港区議会の「22年第3回定例会」本会議一般質問(9月8日・9日)で、羽田新ルートに関して、2人の質疑応答があった。
議会中継(録画)をもとに、全文テキスト化(約2千300文字)しておいた。
※時間のない方は「質疑応答のポイント」と「雑感」をお読みいただければと。
熊田ちづ子議員(共産)
熊田ちづ子議員(共産党、区議7期、東京専売病院高等看護学校卒、70歳)
熊田:国に対し従来のように海上ルートに戻すよう申し入れること
羽田新ルートの運用を中止することについてです。国交省は2020年以降、羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会を5回開いています。
日本共産党の山添拓・吉良佳子参議院議員と低空飛行下地域の関係者と一緒に、8月25日に国交省に対し固定化回避に向けて向けた検討内容についての聞き取りを行いました。
国交省は羽田空港への進入コースの検討状況を説明し、飛行可能だと確認したと説明しましたが、検討したルートについては明らかにせず、来年予定の第6回検討会で検証結果を示すとの説明でした。
新ルートの固定化回避と言いますが、都心上空を回避するわけではなく、航路下の皆さんが心配する騒音や落下物、大気汚染、墜落の危険を回避するには海上ルートに戻すしかありません。国に対し従来のように海上ルートに戻すよう申し入れること。答弁を求めます。
区長:固定化回避に向けた検討を加速するよう強く要請
武井雅昭 港区長(無所属、5期、元港区民生活部長、早大政経学部卒、69歳)
羽田新ルートの運行を中止することについてのお尋ねです。
国は本年8月、第5回羽田新経路の固定化回避に係る技術方策検討会を開催しました。現時点では具体的な飛行ルート案は示されておりませんが、第4回検討会において選定された飛行方式について、並行する2本の滑走路のうち1本のみで運用した場合の安全性を検証し、飛行が可能であることが確認をされております。
区は今後の検討状況を注視するとともに、引き続き国に対し、海上ルートの活用、地方空港の活用等による飛行ルートの分散化、今後の航空技術等の進展に伴う飛行経路の様々な運用など、固定化回避に向けた検討を加速するよう強く要請をしてまいります。
熊田:海外(海上)ルートに戻すよう改めて要請をしていただきたい
羽田の低空飛行についてです。これまでも分散化であり、固定化回避を区長さんからもずっと(国に)申し入れて頂いてました。しかし、この間の検討状況を見ると、なかなか先ほどの文書でも紹介したように、検討している飛行ルートについては明らかにしないし、来年予定の第6回、要するに時間稼ぎをしてるようにしか見えないんですね。
それで、これは今、港区も区民の意見を取って、その多く(の区民)が落下物、不安、威圧感、こういうことですから、この問題を解決するには海上ルートに戻すしかないというふうに思いますので、改めて今も本当に海外からも客が来てないわけですから、都心上空を使う必要はありませんので、海外(海上)ルートに戻すよう改めて要請をしていただきたいと思います。再度答弁お願いします。
区長:海上ルートの活用を(国に)求めてまいります
最後に、羽田新ルートの運用を中止することについてのお尋ねです。
ご質問にありましたように、第5回の8月の羽田新経路の固定化回避に係る技術的方策検討会では具体的な飛行ルート案は示されておりませんでした。1本の滑走路を使う時にこの安全性が確認されたというような内容でございますけれども、引き続き区といたしましてもこの検討を加速化するように、そしてまた海上ルートの活用を(国に)求めてまいります。よろしくご理解のほどお願いをいたします。
阿部浩子議員(みなと政策会議)
阿部浩子議員(立憲民主党、区議5期、元衆議院議員秘書、昭和女子短大卒、54歳)
阿部:都心ルートについてどのようにお考えでしょうか
最後に、羽田空港都心ルートについてお伺いをいたします。
2020年3月から羽田空港新ルートが開始され、都心、この港区の上空を南風時に飛行しています。コロナの影響を受けて飛行機の便数は減少しているものの、やはり都心上空を飛行している違和感、騒音、落下物の危険性は今なお感じております。
国土交通省は「羽田空港のこれから 港区版」を年に4回発行しており、その中で固定化回避に向けて取り組んでいるようですが、まだ回避には繋がっていません。これまでコロナ禍で外国人観光客に対し水際制限を行っており、そのため飛行機の便数も減少していました。しかし、海外からの観光客の入国制限を全て解除した時に、当初想定していた通りに飛行機の便数が増え2分に1機が飛んでくることになります。
先日、広島空港から羽田空港に向かう飛行機に乗りました。南風時だったため、港区の上空を目にすることができました。間近で見る東京タワー、レインボーブリッジ、観光客なら素晴らしい眺めと思うかもしれません。しかし、私はこんな近くを飛行機が通っている。しかも、着陸態勢に入っていることに恐怖を感じました。
飛行ルートの下に住んでいる港区民にとって騒音、落下物、万が一の事故への不安が南風時にいつも抱えているわけです。日本の南側から飛行機が飛んできてもわざわざ港区の上空の都心ルートを取って着陸します。
私は1日も早くこの都心ルートは中止し、従来の海から海へのルートに戻すべきだと考えます。区長は今の状況と今後さらに飛行機の便数が増えていくこの都心ルートについてどのようにお考えでしょうか。お聞きします。
区長:固定化回避の検討を迅速に行うよう強く求めてまいります
武井雅昭 港区長
最後に、羽田空港都心ルートについてのお尋ねです。国は広聴メールのほか、昨年度実施した羽田空港機能強化に関する意見募集においても、騒音や落下物、便数が増えることに対する不安の声が寄せられており、運行便数の増加に伴いこうした声がさらに増えていくことが考えられます。
引き続き国に対し、海上ルートの活用や地方空港の活用等による飛行ルートの分散化などにより、固定化回避の検討を迅速に行うよう強く求めてまいります。よろしくご理解の程お願いをいたします。
雑感
港区議会では、定例会本会議で羽田新ルート問題に係る代表・一般質問を取り上げるのは共産党と「みなと政策会議」(無所属の議員10人で構成)だけでなく、自民・公明党議員も少なからず取り上げるのが他の区議会では見られない特徴である(次表)。
羽田新ルート問題への関心が薄れてきている!?
羽田新ルート問題を取り上げる区議会が少なくなってきているなかで、港区議会では今回2人の議員が取り上げたことは高く評価したい。
ただ、取り上げる優先順位が低いことは、関心の低さを表していないだろうか。
区議会HPに事前に公開された「質問項目」で確認すると、熊田議員(共産)は全12項目の7番目。阿部議員(みなと政策会議)に至っては全16項目の15番目。16番目が「その他」だから、羽田新ルートは実質的には最後。こうなるともう「いちおう質問してみました」みたいな……。
プロレスのような質疑応答
結果が見えているという意味では、もはやプロレスのような質疑応答だ。
熊田議員(共産)も阿部議員(みなと政策会議)も海上ルートに戻すことを求めたのに対して、武井区長も国に海上ルートの活用を求めると応じている。
武井区長はこれまでも毎回、「国に求めてまいります」といった、役人が準備した原稿の棒読みに徹している。「国に求めてまいります」と言うだけでは、現状は何も変わらないのである。
- 22年定例会
第3回:区長「海上ルートの活用を(国に)求めてまいります」
第2回:区長「固定化回避に向けた検討を一層加速するよう強く求めてまいります」
第1回:区長「固定化回避の検討を加速するよう強く求めてまいります」 - 21年定例会
第4回:区長「固定化回避に向けた検討を一層加速するよう強く要請」
第3回:区長「固定化回避に向けた検討を加速するよう強く要請」
第2回:区長「検討を加速するよう強く要請をしてまいります」
第1回:区長「飛行経路の様々な運用などを検討するよう国に強く求めてまいります」
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