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民泊市場の構造を解剖する:東京23区・主要都市の届出状況

民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行された2018年6月15日以降、東京23区および主要都市における届出状況を可視化する。パンデミックを経て、民泊市場は今や「回復」を通り越し、新たな拡大フェーズに入ったと言える。

※初投稿:2021年2月3日(最終更新:2026年8月4日)


もくじ

東京23区:新宿・墨田による「2強」

受理件数(最新状況)

2026年7月31日現在の調査によると、東京23区における住宅宿泊事業の受理件数は、合計で16,364件に達した。区別の内訳を見ると、新宿区(3,775件)、墨田区(2,314件)の2区が突出しており、この2エリアだけで23区全体の4割近くを占める集中構造となっている。

住宅宿泊事業の届出施設の受理件数(23区)

【データ出典について】

  • 各件数は、観光庁「民泊制度ポータルサイト」公開データおよび各区HPの公表資料に基づく。
  • 自治体により更新頻度が異なるため、全データが同時点のものではない点に留意されたい。
受理件数の推移:新宿区の独走と加速する拡大

時系列で見ると、新宿区の受理件数は2022年6月の底打ち後、2024年以降はさらに角度を増して急上昇している。2026年7月時点で3,700件を超えており、他区との差を広げ続ける「独走状態」だ。これは圧倒的なインバウンド需要の集中を背景に、既存のホテル供給不足を個人・法人の届出物件が補完する構造が完全に定着したことを示している。

住宅宿泊事業の施設の受理件数の推移(23区)

廃止件数の推移:市場の「新陳代謝」と高回転リスク

一方で、廃止件数も累計で増加の一途をたどっている。新宿区の廃止数は1,700件を突破し、他区を大きく引き離す。これを「市場の健全な新陳代謝」と捉えることも可能だが、裏を返せば物件の入れ替わりが激しく、収益性の変動による撤退判断が日常化しているリスクの高い市場であることも意味している。事業者は、参入の容易さ以上に「継続の難易度」を示唆している。

住宅宿泊事業の事業廃止件数の推移(23区)

制度の選択:住宅宿泊事業法 vs 特区民泊

大田区:特区民泊の優位性が鮮明に

特区民泊の先駆者である大田区では、2024年度を境にトレンドが明確に変化した。かつては住宅宿泊事業と件数が拮抗していたが、直近では特区民泊(483件)が住宅宿泊事業(254件)を大きく突き放している。年間180日の営業上限がない特区民泊の「収益構造上の優位性」が、高稼働・高単価を目指す事業者によって再評価された結果と考えられ、新法民泊はあくまで「サブ」の選択肢へと押しやられている。

届出施設の受理件数の推移(大田区)

主要都市の動向:札幌の「爆発的」躍進

札幌と大阪、伸びの質の違い

全国主要都市の推移では、札幌市の勢いが他を圧倒している。2023年度から急激な右肩上がりのカーブを描き、住宅宿泊事業の受理件数で大阪市(2,256件)を追い抜き、3,000件を突破。冬のインバウンド需要のみならず、年間を通じた観光拠点としてのポテンシャルが、新法民泊の急増という形で具現化した。対して大阪市は、新法民泊に関しては微増に留まっている。

住宅宿泊事業の届出施設の受理件数の推移(その他都市)

大阪市における「特区民泊」の圧倒的独走

大阪市の異常とも言えるデータは、特区民泊の件数に現れている。住宅宿泊事業が2,000件程度で頭打ちとなっているのに対し、特区民泊は8,000件を突破する爆発的な成長を遂げている。365日の稼働が可能な特区制度が、大阪のインバウンド市場における実質的な「標準インフラ」と化した。この差は、単なる制度の選択ではなく、投資効率を最大化しようとする事業者の合理的な判断の結果である。

届出施設の受理件数の推移(大阪市)

大阪市と大田区、傾向の「解」は収益モデルの差にある

大阪市では特区民泊が独走し、大田区では2倍程度の差で並走する。この乖離は、自治体の認定プロセスの差以上に、エリアに集積する投資家層の属性や、一棟まるごと民泊化するような大規模投資の多寡を反映している。大阪は「民泊の事業化」が最も進んだ特異なエリアと言える。

住宅宿泊事業・特区民泊の届出施設の受理件数の推移(大阪市vs大田区)


【追記】データ公表の変遷と課題

観光庁による公表頻度の変更(23年9月26日追記)

観光庁は2023年度より、それまで毎月行っていた「住宅宿泊事業法に基づく届出状況」の更新を、2か月につき1度へと変更した。自治体の事務負担軽減が理由とされるが、オーバーツーリズム対策やリアルタイムの市場把握という観点からは、情報の鮮度低下を懸念する声もある。

大阪市における「重複計上」問題(25年5月30日追記)

2025年5月、大阪市の特区民泊施設数において300件超の重複計上が発覚した。前業者の廃業届が未提出のまま新規認定が行われたことが原因とされる。統計の精度は、政策立案の根幹である。急拡大する市場に、行政の管理体制が追いついていない現状が浮き彫りとなった。


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2025年6月1日、このブログ開設から21周年を迎えました (^_^)/
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