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羽田新ルート|江戸川区議会「21年第4回定例会」質疑応答

江戸川区議会の「21年第4回定例会」本会議一般質問(11月30日)で、羽田新ルートに関して、大橋美枝子議員(共産党)の質疑応答があった。

録画放映をもとに、テキスト化(約2千800文字)しておいた。

※時間のない方は「質疑応答のポイント」と最後の「雑感」をお読みいただければと。


質疑応答のポイント

大橋美枝子 議員(共産)

大橋美枝子区議
大橋美枝子区議(共産、区議3期、千葉大卒、72歳)

大橋:新しい管制方式、従来の海上ルートに戻すよう改めて国に働きかけるべき

通告に従い質問します。質問の第1は、羽田空港荒川沿い北風新ルートについてです。

2020年度の荒川沿い北風新ルートは、313日間に20,195機通過。南風悪天候は64日間、3,268機で、合計23,463機の区内通過でした。

コロナ感染症の影響による大幅な減便があっても、2019年度の約2.7倍に増えています。冬は比較的静かだった空が、新ルートにより2020年11月は従来の約30倍です。

以前から指摘していますが、環境悪化は区民に大きな影響を与えています。騒音が気になり、自費で2重窓にした方もいます。


国交省のお知らせ「2021年秋号」によれば、「2021年3月における北風時の新飛行ルートの運航便数は、予定していた 便数の約4割」とあります。

(共産党)区議団は新ルートの中止を一貫して求めてきましたが、「コロナ減便の間だけでも新ルートは止めてほしい」という区民の要望を受け止め、国に中止を働きかけるべきです。


国会議員による羽田新ルートに関する文書質問に、総理大臣の答弁書が6月25日にありました。そこには「羽田空港と成田空港で空港管制により、先行機と後続機の組み合わせで航空機の間隔が短縮される場合があるから、航空機の飛行時間の短縮に一定の効果があると考えている」と書かれています。

この答弁書から、新しい管制方式で航空機の間隔を短縮できるため、新ルートにしなくても従来の海上ルートでも増便の方法がある、と判断できます。渋谷区議会はこの答弁書の内容を踏まえ、10月13日に新ルートの運用停止を国に求める意見書を採択しています。


また、国交省お知らせ秋号に、「航空分野でもカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進められている」とあります。 

ANA と JAL の SAFサフ、持続可能な航空燃料に関する共同レポートでは、SAFの開発で CO2排出量を従来の航空燃料より約80%削減するとしていますが、SAFの生産量はまだ需要の0.03%未満です。航空燃料の CO2ゼロの技術は実用段階には達しておらず、航空機の増便については慎重な判断が必要になっています。

フランス政府は経営難に陥ったエールフランスに資金を融資するにあたって、列車など代替手段がある2時間範囲内の国内路線を縮小することを条件にするなど、脱炭素化を促す方向性が明確になっています。フランス政府のように、航空機に頼らない方向を検討する時期が来たのではないでしょうか。


そこで伺います。第1に、羽田空港の減便が続いている間、新ルートは必要なく、元の海上ルートに戻すよう国に求めるべきと考えますが、どうでしょうか。


第2に、6月25日の政府答弁書では、新しい管制方式で航空機の飛行時間の短縮に一定の効果があるとのことから、従来の海上ルートに戻すよう改めて国に働きかけるべきと考えますが、どうでしょうか。


第3に、航空機の減便が航空燃料の CO2削減につながると考えますが、区長のお考えを聞かせてください。

斉藤猛 江戸川区長
斉藤猛 江戸川区長(1期、元江戸川区教育長、早稲田大学社会科学部卒、58歳)

区長:新管制方式の運用による離発着便の増加に繋がるものではない

それではお答えしてまいります。まず1点目。羽田の新ルートの件でございます。


コロナ禍の影響で、いまなお一時的に減便が続いている状況ではございますけれども、羽田空港の機能強化は必要であると考えております。しかしながら、騒音対策や落下物等の安全対策などの区民の不安に関しましては、国の責任においてさらなる取り組みと十分な説明や情報提供を行うように、引き続き国に求めてまいります


続きまして、新管制方式についてのご質問でございます。

こちらは羽田空港の滑走路の処理能力では、新管制方式の運用による離発着便の増加に繋がるものではない、という見解を国交省が出しております。よって、国に海上ルートに戻すことを働きかける考えはございません


続きまして、航空機の減便が航空燃料のCO2削減に繋がると考えるがどうかというご質問でございます。

こちらについては 、CO2の排出量の削減は着実に進めていかなければならないと考えております。現在、国は航空分野におけるカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めており、その動向を注視をしていきたいというふうに考えております。

大橋:見解が違うってことは納得できませんので、ぜひ説明会を

ご答弁ありがとうございました。何点か意見、または質問ということで述べさせていただきます。

まず、羽田新ルートに関してなんですけども、本当に今大変な、またいわゆる変異株、オミクロン株の感染拡大の緊急対策ということで、政府が今日から当面1か月の外国人の入国制限を全世界に拡大すると決定し発表しました。当面1か月と言ってるわけですけれども。


やはりこの決定も含めて、やっぱり1か月だけでも国際便が、どのくらい減るか分かりませんが、減る可能性がまた強くなってるわけですので、やっぱり冬の間は、今まではほとんど南風・悪天候の航空機は飛ばなかったので、本当に、何て言いうんでしょうかね。

朝7時から大変、ああっ、また今朝も、また今朝も(飛んでる)みたいな感じにするわけですね。

だから是非とも、改めて国の方に言っていただけないかっていうふうに思って、この質問を取り上げました。


一つだけ資料で確認しますと、2020年の12月の南風・悪天候の通過は1日でした。荒川新ルートは30日でした。このこともやっぱり如実に、いかに冬が多いかっていうことが分かると思います。


是非、先ほど区長が「区民の立場で色々これからもう働きかける」っていうふうにおっしゃったので、そこは是非ともやっていただくと同時に、それから二つ目の質問との絡みなんですけども、やっぱり説明会をきちんとやってもらいたいと。


どう見ても、私は渋谷区議会の意見書を何回か読んだんですけれども、やっぱり国の説明がなんか納得できないというのが率直な気持ちです。

11月1日の第3回羽田空港機能強化に関する関係区市連絡会の議事録を最近読んだんですけれども。そこに今区長がおっしゃったようなことが書いてありました。やっぱり事実として、一番初めに言ったことは答弁書に書いてあるわけですから、そのことと11月1日の見解が違うってことは納得できませんので、ぜひ説明会を開催するよう引き続き求めて欲しいと思います。


また、環境問題についてはこれからも提案を続けていきたいと思います。

区長:ご意見ということで捉えていいですか?

すいません、質問をちょっと確認させていただいて、意見だったかご質問だったか、ちょっと分からなかったもんですから。羽田の新ルートはご意見ということで捉えていいですか。個々のもご意見で、ということでよろしいですか。

大橋:言って(更に質問して)いいんでしょうか?

どうしましょうか? (持ち時間がないが)言って(更に質問して)いいんでしょうか。

区長:(羽田新ルートは「質問」ではなく「意見」扱いということで)

(羽田新ルートは「質問」ではなく「意見」扱いということで、区民健康保険料の)均等割の方だけ部長からお答えします。

雑感

大橋議員の孤軍奮闘…

江戸川区議40人(定員44人)のなかで、本気で羽田新ルート問題に対応しているのは、大橋美枝子議員(共産)だけのようだ(次表)。

羽田新ルートに係る定例会本会議一般質問実績

 

残念ながら、前の多田正見区長(5期、元江戸川区教育長)も現在の斉藤猛区長(1期、元江戸川区教育長)も毎回、全くと言っていいほど聞く耳を持たない答弁を繰り返していた。

大橋議員の質問「政府答弁書では、新しい管制方式で航空機の飛行時間の短縮に一定の効果があるとのことから、従来の海上ルートに戻すよう改めて国に働きかけるべき」に対して、斉藤区長は「新管制方式の運用による離発着便の増加に繋がるものではない、という見解を国交省が出しております」と反論した。

斉藤区長が反論の根拠とした国交省の見解とは、都が11月1日に主催した「羽田空港の機能強化に関する都及び関係区市連絡会」での国交省の次の説明を指している。

新たな後方乱気流管制方式によって、「需要が回復しても従来の海上ルートでも増便が可能である」というご指摘は事実と相違しており、国として認めた事実もない。

渋谷区議会定例会一般質問でも11月25日、長谷部区長が国交省から受けた説明を根拠に、羽田新ルートの運用停止要望に反論していた(国交省、政府答弁書の範囲を超えて説明!?)。

国交省の政府答弁書の範囲を超えた説明が独り歩きし始め、国交省の思惑通りの展開となっている。

 大橋議員には、「意見」ではなく、明確に「質問」で鋭く切り込んでほしかった。

江戸川区民は救われない

北風時に荒川沿いを北上する出発ルートは(7時~11時半・15時~19時)、南風時に都心を通過して羽田に向かう到着ルート(15時~19時)よりも運用される時間がはるかに長い。加えて、江戸川区では羽田新ルートが導入される以前から、南風で悪天候等により視界が悪く、通常のルートが使用できない時に限り江戸川区上空を通過する着陸ルートが運用されている。

通過機数・騒音発生回数の経年変化
羽田新ルート|江戸川区の騒音測定データを可視化」より

 

さらに、川崎ルートではNGのエアバス340が、荒川沿い北上ルートではOKとなっている。物言わぬ区長・区議のお陰で、江戸川区上空は離着陸ルートの草刈り場状態(川崎ルートで禁止されているA340、荒川沿い北上ルートはOK)。

江戸川区民はかなりの飛行騒音被害を受けているのだが、こんな区長と羽田新ルートへの関心が低い議員ばかりでは、江戸川区民は救われない……。

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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