国交省は11月1日から、川崎ルートにおける騒音影響の軽減方策(大型機のB滑走路末端からの離陸滑走)を実施する。
どの程度の騒音低減効果があるのか。国交省は具体的な数値を公開していないので、筆者が試算してみた。
川崎ルートにおける騒音影響の軽減方策、11月1日より実施
国交省は10月31日夕刻、「出発経路における騒音影響の軽減方策(大型機のB滑走路末端からの離陸滑走)」の運用を11月1日より正式に開始することを公表した。
出発経路における騒音影響の軽減方策(大型機のB滑走路末端からの離陸滑走)の運用を、11月1日より正式に開始します
(前略)本年8月3日に開催した第5回検討会では、議題の一つとして、出発経路における騒音影響の軽減方策※の導入についてもご議論いただいたところです。
今般、その方策の運用に向けた調整を終えたことから11月1日から正式に運用を開始することとしました。
- ※B777、A330型機のB滑走路からの離陸開始場所を滑走路の一番後方(末端)とするもの。これにより、B滑走路から離陸した大型機の陸域の通過高度の引き上げや早期の旋回が可能となり、騒音影響の軽減を図ることができます。
※以下、「B滑走路離陸経路」のことを「川崎ルート」と呼ぶ。
川崎ルートにつき、大型機(B777、A330型機など)の離陸開始位置を滑走路の一番後方(末端)に移動させることで、陸域の通過高度の引き上げや早期の旋回が可能となり、騒音影響の軽減を図ることができるというのである(次図)。
(第5回固定化回避検討会(22年8月3日)資料2より)
川崎ルートにおける現状(飛行ルート、騒音環境)
川崎ルートは(次図)、南風時の15時~19時(切替時間を含むため、実質3時間程度)に運用される。
大田区羽田小学校(飛行高度約150m、羽田空港から800m程度・B滑走路西側出発経路の側方1km程度に位置している)における最新の騒音測定結果(22年6月)を次図に示す。
※川崎ルートでは、地元自治体との取り決めにより、長距離国際線と4発機(B747やA340など)が飛行しないことになっている。
川崎ルート(南風時・B滑走路出発ルート)の騒音レベルの最大値平均の月次変化を次図に示す。
羽田小学校の騒音レベルは21年3月以降、概ね70~75dBの範囲で推移している。
「羽田新ルート|国交省の騒音測定データを可視化※随時更新」より
騒音影響の軽減方策の効果、具体的な数値は非公開
離陸開始場所を滑走路の一番後方(末端)とすることで、どのくらいの騒音低減効果が見込めるのか。残念ながら具体的な数値は公表されていない。
筆者が国交省への開示請求で入手した「東京国際空港飛行経路騒音実態に関する検証」の報告書(22年3月)には、P153~154に川崎ルートの騒音軽減運航方式の効果検証の結果が記載されているようなのだが、墨消しされていて知ることができない(次図)。
のり弁満載の報告書を読み解く!「東京国際空港飛行経路騒音実態に関する検証」より
ザックリ試算してみた
11月1日より実施される軽減方策の引き上げ効果、旋回効果をザックリと試算してみる。
国土交通省が運営しているサイト「羽田空港のこれから」の「新飛行経路による影響」に掲載されている「離陸時(経路直下及び側方)B滑走路西向き離陸(南風 新飛行経路)」(P51)のグラフを元に試算する。
具体的には次の通りだ(次図)。
離陸開始場所を約100m後方に移動させることにより、飛行高度は約500ft(約152m)高くなる。その場合、滑走路から約2kmの地点(大田区小島町付近)の飛行ルート直下の最大騒音レベルは86から82dBに低下する。
住宅地から離れる旋回効果として500m見込むことができれば、同地点の最大騒音レベルはさらに80dBまで低下する。
離陸開始場所の移動と旋回効果を合わせるとその差6dB(=86-80)。
以上をまとめると、次のようになる。
国交省が公開している「B滑走路西向き離陸」に係る騒音データを元に試算すると、11月1日より実施される軽減方策が実施されることにより、滑走路から約2kmの地点(大田区小島町付近)の航空機騒音が約6dB低下することが期待できる。
6dBとは、人間の耳では音量が約4倍(≒10LOG10(4/1))違って聞こえるので、けっこうな騒音低減効果と言えそうだ。
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