公益財団法人日本デザイン振興会は10月7日、2022年度のグッドデザイン賞の受賞結果を発表。5,715件を対象に審査し、1,560件の受賞を決定。
23区の分譲マンションで受賞した主な物件は4件(次図)。すべて大手不動産会社だった。
※総戸数の多い順
プラウド練馬中村橋マークス
(C)JDP GOOD DESIGN AWARD
受賞企業:野村不動産
物件概要:練馬区、7階建て、186戸、2022年3月竣工
低層住宅が立ち並ぶ住宅地が周辺に連担するエリアに立地する大規模集合住宅として、近隣への配慮に優れた作品である。
大規模な建造物だけに生じる長い接道面には、四季が感じられるたっぷりとした緑量が施されており、小規模な住宅や商店が並ぶエリアの価値そのものを引き上げる効果が十分に感じられる。周辺に対してスケールが大きな建物本体のデザインも、マリオンレスにより水平性が印象的な外観で、モノトーンの落ち着いた色彩とともに、その軽やかさが規模による圧迫感を大きく軽減している。
ある程度パターン化することで事業展開していたこれまでの住宅供給を、新型コロナ禍によるライフスタイルの変化に合わせて「変える」という選択をしたチャレンジは、今後の集合住宅の新たな可能性を示しているように思う。
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プラウド高田馬場
(C)JDP GOOD DESIGN AWARD
受賞企業:野村不動産
物件概要:新宿区、9階建て、135戸、2021年5月竣工
高田馬場駅から徒歩圏内の高層の大学や専門学校、集合住宅などが建ち並ぶ地域に、神田川からの風を意識した形状で、風を周辺環境へ通しながら、各居住空間にも引き込む大変優れた計画である。
曲面の敷地形状を活かしながら、手すりを分節しその隙間から風を引き込んでいる。手すりの素材はガラスとし、道に対しての圧迫感を軽減していることも秀逸である。共用空間として共働き世帯をイメージしながら、憩い、働き、暮らせる、多世代がほど良い距離感でいられる場を創出したことは、良好なコミュニティの形成が促進されるだろう。
今後、神田川沿いに流れる風を意識した都心型環境共生型住宅という価値が人々から共有され、この建築が起点となり、より一層の神田川の水質改善や親水空間の創出といった、副次的な地域環境の向上に繋がることも期待されるのではないか。
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パークコート白金長者丸
(C)JDP GOOD DESIGN AWARD
受賞企業:三井不動産レジデンシャル
物件概要:品川区、7階建て、34戸、2021年5月竣工
森に隣接した白金長者丸にある低層の住宅地に、近接する自然教育園や庭園美術館の空間性を引き込み、美術館の中に34住戸があるイメージで設計された大変興味深い計画である。
この美術館というイメージを空間体験として実現するために、軸線を計画し、その先にアートや庭を配置する計画とすることで、先に進みたくなる連続した展開が生まれている。外部の路地の素材を建物内部まで引き入れている点も連続性の展開として見事である。単調なファサードや住み方にならないように27タイプの間取り計画とし、多様な住まい方ができる可能性を創出していることも秀逸である。
今後も周辺環境やその場所がもっているポテンシャルを活かして、地域をより良くしていく姿勢の継続を期待したい。
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シティハウス二子玉川ザ・グランド
(C)JDP GOOD DESIGN AWARD
受賞企業:住友不動産
物件概要:世田谷区、5階建て、31戸、2020年11月竣工
二子玉川駅から徒歩圏内、中層の集合住宅が建ち並ぶ地域で、リビング・ダイニングの開口を高反射ガラスとすることで、光を最大限に内部空間に取り込み、街並みとしては空などの周辺の風景が映し出されることで、道への圧迫感を和らげている優れた計画である。
単調なファサードや住み方にならないように、多様な間取り計画とし、奥行きのあるバルコニーは人の居場所として多様な使い方の拡張性が想像でき秀逸である。駐車場を機械式とすることで道路側を駐車場に埋め尽くされないように配慮し、道路に植栽を施し、そこに隣接してエントランスホールを配しているゾーニングには、街に彩りやアクティビティをもたらす波及効果も見込めるであろう。
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