首都圏不動産公正取引協議会は9月25日、「インターネット賃貸広告の一斉調査報告(第7回) 」を発表。
たった1枚のニュースリリースなのだが、なかなか興味深い内容だ。
(1) 違反物件数
- 調査対象394物件のうち63物件(16%)が「おとり広告」と認められた。
(2) 違反事業者数
- 事業者別では、調査対象事業者33社のうち17社(51.5%)に「おとり広告」が認められた。
- また、店舗別では、調査対象店舗49店舗のうち22店舗(44.9%)の広告に「おとり広告」が認められた。
何が興味深いのか、第1回から第6回までの調査結果をひも解き、可視化してみよう。
違反事業者数・率の推移
まず、違反事業者数・率の推移を可視化する(次図)。
調査対象業者数は、第1回こそ143社と多いものの、第2回は52社まで急減し、第4回以降は30社前後で推移している。
注目したいのは違反率の変化だ。第1回から第4回は20%前後で推移し、第5回で8%まで低下したあと、第6回・第7回は71%・52%に跳ね上がっている。
( )内は調査期間終了月を示す。
違反物件数・率の推移
次に、違反物件数・率の推移を可視化する(次図)。
調査対象物件数は、第1回から第3回にかけて漸増したあと、第6回にかけて減少。
特徴的なのは、違反事業者と同様、調査対象物件の違反率が第5回・第6回に跳ね上がっていることだ。
( )内は調査期間終了月を示す。
第6回以降、AI導入!?
なぜ、第6回(調査期間:19年9月~11月)以降、違反事業者率、違反物件率ともに跳ね上がったのか。
その答えは次の文章にヒントがある。
調査対象物件及び事業者
- 2020年7月から8月にかけて上記4サイトに掲載されていた賃貸住宅のうち、一定のロジックに基づき、契約済みの「おとり広告」の可能性が極めて高い物件、394物件を抽出し、これらの物件を掲載している事業者33社(49店舗)を調査対象とした。
「一定のロジックに基づき」とは、AI機能を使った調査であったことを示唆している。AI機能を使い、調査対象物件と事業者を絞り込んだ結果、違反率が上昇したのではなかろうか。
では、それ以前はどうしていたかというと、過去に違反したことがある事業者を対象に調査していた。
調査対象事業者
- 当協議会が過去に措置を講じた事業者のうち、25社(34店舗)を調査対象とした。
(第5回調査)
じつはLIFULL HOME’Sは、いまから2年半も前(18年3月28日)に、自社サイトでは賃貸物件に対して「おとり物件自動検出システム」を稼働させていた。
首都圏不動産公正取引協議会としても、第6回調査(調査期間:19年5月~同年6月)からようやくAI機能を導入したのではないのだろうか。
ただ、AI機能で「おとり広告」の可能性が極めて高い物件394件を抽出したにしては(第7回調査)、実際の「おとり広告」は63件、違反率16%。AIとしての精度はあまり高くない……。
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