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羽田新ルート|質問主意書(航空機利用減に伴う・・・)

第201回国会(20年1月20日~6月17日)の衆議院の質問主意書147件(4月1日現在)のなかに、130番目として羽田新ルートに係る次の質問主意書が埋もれている。

長妻昭 衆議院議員が3月19日に提出した質問主意書に対する政府答弁書が公開されたのでひも解いてみた。

読みやすいように、一問一答形式に再構成。

※以下長文。時間のない方は、「質疑応答のポイント」と文末の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

長妻昭 衆議院議員
長妻昭 衆議院議員(7期、立憲民主党、慶応法卒、59歳)

羽田空港の国際便の拡張にともない、従来は海上であった、航空機の離発着ルート(以下、「新ルート」という)が、東京23区内の超人口密集地の上空となる。そこでお尋ねする。

問1:航空機の利用が減少、新ルートの運用を中止すべき

新型コロナウイルスの影響により、国内外で航空機の利用が減少している。

羽田空港の新ルートは航空機利用の需要増を見越して決められており、航空機の利用が減少している現状では、新ルートを開始する必要はない

新ルート下の住民の懸念も十分に払拭されていない事情も考慮し、安全性が確保されるまで、新ルートの運用を中止すべきと考えるが、内閣の見解をご教示願いたい。

問2:航空機の需要が想定以上に激減した場合等、新ルートの廃止や停止

新ルートの運用を開始した後に、航空機の需要がさらに減少した場合、新ルートの利用を見直す考えはあるか

また、航空機の需要が想定以上に激減した場合等、新ルートの廃止や停止を含めて再検討する余地はあるか、内閣の見解をご教示願いたい。

答1前段&2:増便した際の円滑な運用に備えたい

我が国の国際競争力の強化、増加する訪日外国人旅行者の受入れ等のためには、東京国際空港(以下「羽田空港」という。)における新たな飛行経路(以下「新経路」という。)の運用等による羽田空港の機能強化は必要不可欠であり、羽田空港において減便が発生している期間を活用して航空機の騒音対策や安全対策を改めて徹底し、増便した際の円滑な運用に備えたいと考えていること等から、新経路については、「運用を中止」すること、「利用を見直す」こと及び「廃止や停止を含めて再検討する」ことは考えていない

答1後段:減便数、累積で4,607便である

羽田空港における減便数については、令和2年3月19日までに申請された航空法(昭和27年法律第231号)第107条の3第6項の規定に基づく混雑空港に係る運航計画の変更又は同法第109条第1項若しくは第129条の3第2項の規定に基づく事業計画の変更によれば、同年1月19日から同年3月26日までの累積で4,607便である。

問3:新ルートの運用、デメリットと対応策?

新ルートの運用について、経済的効果などメリットはさんざん聞かされているが、デメリットについて政府の説明はあまりない。

政府が考えるデメリットについてすべて具体的に項目を列挙いただき、それぞれについて対応策をご教示願いたい。

その上で、それぞれのデメリットについて、政府の対応策が万全であると考えるか、内閣の見解をご教示願いたい。

答3:飛行高度の引上げ、落下物対策総合パッケージ

御指摘の「政府が考えるデメリット」の意味するところが必ずしも明らかではないが、新経路の関係地域の地方公共団体及び住民の方々からは、住民説明会等において、航空機の騒音対策や航空機からの落下物対策の着実な実施に関する要望を頂いてきているところである。


また、御指摘の「万全である」の意味するところが必ずしも明らかではないが、航空機の騒音対策については、騒音を軽減する観点から、羽田空港における着陸料について低騒音機の利用を一層促進するため令和2年1月に再度見直しを行ったことに加え、新経路における飛行高度の引上げを行っているところであり、経路下の地域の騒音を測定するなど騒音の影響を引き続き注視することとしている。


航空機からの落下物対策については、国土交通省において平成30年3月に取りまとめた「落下物対策総合パッケージ」を踏まえ、落下物の未然防止策を徹底させる観点から、航空法施行規則(昭和27年運輸省令第56号)を改正し航空運送事業者及び航空機使用事業者に対し部品等脱落防止措置の内容について事業計画に記載することを義務付けたことに加え、駐機中の機体を空港管理者がチェックする体制を強化するなどしたところである。

問4:降下角度の変更、安全性の観点から問題なし?

新ルートの騒音対策の一環として、航空機の着陸の際の降下角度を急にする対策が採用されている。この降下角度の変更については、安全性について懸念が伝えられている。


降下角度の変更について、航空会社から政府に対して示された懸念について、政府はどのように回答しているのか、示された懸念の件数・内容と併せてお示し願いたい。

その上で、降下角度の変更は、安全性の観点から問題なし、と考えるのか、内閣の見解をお示し願いたい。

答4:安全性の問題はない

国土交通省においては、御指摘の「降下角度の変更」に関し航空会社から伝えられた個々の課題や質問が「懸念」として示されたものであるかどうかについて把握していないが、例えば、羽田空港における新経路のうち南風好天時に運用される進入経路(以下「南風好天時経路」という。)に関し、気温が高い場合に航空機の降下率が上昇し不安定な進入となる可能性がある旨の運航上の技術的な課題が航空会社から同省に対し伝えられたところであり、当該課題について、3.5度を超える降下角で進入後、途中で降下角を変更して最終的に3度で着陸する進入方式も許容している旨同省から航空会社に対し回答しているところである。


また、3.5度の降下角を含む南風好天時経路の進入方式については、当該降下角が我が国及び諸外国の複数の空港の進入方式において採用されていること、航空会社の協力により航空機の性能、気象等に係る複数の条件を設定した上でシミュレーターによる安全性の確認を行っていること、並びに実機飛行確認において南風好天時経路を飛行した操縦士及び航空機の運航の専門家から、南風好天時経路は直線の進入経路であり、かつ、当該降下角は好天時のみ使用されることから安全性の問題はない旨の意見を頂いていることを踏まえ、安全性の問題はないものと考えている。

問5:航空機からの部品脱落?

航空機からの部品脱落、いわゆる落下物(以下、「航空機落下物」という)に関してお尋ねする。

全国で航空機落下物の事案は何件あるのか、政府の把握している過去10年の件数をお示し願いたい。


また、平成28年度、平成29年度、平成30年度、令和元年度における航空機落下物に関して重量の重い順にそれぞれ3つの事例を落下物名称、落下日時、落下場所、被害の有無、航空便名、航空機会社名、発覚のきっかけ等を含めお示し願いたい。


また、航空機落下物のうち把握できるのは一部であるとの話も聞く。すべての航空機落下物を把握できているのか否か。お示し願いたい。
また、把握できるのは航空機落下物全体のどの程度なのか推計その他、知見があればお示しいただきたい。

答5:10年間、18件

国土交通省においては、航空機からの物体の落下を目撃した旨や航空機からの落下物であることが疑われる物体を発見した旨の通報等を受けた場合(当該物体が空港内で発見等された場合を除く。)には、同省の職員による現地調査等を踏まえ、当該物体が航空機からの落下物であるかどうか判断を行っているところである。


この仕組みにより同省が把握している、平成22年3月1日から令和2年2月29日までの10年間に落下し、又は発見された飛行機からの落下物(以下「落下物」という。)の事案の件数は18件である。


これらのうち、落下物が落下し、又は発見された日付が平成29年度であるものは3件、平成30年度であるものは2件であり、それぞれについて、①落下物の名称、②落下物が落下し、又は発見された日付、③落下物が落下し、又は発見された場所、④被害の内容、⑤原因飛行機の便名、⑥原因飛行機の運航者の名称及び⑦落下物発見の経緯をお示しすると、次のとおりである。

なお、落下物が落下し、又は発見された日付が平成28年度又は平成31年4月1日から令和2年2月29日までの期間中であるものはない

  • パネル②平成29年9月7日③茨城県稲敷市④被害なし⑤ANA936便⑥全日本空輸株式会社⑦発見者からの通報

  • パネル②平成29年9月23日③大阪府大阪市④車両の損傷⑤KLM868便⑥KLMオランダ航空⑦発見者からの通報

  • アンテナ②平成30年3月4日③千葉県成田市④被害なし⑤不明⑥不明⑦発見者からの通報

  • 金属片②平成30年5月24日③熊本県上益城郡④車両の損傷等⑤JAL632便⑥日本航空株式会社⑦発見者からの通報

  • プラカード②平成31年3月27日③千葉県山武市④被害なし⑤不明⑥不明⑦発見者からの通報


また、御指摘の「すべての航空機落下物」及び「航空機落下物全体」の具体的な範囲が明らかではないため、「すべての航空機落下物を把握できているのか否か」及び「把握できるのは航空機落下物全体のどの程度なのか」とのお尋ねについてお答えすることは困難である。


なお、同省においては、着陸後の機体チェック等により判明した航空機の部品の欠落について、航空会社から報告を求める制度を平成29年11月に拡充し、その件数等の把握に努めているところである。

雑感(やってしまいましたなぁ)

アベノマスク(全世帯に布マスク2枚配布)ほどのインパクトはないが、長妻先生、やってしまいましたなぁ。

新型コロナによる減便影響がらみの質問主意書は、すでに他の議員から2件提出されている。

長妻議員が質問主意書を提出したのは3月19日だから、上記2件の質問内容は公知のものとなっていた。それにもかかわらず、問1と問2は初鹿議員と松原議員の質問とダブっている。

羽田新ルートに係る質問主意書の件数では、松原議員が13件で突出している。でも、この問題を最初に取り上げたのは長妻議員(16年11月18日)。松原議員(18年12月18日)より2年も早い。

長妻先生におかれましては、もっと鋭い質問を期待いたしたく。

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