 そこで以下、質問する。

1. 全国タワマン件数・世帯数?⇒把握していない

政府は、全国タワマンの件数・世帯数は把握していないという。

【質問1】
全国において上記のようなタワーマンションに該当する集合住宅が何物件あり、本年2月1日現在で、何世帯が居住しているか、政府の承知するところを示されたい。

【回答1】
お尋ねについて把握していないため、お答えすることは困難である。
なお、国土交通省においては、平成29年12月末日までに完成した分譲マンション(地上階数3以上である共同住宅のうち、分譲住宅であって、その構造が鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造であるものをいう。)の総戸数は約644万千戸であると推計している。

※全国大のタワマン統計データではないが、不動産経済研究所が18年4月24日に発表した「超高層マンション市場動向 2018」によれば、首都圏の超高層マンション(20階建て以上)の累計戸数は25万戸を突破する見通しとされている(次図)。

超高層マンション完成・計画戸数(首都圏)

詳しくは、「超高層マンション市場動向|19・20年は竣工ラッシュ(23区)」参照。

2.「在宅避難」の困難?⇒階段昇降必要、トイレ機能停止

政府は、エレベータ停止に伴う階段の昇降必要、断水によるトイレ機能停止を掲げている。

【質問2】
これらのタワーマンションの立地する大都市圏においては、大規模自然災害の発生時においても住民の避難者全てを収容できるだけの避難所のキャパシティはなく、タワーマンションの住民については、災害時においても自宅での生活を継続してもらう、いわゆる在宅避難を基本方針とする自治体が多い

 

一方、東京都の地域防災計画ではライフラインの復旧にあたり、電力は7日間、上下水道は30日間の期間内での復旧を目指している。停電や断水が続く中で、タワーマンションにおける在宅避難の住民生活の継続には主にどのような困難があると考えられるか

【回答2】
一般論として、マンションにおいて御指摘の「在宅避難」を行う際には、停電によりエレベーターの機能が停止した場合に階段の昇降を行う必要があること、断水により水洗便所の機能が停止した場合に排せつ物の処理が滞ることなどの困難が生じ得るものと考えられる。

※大規模災害時の高層マンション問題については、ちょっと古くなるが『高層難民』新潮新書(07/3/31)に詳しい。

3. 非常用発電機の燃料切れ⇒2に同じ

政府は、非常用発電機の燃料切れによる在宅避難に伴う支障は、回答2の通りとしている。

【質問3】
タワーマンションには非常用発電機の設置が義務づけられているが、これは火災時のスプリンクラー等の消火設備や非常灯等の照明や避難のための非常用エレベーターの運転等のために設置されるものであり、大規模災害時の一般用のエレベーターの運転継続のために設置されるものではない。

 

加えて、非常用発電機の燃料の備蓄量は消防法の規制により制限されており、数時間の運転で燃料切れとなり止まってしまう。

ほとんどのタワーマンションは現状このような状態にあると考えられるが、それで大規模災害時に住民が在宅避難を継続する上で支障はないと政府は考えているのか

【回答3】
御指摘の「在宅避難を継続する上で支障はない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として、御指摘の「在宅避難」に伴う「支障」については、二について(筆者注:回答2)でお答えしたとおりである。

4. 長期停電リスクに対応する改善措置?⇒容積率緩和

政府は、長期停電のリスクに対応する改善措置として、容積率の緩和措置を掲げている。

【質問4】
東京都地域防災計画の通りに大規模災害時に停電復旧に7日間を要した場合を想定すると、タワーマンションで何日間もエレベーターが動かない状態での在宅避難を強いられる事になる。

エレベーターが止まるだけでなく、停電によりポンプが動かず水も出ない、トイレも流れない事態に陥るタワーマンションが多いと考えられる。

このような事態に陥るリスクを放置したまま大規模災害時の在宅避難を求めているのは、タワーマンションの住民にとって過酷な要求であり、非現実的と考える。

タワーマンションにおける長期停電のリスクに対応する何らかの改善措置が必要であると考えるが、政府の見解如何。

【回答4】
御指摘の「在宅避難」を行う際の「長期停電のリスク」への対応については重要であると考えており、防災・減災に資する施設の容積率の緩和を行う観点から、平成24年に建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)を改正し、自家発電設備を設ける部分等の床面積は、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないこととしたところである。

※長期停電リスクに対応する改善措置を問われて、容積率緩和を持ち出したのは、やや違和感がある。ほかに効果的な対策が講じられていないことの裏返しではないのか。

ちなみに、2012年(平成24年)9月20日に施行された改正建築基準法施行令によって、以下が容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しないこととなった。

  • 専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分
  • 蓄電池(床に据え付けるものに限る。)を設ける部分
  • 自家発電設備を設ける部分
  • 貯水槽を設ける部分

5. 小型タンカーからの燃料補給⇒ガイドライン提示

政府は、船舶給油用の小型タンカーからマンションに燃料補給を行なえる仕組みについては、「震災時等における・・・ガイドライン」を示しているという。

【質問5】
平成27年1月17日、東京都港区の芝浦アイランド地区において、非常用発電機に使えるA重油等を貨物船等に給油する小型の燃料タンカーを接岸させ、水辺に面したタワーマンション・ワールドシティタワーズ(42階建て、2090世帯)の非常用発電機に90キロリットル(7日間分に相当)の燃料をタンカーからホースで直接供給する訓練が行なわれた。

 

訓練の成果を受けて、大規模災害による長期停電時に備えて、タワーマンションをはじめとする集合住宅の非常用発電機に、船舶給油用の小型タンカーからの燃料補給を行なえる仕組みをつくるべきではないかと考えるが、政府の見解如何。

【回答5】
御指摘の「訓練」の詳細について網羅的に把握しているものではないが、御指摘の「船舶給油用の小型タンカーからの燃料補給」については、既に、震災時等に船舶から陸上の施設等に燃料を供給する場合の留意事項を盛り込んだ「震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きに係るガイドライン」(平成25年10月3日付け消防災第364号・消防危第171号消防庁国民保護・防災部防災課長及び消防庁予防課危険物保安室長連名通知別紙一)を示しているところである。

※東日本大震災で、給油取扱所等の危険物施設が被災したことや、被災地への交通手段が寸断されたことなどにより、ドラム缶や地下タンクから手動ポンプ等を用いた給油・注油や、危険物施設以外の場所での一時的な危険物の貯蔵など平常とは異なる対応が必要になった状況を踏まえ、同ガイドライン(PDF:1.9MB)が作成された。

6. 非常用発電機の点検状況の実施率⇒把握していない

政府は、屋内消火栓設備等のために附置される自家発電設備(消防法)と非常用の照明装置のために設けられる自家用発電装置(建基法)に係る点検実施率は把握していないという。

【質問6】
タワーマンションをはじめとする集合住宅の非常用発電機については、消防法の規定により、1年に1度、正常に作動するかどうか、点検を行なわなければならないものとされている。

 

ところが消防法上の対象となる建築物の非常用発電機について適切な点検が実施されていない事例が多く指摘されており、実際に東日本大震災では非常用発電機の7割までが点検・整備の不足により正常に稼働しなかったとされている。

 

とりわけ多くの住民が生活するタワーマンションで大規模災害時に非常用発電機が正常に作動しない事態となれば深刻である。タワーマンションをはじめとする集合住宅における非常用発電機の点検状況について実施率を示されたい。

【回答6】
御指摘の「非常用発電機」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第1(5)項ロに規定する共同住宅において屋内消火栓設備等のために附置される自家発電設備(消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号、第19条第5項第20号、第24条の2の3第1項第7号イ及びハ並びに第28条の3第4項第10号に規定する自家発電設備をいう。以下同じ。)及び建築基準法(昭和25年法律第201号)別表第1(い)欄(2)項に規定する共同住宅において非常用の照明装置のために設けられる自家用発電装置(非常用の照明装置の構造方法を定める件(昭和45年建設省告示第1830号)第3第3号に規定する自家用発電装置をいう。以下同じ。)については、御指摘の「点検」の「実施率」を把握していない

※非常用発電機(エレベーターや給水ポンプの供給能力までは義務づけられていない)が、イザとなったときにキチンと機能するように点検されているのかを問うたのに、屋内消火栓設備等のために附置される自家発電設備(消防法)と非常用の照明装置のために設けられる自家用発電装置(建基法)に係る点検実施率は把握していないという回答。論点がズレている。

7. 非常用発電機の備蓄燃料、取り扱い状況⇒確認していない

自家発電設備(消防法、建基法)の点検結果報告の内容について、政府は確認していないという。

【質問7】
石油連盟では「災害などに備えて燃料を備蓄される皆様へ」として、非常用発電機の燃料備蓄について、燃料の劣化等による不具合を避けるため、軽油については6ヵ月、A重油については3ヵ月を目途として、備蓄燃料を使用するかまたは入れ替える事を推奨している。

しかしタワーマンションをはじめとする集合住宅において、非常用発電機のための備蓄燃料を推奨の通りに使用したり入れ替えたりしているのは、コストの面から考えても、極めて少数ではないかと思われる。

そうなると大規模災害時に非常用発電機を運転しようとした時に不具合が生じるリスクが否定できないが、このような非常用発電機の備蓄燃料について、タワーマンションをはじめとする集合住宅における取り扱い状況を政府として確認しているか

確認していないとすれば、今後は確認する必要があるのではないかと考えるが見解如何。

【回答7】
御指摘の「非常用発電機」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、自家発電設備については、消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3の規定に基づき、共同住宅の関係者は、定期に、その延べ面積等に応じて、消防設備士免状の交付を受けている者等に点検させ、又は自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告することとされており、また、一定の自家用発電装置については、建築基準法第12条第3項の規定に基づき、その所有者は、定期に、一級建築士等に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告することとされているところであり、政府として、これらの事項について確認は行っていないところである。

※「確認していないとすれば、今後は確認する必要があるのではないか」と問われているのに、「政府として、これらの事項について確認は行っていないところである」と答弁。言外に「今後も確認するつもりはない」という意思がにじみ出ていないか。

それにしても、政府の答弁は回答5・6・7、いずれもワン・センテンスが長すぎて読みにくい。読む気を削ごうというしているような悪意を感じるのは気のせいか……。

雑感(非常用電源や備蓄燃料、狭い範囲に絞った質問…)

なぜ、柿沢衆議院議員がこの時期にタワマンの災害対策を取り上げたのか。それも非常用電源や備蓄燃料という、極めて狭い範囲に絞った質問である。
東日本大震災が2011年3月11日発生して8年が経ったタイミングを意識しての質問なのか……。

大規模災害時にいかにしてマンション生活を維持するかについては、防災用の電源設備というハードだけでなく、住民同士の共助など、ソフト対策も欠かせない。

もっといえば、同議員が提起している問題はタワマンだけでなく、マンション全般に共通する部分も多い。高々2千文字で論じ切れるものではないだろう

たとえば、神戸市が昨年、有識者を集め「持続可能なタワーマンションのあり方」を検討したような、しっかりと体制を組んでの検討が必要なのではないか。
⇒「持続可能なタワーマンションのあり方、神戸市有識者研究会スタート」参照。

 

質問書(約2千文字)と答弁書(約1千600文字)は別々の文書なので、上記のように一問一答形式に再構成しないと、内容を的確に把握することはできない。

せっかくの質問主意書・答弁書もマスメディアが取り上げなければ、記録文書の肥しとなるだけだ。弱小なこのブログメディアによる情報が少しでもお役に立てば幸甚。

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