首都圏不動産公正取引協議会は2017年から年2回、「インターネット賃貸広告のおとり調査結果」を公表している。
同調査時期は多少変動はあるものの、5~6月と11~12月に実施されている。
※22年は1回(5~6月)のみ実施。
※投稿20年9月29日(更新24年7月6日:23年6月データ反映)
違反事業者の数・率の推移
まず、違反事業者の数・率の推移を可視化する(次図)。
調査対象業者数は、第1回(17年4~7月調査)こそ143社と多いものの、第2回以降は24~60社の範囲で推移している。
注目したいのは違反率(=違反があった事業者数÷調査対象事業者数)の変化だ。
第1回から第4回(18年10~12月調査)までは20%前後で推移し、第5回(19年5~6月調査)で8%まで低下。第6回(19年9~11月調査)で70.8%に跳ね上がったあと、徐々に減少しているのである。
※71%に跳ね上がったことについては、後述「AI導入の効果!?」。
違反物件の数・率の推移
次に、違反物件の数・率の推移を可視化する(次図)。
調査対象物件数は、第1回から第3回(18年5~6月調査)にかけて漸増したあと、第6回(19年9~11月調査)まで減少。
特徴的なのは、違反事業者と同様、調査対象物件の違反率(=違反があった物件数÷調査対象物件数)が第6回に15.6%まで跳ね上がっていることだ。
※15.6%に跳ね上がったことについては、後述「AI導入の効果!?」。
AI導入の効果!?
なぜ、第6回(19年9~11月調査)の調査で違反事業者率、違反物件率ともに跳ね上がったのか。
その答えは次の文章にヒントがある。
調査対象物件及び事業者
- 2019年9月から11月にかけて上記4サイトに掲載されていた賃貸住宅のうち、一定のロジックに基づき、契約済みの「おとり広告」の可能性が極めて高い物件、256物件を抽出し、これらの物件を掲載している事業者24社(27店舗)を調査対象とした。
「一定のロジックに基づき」とは、AI機能を使った調査であったことを示唆している。AI機能を使い、調査対象物件と事業者を絞り込んだ結果、違反率が上昇したのではなかろうか。
では、それ以前はどうしていたかというと、過去に違反したことがある事業者を対象に調査していた。
調査対象事業者
- 当協議会が過去に措置を講じた事業者のうち、25社(34店舗)を調査対象とした。
じつはLIFULL HOME’Sは18年3月28日に、自社サイトでは賃貸物件に対して「おとり物件自動検出システム」を稼働させていた。
首都圏不動産公正取引協議会としても、第6回調査からAI機能を導入したのではないのだろうか。
AI機能の導入で違反率は一旦低下したものの、第11回(22年5~6月調査)と第12回(23年5~6月調査)の違反率は9%にとどまっている。AIによる「おとり広告」絶滅作戦は道半ば……。
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