第207回国会(21年12月6日~12月21日)の衆議院の質問主意書42件のなかに、29番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。
鈴木庸介 衆議院議員が12月16日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。
鈴木庸介 衆議院議員(1期、立憲民主党、元NHK記者、コロンビア大学院卒、46歳)
問:従来の飛行ルートに戻すべき
都心上空を飛行する羽田空港の新飛行ルートについては、落下物の危険や騒音の問題により経路下の自治体からルートの変更を求める決議が出ているほか、関連する議員連盟が発足し、以前のように東京湾上空を飛行するルートに戻すことを求める声が広がっている。
政府は新飛行ルートを使うことについて、増え続ける訪日外国人旅行者向けに発着回数を増やすことにより、経済を活性化させることなどをメリットであるとしていた。しかし、日本航空株式会社の発表では、令和4年についても国際線の減便率が1月は72%、2月は70%となっているなど、コロナ禍以前の訪日外国人旅行者数に回復するには時間がかかると見通される中、住民の安全や環境を考慮して従来の飛行ルートに戻すべきだと考えるが、政府の見解を問う。
答:国際競争力の強化、騒音による影響の分散等の観点、引き続き運用する必要
東京国際空港における新たな飛行経路については、御指摘のような見通しにかかわらず、将来的な航空需要の拡大を見据え、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、引き続き運用する必要があると考えている。
雑感(極めて残念な質問内容)
昨年の衆院選の東京10区で鈴木隼人に敗れるも比例復活で初当選した鈴木庸介氏が質問主意書に初参戦。鈴木庸介氏が第207回国会(21年12月6日~12月21日)で唯一、羽田新ルート問題を取り上げた議員であることは評価したい。でも、元NHK社員にしては、極めて残念な質問内容である。
筆者がこれまで観測してきた羽田新ルートに係る質問主意書は全部で29件。今回の鈴木氏の質問はダントツで短い(332文字!)。 しかも、コロナ減便下での新ルート運用疑義については、過去に5人の国会議員が質問主意書を提出している。
- 松原仁 衆議院議員(立憲)
20年11月26日:コロナ禍に伴う羽田空港発着の航空需要の減少
20年3月9日:新型コロナ、モラトリアム適用 - 初鹿明博 (当時)衆議院議員(立憲)
20年3月5日:新型コロナの影響 - 長妻昭 衆議院議員(立憲)
20年3月19日:航空機利用減に伴う羽田空港発着便の新ルート - 山添拓 参議院議員(共産)
20年9月18日:羽田空港の新飛行ルート - 木村英子 参議院議員(れいわ)
20年6月16日:羽田新ルート、視覚障がい者に関する騒音対策
国会会議録検索システム(質問主意書を抽出する機能がある)を使って、上記5名の質問主意書に対する政府答弁書を読んでさえいれば、今回の鈴木氏の質問主意書に対する政府答弁内容は容易に想像できたであろう。
※今回の政府答弁は、松原仁 衆議院議員が21年11月26日に提出した質問主意書に対する政府答弁書の内容と全く同じ(下記)。
(略)新経路については、新型コロナウイルス感染症の影響にかかわらず、我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散等の観点から、引き続き運用する必要があると考えている。
鈴木氏が今回、かように残念な質問主意書を提出したのは、新人議員としての焦りからなのか、支援者向けのポーズ質問だったからなのか、あるいは有能な政策秘書が付いていないからなのか……。
いずれにせよ、第208回の通常国会(22年1月17日~6月15日)においては、本気モードの質問を期待したい。
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