先日の記事「課徴金制度は「おとり広告」を撲滅できるか」では、公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会の収益構造を可視化し、「違約金課徴収益」が経常収益の4~12%を占めている状況を解説した。
じつは不動産公正取引協議会は、首都圏だけでなく、北は北海道から南は九州まで、9つの地区ごとに設置されている(各地区公取協の一覧)。そこで本日は、首都圏の次に市場規模の大きい近畿圏を管轄している「公益社団法人 近畿地区 不動産公正取引協議会」の収益構造について、首都圏と比較する形で可視化・分析してみよう。
※投稿21年7月28日(更新24年7月4日:首都圏23年度・近畿圏22年度データ反映)
広告掲載1か月以上停止作戦、 近畿圏に効果なし!?
「首都圏不動産公正取引協議会」と「近畿地区不動産公正取引協議会」がそれぞれ公開している「情報公開」(首都圏、近畿圏)のページから、「厳重警告及び違約金課徴」データを拾って比較したのが次図。
首都圏の「厳重警告及び違約金課徴」の件数は、広告掲載1か月以上停止措置が開始(17年1月)された翌年度以降大幅に減少している。
一方、首都圏の5分の1程度で推移していた近畿圏の「厳重警告及び違約金課徴」件数は、広告掲載1か月以上停止措置が開始された(17年8月)翌年度に減少するが、その後増加し、20年度に首都圏を抜いたあと減少に転じた。
広告掲載1か月以上停止作戦は、首都圏には効果あるが近畿圏にはあまり効果がないのか……。
20年度以降の「違約金課徴収益」首都圏は近畿圏並みに減少
「厳重警告及び違約金課徴」を件数ではなく、金額ベースで見るとどうなるのか。首都圏と近畿圏の「違約金課徴収益」の推移を可視化してみた(次図)。
首都圏のほうが近畿圏よりも「厳重警告・違約金」の件数が多いぶん、「違約金課徴収益」も多い。ただ、首都圏の「厳重警告及び違約金課徴」の件数が減少傾向にあるため、20年度以降の「違約金課徴収益」は近畿圏並みに減少している。
ちなみに、「1件当たりの違約金課徴収益」でみると、首都圏のほうは漸増傾向が見られる。
23年度「違約金課徴収益率」近畿圏は首都圏の1.7倍
違約金課徴収益率(経常収益に占める違約金課徴収益の割合)と経常収益の推移を可視化してみた(次図)。
首都圏の違約金課徴収益率は、広告掲載1か月以上停止措置が開始(17年1月)された翌年度以降大幅に減少している。
一方、近畿圏の違約金課徴収益率は、広告掲載1か月以上停止措置が開始された(17年8月)翌年度に減少するが、翌々年度に一旦増加したあと減少。23年度の違約金課徴収益率は、近畿圏(5.3%)は首都圏(3.1%)の1.7倍。
経常収益に占める違約金課徴収益の割合が首都圏よりも高い近畿圏。近畿圏を管轄している近畿地区 不動産公取協に、おとり広告撲滅のインセンティブが働きにくいということはないのか……。
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