公益財団法人日本デザイン振興会は9月29日、2016年度のグッドデザイン賞の受賞結果を発表。
今年度のグッドデザイン賞は近年で最多となる4,085件の申請に対して、1,229件が受賞。
マンションに係る件名をざっと整理してみた。
新築マンションやリノベーションといったハードだけでなく、デザイン・コンセプトや仕組みといったソフトも受賞している。
新築マンション(16件)
今回、新築マンションでグッドデザイン賞を受賞したのは16件。うち三井不動産レジデンシャルが3件で最多。
( )内は、主な事業主体名を示す。
- 桜上水ガーデンズ(野村不動産)
- ひばりが丘フィールズ(大和ハウス工業)
- アイタワー(西日本鉄道)
- スカイティアラ(住友不動産)
- ザ・パークハウス 晴海タワーズ(三菱地所レジデンス)
- グローバル フロント タワー(三井不動産レジデンシャル)
- パークアクシスプレミア南青山(三井不動産レジデンシャル)
- GATE SQUARE 小杉陣屋町(三井不動産レジデンシャル)
- ローレルコート覚王山御棚町(近鉄不動産)
- ルミレイス豊洲(丸仁ホールディングス)
- ディアナコート祐天寺翠景(モリモト)
- ピアース溝の口(モリモト)
- ZOOM 東陽町(トーシンパートナーズ)
- ZOOM 六本木(トーシンパートナーズ)
- THE CONOE 〈代官山〉(アパホーム)
- フェリスト赤坂(PLEAST)
「審査委員の評価」を読むと、いかにして物件の良さを論評すればいいのかという点でいい勉強になる。
たとえば、タワーマンションの「審査委員の評価」は次のとおりだ。
ザ・パークハウス 晴海タワーズ(49階建て)
同じデザインの塔を並べることの多いツインタワーの超高層マンションだが、このプロジェクトでは、それぞれの棟の外観に「織り布」と「折り紙」という異なるコンセプトによる異なる表情を持たせ、免震構造等による柱のスリム化、将来の更新性を考慮した配管計画等、長期耐用化を意識した設計内容とともに、ウォーターフロントに相応しいツインタワーを実現した点が評価された。
アイタワー(45階建て)
外観のデザインと、住民のコミュニティの形成は、期せずして「ランドマーク」として目立ってしまうタワーマンションが共通して抱える問題点である。それら両方に挑んだデザインの姿勢が評価された。
グローバル フロント タワー(34階て)
「水辺沿い空地」という制度を用いて、公共に開かれた、運河の風景を楽しむ庭を創出した点が評価された。マンションの空地としてだけでなく、運河沿いの環境整備を通して既存の水面の価値の向上に貢献するプロジェクトである。
リノベーション(4件)
4件目のメックecoライフ社が三菱地所レジデンス・三菱地所ホームと組んで展開している、技術開発型リノベーションのビジネスモデルがユニークである。
- 編集する家(スモスイニシア)
築33年、6階、専有面積42.88m2 - ROOM 907(ミサワホーム)
築36年、専有面積88.8m2 - リノア三鷹(リビタ)
築25年の店舗・事務所区画付賃貸住宅を一棟丸ごとリノベーション - 既築マンションのリノベーション(メックecoライフ)
買い取った既築マンションに最新技術を導入してリノベーション工事を実施し、短期の仮住まいを必要とする実験協力者に、一定期間相場より低額で定期貸家しながらデータを取得する。
実証実験が終了した後、協力者との定期借家契約を更新せずに再販分譲するシステム。
デザイン・コンセプト(3件)
個々の物件デザインではなく、複数の物件に導入されたデザイン・コンセプト(あるいは設計仕様)に対するグッドデザイン賞が3件。
DIANA(モリモト)
『モリモトのデザインコード』~モリモトの"ものづくり"を実現するためのマンションのつくり方。フレームを一から検討し、最適な間取りをひとつずつ計画し「快適な住環境を提供する」。その特徴として「ワイドスパン」「逆梁」「ハイサッシ」「内廊下」「多種多様な住戸プラン」などを採用し、都心の限られた敷地においても周辺環境への配慮をしながら「快適な住環境」を獲得できるマンションブランドを目指している。
マドルノ(近鉄不動産)
時の流れと共に変化してゆく家族のライフステージに合わせ、リフォームすること無く、自分たちの手で住まいの間取りを変化させていくことを実現したのが、ライフステージ対応システム「マドルノ」。
エイジング・フリー(近鉄不動産)
高齢化の進む時代のニーズを汲み取り、年齢を重ねるごとに表れてくる様々な不便や不満に柔軟に対応できるように考えられた独自の集合住宅用加齢対応仕様が「エイジング・フリー」。
住まう人が年を重ねていく毎に現れる、心と身体の様々な変化に対応し、今もこれからも快適で、健康に暮らせる、ユニバーサルデザインプランのオリジナル企画商品である。
その他ユニークな受賞件名(4件)
ちょっとユニークな件名についても紹介しておこう。
SUUMOスコープ(リクルート住まいカンパニー):VR
7万円近い審査料(一次:10,800円、二次:57,240円)を払って、SUUMOスコープでグッドデザイン賞を取って、どうしたいのだろうか?
審査委員も論評に苦心したことだろう。
審査委員の評価
今の時代にあるべきVRの使い方である。今後より多くの部屋や場所がこのようにアーカイブされ、更に一般的になる可能性を秘めていると感じた。
「1,500円のGoogle CardBoardを無料で手に入れる方法【期間限定】」より
トラスム(リビタ):中古住宅購入プラン
中古マンションを購入前に「試し住み」ができるというビジネスモデルでもグッドデザイン賞が取れる!
「トラスム」は、試着や試食と同じように、試しに住んで、街やコミュニティをしっかり知ってから購入を決断できる、住宅購入の新しい仕組みである。購入前に、最大3年間試し住みをすることで、住宅の周辺環境、近隣やコミュニティなどを体感した上でじっくり考えられる。さらに、支払い済みの賃料の一部を購入時の資金に充当できる仕組みを実現した。
スマート内覧(三菱地所):賃貸物件の無人内覧サービス
犯罪現場として悪用されることはないのか?
スマートロック「NinjaLock」と、それに連携するシステムを用いた、賃貸物件の無人内覧サービス。内覧希望者は、専用サイトにて鍵の開閉権限を取得し、予約時間に希望物件に行き、自らのスマートフォンで鍵を開錠。好きな時間に、一人で内覧をおこなうことが可能となる。
イゴコチBOOK(野村不動産):住まいの取扱説明書
1,222世帯が暮らす複合再開発「富久クロス」で作成された本(119ページ、タテ21㎝×ヨコ15㎝)。
審査委員の評価
どこをどう使ってよいのかわからないマンションの共有部分。日本全国に必ず存在しているデッドスペースを具体的に活用するための仕組みである。
不動産と大学の研究室が共同し、10万の声を集め、1000のイゴコチを本にまとめて居住者に配布した。膨大なリサーチをもとにした提言、そしてとても読む気になれない通常の管理規約集とは違い、ユーザーにやさしい本のデザインが高く評価された。全国にもっと広がるべき活動である。
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