前回の記事「課徴金制度は『おとり広告』を撲滅できるか」では、
公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会の収益構造を可視化し、違約金課徴収益が経常収益の4~12%を占める実態を明らかにした。
実は、不動産公正取引協議会は首都圏だけでなく、北海道から九州まで全国9地区に設置されている(各地区公取協の一覧)。今回は、市場規模で首都圏に次ぐ近畿圏を管轄する「公益社団法人 近畿地区 不動産公正取引協議会」の収益構造を、首都圏と比較しながら掘り下げる。
おとり広告対策の効果は、両地区でどう違うのか。データから見えてきた意外な事実とは?
※初投稿21年7月28日(更新25年8月6日:首都圏・近畿圏24年度データ反映)
広告停止作戦、近畿圏では空振り!?
首都圏と近畿圏の不動産公正取引協議会が公開する「情報公開」(首都圏、近畿圏)
から、「厳重警告及び違約金課徴」のデータを比較したのが下図だ。
首都圏では、広告掲載1か月以上停止措置が始まった2017年1月以降、違約金課徴の件数が急減。効果は明らかだ。一方、近畿圏では同措置が2017年8月に導入された後、翌年度に件数が減ったものの、その後増加。2020年度には首都圏を上回り、その後再び減少に転じた。
広告停止作戦は首都圏で「おとり広告」を抑え込んだが、近畿圏では効果が薄いのか? 両地区の違いが気になるところだ。

違約金収益、首都圏は近畿圏並みに縮小
件数だけでなく、金額ベースではどうか。「違約金課徴収益」の推移を両地区で比較した(下図)。
首都圏は件数が多い分、違約金収益も多い。しかし、件数の減少に伴い、2020年度以降は近畿圏と同水準まで落ち込んでいる。興味深いのは、1件当たりの違約金収益。首都圏ではじわじわと増える傾向が見られる。一件あたりの「重み」が増しているのだ。

近畿圏の違約金収益率、首都圏の2割以下
違約金課徴収益率(経常収益に占める割合)と経常収益の推移を比較した(下図)。
違約金課徴収益率(経常収益に占める割合)と経常収益の推移を比較した(下図)。首都圏の収益率は、広告停止措置開始(2017年1月)以降、大きく低下。一方、近畿圏では2017年8月の措置開始後、翌年度に低下したものの、翌々年度に一時上昇。その後再び減少し、2024年度では近畿圏(0.7%)が首都圏(3.8%)の2割に満たない水準にとどまる。

近畿圏の違約金収益率は首都圏より低い。おとり広告撲滅のインセンティブが、近畿圏では働きにくい構造なのではないか。この差は、両地区の不動産市場の特性や、協議会の運用姿勢に何を示唆するのか。引き続き注目したい。
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