「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」第5回目が8月3日、1年ぶりに開催された。
翌日14時、国交省HP「羽田空港のこれから」に同会議の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
※投稿22年8月5日(追記22年8月26日)
国交省、今回もこっそり公開
「羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」第5回目が8月3日、1年ぶりに開催された。翌日14時、国交省HP「羽田空港のこれから」に同会議の配布資料が公開されたことをご存じだろうか。
普通の人はまずアクセスしない「羽田空港のこれから」のトップページの「お知らせ」欄に掲載されたのである(次図、ピンク囲み)。
第5回検討会の情報は国交省HPの新着情報にも掲載されず、航空局のページに掲載されているだけなので(同局の新着情報にも掲載されていない)、羽田新ルートに関心の高い人でも「第5回 羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会」のページ(次図)にアクセスすることは難しいだろう。
配布資料をひも解く
前置きが長くなった。
8月4日に公開された資料(PDF形式)は次の5つ。
※議事概要は、まだ公開されていない(8月4日現在)。
- 議事次第
- 【資料1】飛行方式の検討について
- 【資料2】出発経路の騒音軽減方策について
- 【資料3】飛行方式(RNP-AR)に関する基準見直し等の検討状況について
- 【資料4】今後のスケジュールについて
これらの資料には、第4回検討会で選定された2つの飛行方式に対して、技術的な検証に係る進捗状況と基準策定に向けて今後行うべき取り組みが記されている。
かなり専門的な内容なので、門外漢には分かりにくい。まだ議事概要が公開されていないので、配布資料から分かることを中心に一般の方にも理解できるよう、できるだけ分かりやすく説明しよう。
飛行方式の検討について
第4回検討会で選定された2方式に関して、「前提条件の設定」と「モデルの検証」に係る作業は完了し、「経路の設計・検証」と「関係者との調整」が今後実施予定とされている(次図)。
資料1、P2より
7枚を費やして、ごちゃごちゃ書かれているが、多くの区議会議員から公開を求められていた具体的な見直しルートについては全く触れられてない。
出発経路の騒音軽減方策について
荒川沿い北上ルートについては、既に導入されている「急上昇方式」と「NADP2」の2方式の騒音軽減効果が同等に優位と結論付けられている。
川崎ルート(B滑走路離陸経路)については、既に導入されている「急上昇方式」と未採用の「NADP1」が高度・推力の観点からは同位であるが、早期旋回の効果(住宅地への騒音軽減)が最も高い「急上昇方式」が騒音軽減効果として優位と結論付けられている。また、大型機については、滑走路末端(B14)から離陸滑走を開始することで騒音影響を軽減できるとしている。
※3つの騒音軽減出発方式(急上昇方式、NADP1、NADP2)は、次図のとおりである。
資料2、P1より
なお、出発経路の騒音軽減方策については、国交省航空局が空港振興・環境整備支援機構に委託していた「東京国際空港飛行経路騒音実態に関する検証」報告書(履行期限22年3月18日)の成果が元になっている。筆者が開示請求によって入手した同報告書は(下記参照)、のり弁満載なのだが、今回公表された資料2と突き合わせることで、全体像の理解を深めることができる。
⇒のり弁満載の報告書を読み解く!「東京国際空港飛行経路騒音実態に関する検証」
飛行方式(RNP-AR)に関する基準見直し等の検討状況
新たな飛行方式(RNP-AR)を導入するためには、ボーイング777やエアバス350などのように同方式の運航許可が未取得の機材への対応、ボーイング767のようにそもそも同方式に対応することが困難な機材への対応をどうするのかという問題がある(次図)。
資料3、P2より
今後のスケジュール
資料4(今後のスケジュールについて)に、「技術的検証の具体的な作業スケジュール」が掲げられている(次図)。
安全性評価(シミュレーション検証⇒リスク評価)を経て、「基準素案の策定」が行われ、次回の第6回固定化回避検討会が23年(23年末?)に開催されることになっている。
資料4、P1より
上図からは、具体的な見直しルートの絵姿が全く見えてこない。
羽田新ルート下の住民の最大の関心のひとつは、見直しルートが我が家の上空を通過するのか否かだ。国交省は更に1年以上、見直しルート案を示さずに、「固定化回避」の検討を続けるつもりなのだろうか……。
【追記】「議事概要」について
※追記22年8月26日
国交省HPに8月24日19時、議事概要(A4判3枚)が公開された。
専門的な内容が議論されているが、とっても気になったのは2つの点がまったく議論されていないことだ(国交省に釘をさされているのか?)。
1点目は、固定化回避した結果としての具体的な見直しルート案が議論されていないこと。出席者の間では見直しルート案を議論することはタブーになっているように思えてしまう。
2点目は、「【資料1】飛行方式の検討について」に記された「前提条件設定」と「モデルの検証」の成果は羽田空港ではなく、成田空港を元に試算されたものであるのだが、そのことについて誰も言及していないこと。
羽田空港で試算すると、新たな後方乱気流管制方式の運用により、羽田新ルートの増便分を吸収できる可能性が顕在化してしまうので、この点も有識者らにとってタブーなのか……。
※詳しくは、「開示請求!「滑走路処理能力算定手法に関する調査」報告書をひも解く
」参照。
あわせて読みたい
第1回以降の固定化回避技術的方策検討会に係る解説記事については下記参照。