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質問主意書(羽田新ルート、視覚障がい者に関する騒音対策)

第201回国会(20年1月20日~6月17日)の参議院の質問主意書196件のなかに、151番目として視覚障がい者等に係る次の質問主意書が埋もれていることに気が付いた。

木村英子 参議院議員(れいわ新選組)が6月16日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されていたのでひも解いてみよう。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。
※時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

木村英子 参議院議員(れいわ新選組)
木村英子 参議院議員(1期、れいわ新選組、 神奈川県立平塚養護学校高等部卒、55歳)

2020年3月29日より羽田空港において、新飛行経路(以下「新ルート」という。)の運用を開始しましたが、この新ルートは、都心の真上を飛行するものであり、その安全性や騒音への懸念が多く残るものとなっております。


実際に、新ルートの運用開始に対しては、5月末までに騒音などの苦情が2500件以上寄せられたとの報道もなされており、6月12日には住民の一部が国に対して提訴をしています。

このように、新ルートに対しては、住民らの反対をはじめ、新ルートの影響を受ける複数の地方公共団体(港区や品川区)の議会で反対の決議がなされるなど、見直しを求める声が多数寄せられている状況です。


特に騒音による問題としては、障がい者への影響が大きいことが挙げられます。「障がい」といっても、障がいの種別・程度は多様で、社会環境によってその身体的、精神的反応は異なります。


特に視覚障がい者の人は、生活のすべてにわたり、耳で聞く音を頼りにしており、1つ聞き間違えただけでも、命の危険にさらされてしまいます


例えば、視覚障がい者の人が単独で歩行する場合、自動車のエンジン音やマンホールの下水音、自動販売機のモーター音、道行く人の会話の声、コンビニの入口のチャイム等々、街中を歩く際には、周囲の音すべてを頼りにして行動をしていますが、その頼りの音が、新ルートの飛行機による騒音によってかき消されてしまい、視覚障がい者の行動や生活に著しく支障をきたし、自動車への衝突などの危険を生じることがあります。


この様な危険を回避し視覚障がい者の命を守るためには、横断歩道の信号機を音響式にする必要があります。実際に、信号機が音響式になっていないために、音の判断を誤って、事故に遭ってしまった人もいます。


また、騒音の影響を受けるのは、外にいるときだけではありません。家の中においても視覚障がい者は様々な音を頼りに行動していますが、騒音により、会話、ラジオやパソコン等が聞こえにくくなるため、情報の遮断がなされ、方向の見当違いなどの行動障がいも生じます。


これに伴う精神的なストレスは相当なものです。飛行ルート直下の住宅であれば2重窓等の防音対策を得られますが、少しでもルートから離れた住宅ではその対象とはなっていませんし、そもそも生活をしていて窓を自由に開けられないこと自体が強いストレスになります。


以上のように、騒音によって多くの障がい者が困難を強いられ、生活を壊される状況を放置し、安全性や騒音の問題を解決しないまま、新ルートの運用開始を断行したことには大いに疑問がありますので、新ルート運用開始の必要性や騒音対策等の現状について質問いたします。

問1:新ルート運用開始の必要性

問1-1:コロナ減便・オリパラ延期、新ルート運用開始理由と必要性?

新ルート運用の目的は、国際線増便による首都圏の国際競争力の強化、東京オリンピック・パラリンピック開催の円滑化などが挙げられています。しかし、新型コロナウイルスの影響により国際線の需要は著しく落ち込み、大幅な減便をしているうえ、東京オリンピック・パラリンピックの延期が予定されています。様々な懸念を抱えている現状において、再検討が必要な状況にあると考えます。


なぜこの状況において新ルートの運用を開始したのか、その理由と必要性についてお答えください。

問1-2:住民の健康被害などの懸念、新ルート運用開始理由?

住民や地方公共団体から反対の声が上がっており、住民の健康被害などの懸念があるにもかかわらず、なお市街地の真上を通る新ルートの運用を開始しなければならない理由があるのかお答えください。

答1-1&1-2:増便した際の円滑な運用に備えたい

我が国の国際競争力の強化首都圏における航空機の騒音による影響の分散等のためには、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)における新たな飛行経路(以下「新経路」という。)の運用は必要不可欠であるとともに、羽田空港において減便が発生している期間を活用して航空機の騒音対策や安全対策を改めて徹底し、増便した際の円滑な運用に備えたいと考えており、令和2年3月29日に新経路の運用を開始したところである。

問1-3:障がい者の団体や個人からの意見・苦情など?

障がい者の方々から、健康や生活への影響を懸念する声を聞いておりますが、新ルートの運用開始にあたり、地域住民に対する説明会を行った中で、国土交通省として聞き取った障がい者の団体や個人からの意見・苦情・不安の声など、その具体的な内容をお答えください。

答1-3:説明会及び公聴会において要望を頂いてきている

新経路の運用等による羽田空港の機能強化については、新経路下となる各地で6巡にわたる住民説明会を開催したほか、視覚障害者団体への説明を行ったところである。

また、新経路の運用に当たり、航空法(昭和27年法律第231号)第56条第1項の規定に基づき指定されていた羽田空港の円錐表面及び外側水平表面の変更を行っており、同法第56条の2第2項において準用する同法第39条第2項の規定により開催した当該変更に係る公聴会において、公述人である視覚障害者の方から意見を述べていただいたところである。


これらの説明会及び公聴会においては、視覚障害者の方々から、視覚障害者にとっては音の情報が頼りであるとの意見や、航空機の騒音対策や航空機からの落下物対策の着実な実施等に関する要望を頂いてきているところである。

なお、住民説明会及び視覚障害者団体への説明においては、視覚障害者の方々に対して、点字パンフレットを用いて新経路の概要を説明したほか、航空機の高度や飛行経路からの側方距離に応じた航空機の騒音を体感できる機器(以下「騒音体感機器」という。)を用いて、航空機の騒音と音響式信号機の案内音を組み合わせて作成した横断歩道において想定される音の状況等について情報提供を行ったところである。 

問1-4:障がい者の方々からの反対や不安の声、どのような検討?

障がい者の方々からの反対や不安の声に対し、合理的配慮を含めて、どのような検討をし、新ルート運用の開始を決めたのかお答えください。

答1-4:視覚障害者の方々を含む住民からの意見や要望を踏まえ・・・

国土交通省においては、新経路の関係地域の地方公共団体や視覚障害者の方々を含む住民からの意見や要望を踏まえ、航空機の騒音対策や航空機からの落下物対策を実施してきたところである。


航空機の騒音対策としては、騒音を軽減する観点から、羽田空港における着陸料について低騒音機の利用を一層促進するため令和2年1月に再度見直しを行ったことに加え、新経路における飛行高度の引上げを行っているところである。

現在は、新経路下の地域の騒音を測定するなど騒音の影響を注視しているところであり、測定結果を分析した結果、これまで住民説明会等において示していた騒音レベルを著しく上回った場合等には、原因究明を行い、必要に応じて更なる騒音対策を検討することとしている。


また、航空機からの落下物対策としては、同省において平成30年3月に取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」を踏まえ、落下物の未然防止策を徹底させる観点から、航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)を改正し航空運送事業者及び航空機使用事業者に対し部品等脱落防止措置の内容について事業計画に記載することを義務付けたことに加え、駐機中の機体を空港管理者がチェックする体制を強化するなどしたところである。

問2:障がい者に関する騒音対策

問2-1:具体的な検討内容?

国土交通省として障がい者に対する騒音の影響について、専門家及び厚生労働省担当部局とどのようなご検討をされたのか、具体的な検討内容についてお答えください。

答2-1(&2-3):「専門家及び厚生労働省担当部局」を交えた検討は行っていない

(後述)

問2-2:何機の音響信号機を新設したのか?

国として、新ルートの運用開始にあたり、視覚障がい者の社会参加を保障するための騒音に対する合理的配慮として、横断歩道に音響信号機を設置するために関係省庁等にどのような要請と予算措置を講じたか、実際に何機の音響信号機を新設したのかについて、具体的にお答えください。

答2-2:警察庁に対して情報提供を行った

国土交通省においては、新経路の運用に当たり、音響式信号機の設置に係るお尋ねのような「要請」は行っておらず、「予算措置」も講じていないが、警察庁に対しては、新経路の概要を説明したほか、騒音体感機器を用いて、航空機の騒音と音響式信号機の案内音を組み合わせて作成した横断歩道において想定される音の状況について情報提供を行ったところである。

問2-3:家の中、どのような対策?

家の中でも騒音によって視覚障がい者の人が方向感覚を失うなど、生活に支障をきたしてしまうことを踏まえ、どのような是正措置を検討し、どのような対策を実際に行ったかをお答えください。

答(2-1&)2-3:限度を超える場合には、騒音防止工事の助成を行う

国土交通省においては、新経路の運用に当たり、航空機の騒音に関して御指摘のような「専門家及び厚生労働省担当部局」を交えた検討は行っていないが、1の4(答1-4)についてで述べた航空機の騒音対策を着実に実施しているところである。


また、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律(昭和42年法律第110号)第5条の規定に基づき、障害者支援施設、障害福祉サービス事業を行う施設等については、航空機の騒音の強度及び頻度が国土交通大臣の定める限度を超える場合には、騒音防止工事の助成を行うこととしている。

問3:専門家による検討会議、障がい者・住民・地方公共団体の代表を委員に

令和2年6月3日、衆議院の国土交通委員会での質疑において、赤羽国土交通大臣が「新経路の固定化を回避するための方策を早急に検討するための有識者及び専門家による検討会議を今月中にも立ち上げるよう指示をした。」旨の発言をしております。


予定されている検討会議では、より実態を反映させた議論となるように、現に新ルートによる影響を受けている障がい者、住民、地方公共団体の代表を委員として入れることが必要と考えますが、どのような立場の委員を含める予定かお示しください。

答3:航空管制、航法等に関する専門的知識を有する者及びパイロットを選定

御指摘の検討会議においては、新経路の固定化を回避するための技術的方策について、航空管制及び航空機に係る技術的観点から検討する予定である。このため、お尋ねの委員については、航空管制、航法等に関する専門的知識を有する者及びパイロットを選定したところである。

雑感

政府答弁書なのに縦割り…

日常生活を音に頼る視覚障がい者にとって、頭上から降り注ぐ航空機騒音は深刻な問題となっている。

にもかかわらず、視覚障がい者等への具体的な騒音対策に対する政府答弁は、縦割り過ぎて心もとない。文案を作成したのは国交省担当者だとしても、完成した答弁書の提出者は内閣総理大臣なのだぞ。

  • 障がい者に対する騒音の影響について、専門家及び厚生労働省担当部局とどのようなご検討をされたのか?
    ⇒「専門家及び厚生労働省担当部局」を交えた検討は行っていない
  • 横断歩道に音響信号機を設置するために関係省庁等にどのような要請と予算措置を講じたか?
    ⇒「要請」は行っておらず、「予算措置」も講じていないが、警察庁に対しては、(略)情報提供を行った
「騒音による影響の分散」をしれっとアピール

あと、障がい者とは関係ないが、政府答弁の中に気になる表現が盛り込まれていることに気が付いた。

住民の健康被害などの懸念があるにもかかわらず、新ルートの運用を開始しなければならない理由に対する次の回答だ。

我が国の国際競争力の強化、首都圏における航空機の騒音による影響の分散のためには、(以下略)

コロナ減便とオリパラ中止により羽田新ルートを強行する理由が国際競争力の強化だけでは説得力に欠けるので、騒音分散化(騒音負担共有論)をしれっと入れ込んでアピールしているあたり、国交省の役人はいやらしい……。

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