国交省は毎翌日(土日祝日を除く)「羽田空港飛行コースホームページ」で「航跡動画」「航跡図」「過去の運用状況」を公開している(次図)。
(「航跡動画」の例)
このサイトで公開されているデータは、「航空機騒音実態把握システム(Ntrack)」で運用されている。
同システム係る問題点については、このブログで取り上げてきた。
同システムがたびたび不具合を起こしていること(「航空機騒音実態把握システム(Ntrack)」に不都合な真実!? )、システムの一式調達を落札したのが日本無線株式会社としたのは誤報であったこと(実際には日本電気が落札していた)、トルコ航空199便に係るデータ操作疑惑が浮上したことなど。
同システム構築の元となった報告書(三菱総研が17年度に3,888万円、落札率96.31%で受託)については、開示請求で入手した資料が全面のり弁状態であることをブログで紹介した。
今回、開示請求によって、同システムの調達の元となった技術提案書(PDF:3.9MB)を入手したのでひも解いてみた。
情報開示請求して4か月で技術提案書ゲット
国交省に開示請求したのが8月17日。行政文書開示決定通知書の日付が12月11日で、実際にCD-Rで文書を受領(開示文書のデータ量が12MBを超えていたのでオンライン交付は不可)したのは12月22日だから、開示請求から文書を入手するまで4か月かかっている。
本来は開示請求があった日から30日以内(事務処理上の困難その他正当な理由があるときはさらに30日延長可)に開示しなければならないことになっている(「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」第10条)。
ところが今回は、60日(=30日+30日)を超える特別な延長処理が行われた(第11条 開示決定等の期限の特例)。延長理由は「当該開示請求に係る行政文書が著しく大量であるため、開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある」とされている(次図)。
「開示決定等の期限の特例規定の適用について(通知)」より
このようなことから、「総合評価採点表」「予定価格調書」「製造請負契約書」
は2か月で入手できたが、技術提案書の入手には4か月を要したのである。
技術提案書をひも解く
目次構成
技術提案書は288枚で、次のように、3章構成になっている。
- 1. 機能・性能
- 2. 技術能力等
- 3. アフターサービス
各項の内容は、次図に示すように、「項目タイトル」「項目サブタイトル」「要求事項」「ガイドライン」「ご提案内容」という様式で整理されている。
技術提案書P6より
目次の細目は、次のおとりだ。
※一部の項目は、墨消し(■■■)されている。
- 1. 機能・性能
- 1.1 機能要件
- 1.1.1 航跡管理機
- 1.1.2 苦情対応管理機能
- 1.1.3 騒音判定管理機能
- 1.1.4 管理機能
- 1.1.5 その他機能
- 1.2 画面に関する事項
- 1.2.1 全般
- 1.2.2 画面一覧
- 1.2.3 画面レイアウト
- 1.3 帳票に関する事項
- 1.4 ユーザビリティ及びアクセシビリティに関する事項
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- 1.5 システム方式に関する事項
- 1.5.1 全般
- 1.6 規模に関する要件
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- 1.7 性能に関する事項
- 1.7.1 全般
- 1.8 信頼性等要件
- 1.8.1 可用性
- 1.8.2 完全性
- 1.8.3 機密性
- 1.9 拡張性等要件
- 1.9.1 全般
- 1.10 上位互換性に関する事項
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- 1.11 中立性に関する事項
- 1.11.1 全般
- 1.12 継続性に関する事項
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- 1.13 情報セキュリティに関する事項
- 1.13.1 基本要件
- 1.13.2 権限要件
- 1.13.3 情報セキュリティ対策
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- 1.14 稼働環境に関する事項
- 1.14.1 全般
- 2. 技術能力等
- 2.1 プロジェクト管理
- 2.1.1 全般
- 2.2 アプリケーションプログラムの設計・開発
- 2.2.1 設計書の作成(システムの基本及び詳細設計)
- 2.2.2 プログラム製造
- 2.3 ハードウェア環境の設計・納入・据付
- 2.3.1 設計
- 2.3.2 納入・据え付
- 2.4 試験及び移行対応
- 2. 4.1 試験に関する事項
- 2.4.2 移行に関する事項
- 2.5 その他、本システムの稼働に必要な作業
- 2.5.1 全般
- 2.6 作業条件
- 2.6.1 作業の前提条件
- 2.6.2 作業場所・環境等
- 2.7 作業の実施体制・方法に関する事項
- 2.7.1 役割・責任
- 2.7.2 作業に求める資格等の要件
- 3. アフターサービス
- 3.1 教育に関する事項
- 3.1.1 全般
- 3.2 保守に関する事項
- 3.2.1 基本方針
- 3.3 ワークライフバランスの促進
- 3.3.1 女性活躍推進法に基づく認定
- 3.3.2 次世代法に基づく認定
- 3.3.3 若者雇用促進法に基づく認定
肝心の中身は全面黒塗り
結論を先に言ってしまうと、技術提案書は、ほぼ全面がのり弁状態(次図)。
「Ⅰ. はじめに」さえ、全面黒塗り(次図)。
各ページは、肝心の「ご提案内容」が全面黒塗り(次図)。
唯一、「ご提案内容」が黒塗りされていなかったのは、「3.3.2 次世代法に基づく認定」のページ(次図)。これは既知情報(日本電気が「くるみん認定企業」であること)なので、秘密にする必要がなかったのであろう。
でも、その前のページにある「3.3.1 女性活躍推進法に基づく認定」で日本電気が「えるぼし認定企業」であることは既知情報なのに黒塗りになっている(次図)。なぜ黒塗りにする必要があるのか……。
不開示とした部分とその理由
墨消し部分に関して、国交省は「行政文書開示決定通知書」のなかで、「不開示とした部分とその理由」として、法人ノウハウが含まれているなど、次のように記している。
雑感(気になる機能)
技術提案書には「1.1.4 管理機能」のうち「1.1.4.4 各種設定機能」として、7つの機能が記載されている。そのうち、次の2点がとっても気になる。
航跡表示期間設定機能
1点目は、「1.1.4.4.1 一般向け騒音値・航跡表示期間設定機能」について。
国交省は「羽田空港飛行コースホームページ」で「航跡動画」や「航跡図」を1か月間しか公開していない。たとえば11月1日のデータは12月1日になると閲覧できなくなるのだ。
「航跡表示期間設定機能」を「1か月」ではなく、せめて「3か月」に設定してほしいものだ。
スクリーニング対象管理機能
2点目は、「1.1.4.4.7 スクリーニング対象管理機能」について(次図)。
ガイドライン
スクリーニング対象とされた航空機についての取扱について、その具体的な内容、実現方法、有 効性について評価する。
9月22日のトルコ航空199便に係るデータ操作疑惑に限らず、「スクリーニング対象管理機能」を使って、国交省にとって都合の悪い航空機を非表示にしているようなことはないのか……。
今回の技術提案書の開示実施手数料は、2,980円(次図)。
なんとも高いのり弁である。
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