首都圏不動産公正取引協議会は、違法広告を撲滅してしまうと、経常収益4~12%占めている「違約金課徴収益」が入らなくなり赤字に向かうことにならないか。
首都圏不動産公正取引協議会の脅しが効いた!?
首都圏不動産公正取引協議会が「おとり広告」などの撲滅を強力に推進するためとして、違反者に対して不動産情報サイトへの広告掲載を1か月以上停止する「厳重警告及び違約金課徴の措置」を始めたのは17年1月から。
規約違反事業者への対応について
公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会は、昨今、新聞報道やテレビニュース等において、不動産のおとり広告が社会問題として非難を浴びている状況に鑑み、特にインターネット広告における「おとり広告」等の撲滅を強力に推進するため、不動産の表示に関する公正競争規約に違反し、厳重警告及び違約金課徴の措置を講じた不動産事業者に対して、当協議会に設置した「ポータルサイト広告適正化部会」の構成会社がそれぞれ運営する不動産情報サイトへの広告掲載を、原則として、1か月間以上停止する施策を平成29年1月度の措置から開始します。(以下略)
(「規約違反事業者への対応について」首都圏不動産公正取引協 16年11月16日)
首都圏不動産公正取引協議会の脅しが効いたのか、厳重警告及び違約金課徴の件数は18年度以降減少傾向を見せている(次図)。
※全てが「おとり広告」というわけではない。
首都圏不動産公正取引協議会が公開している「事業報告」を元に筆者作成
違約金課徴収益、18年度以降減少傾向
違約金課徴収益、ピーク時の4分の1
18年以降減傾向を見せ始めた厳重警告及び違約金課徴の件数。金額ベースではどうなのか。
首都圏不動産公正取引協議会が公開している「収支予算」と「収支報告(決算)」の文書をひも解き、可視化してみた(次図)。
17年1月から導入された広告掲載1か月以上停止作戦が功を奏したのか、それまで増加傾向にあった違約金課徴収益は16・17年の約2千万円をピークに減少。20年は5百万円を下回ろうとしている(ピーク時の4分の1)。
「違約金課徴収益」は12年度までは予算書に「0円」としか見込まれていなかったのだが、13年度以降は見込まれるようになった。
本来であれば、おとり広告などの違法広告については撲滅させることが建前だから、予算の段階で違約金課徴収益を見込むのはヘンなのだが。予算書段階で違約金課徴収益を見込んでおかないと、予算書としての収まりが悪くなってきたのであろうか。
経常収益に占める「違約金課徴収益」の割合、12%から4%へ
違約金課徴収益は、首都圏不動産公正取引協議会のフトコロをどの程度潤しているのか。
首都圏不動産公正取引協議会が公開している「収支報告(決算)」の文書をひも解き、可視化してみた(次図)。
年間の経常収益は1.4~1.7億円。うち約9割を会費が占めている。
経常収益に占める「違約金課徴収益」の割合は、16・17年の12%をピークに大きく減少し、20年度4%にまで減少している。
課徴金制度は「おとり広告」を撲滅できるか?
首都圏不動産公正取引協議会は、違法広告を撲滅してしまうと、経常収益4~12%占めている「違約金課徴収益」が入らなくなり赤字に向かうことにならないか。
首都圏不動産公正取引協議会が公開している「収支報告(決算)」の文書をひも解き、可視化してみた(次図)。
広告掲載1か月以上停止作戦が17年1月から導入されたことにより、18年以降の経常収益を悪化させ、20年度の収支(経常収益―経常費用)は約20万円にまで低下。黒字をギリギリ確保。
違法広告はそこそこ存在しているほうがいい、というようなことはないのか。
不動産公取協は、17年4月から不動産広告の調査業務の一部をLIFULLやアットホームなど、不動産情報サイトの運営に関係している企業に委託している(ポータルサイト広告適正化部会構成会社へ調査業務の一部を委託)。
調査の結果、表示規約違反が認められた場合には、当該広告を行った不動産事業者に対し一定の措置を講ずることとしている。
合法広告だろうが、違法広告だろうが、広告を掲載することで不動産情報サイト運営企業に利益をもたらす。不動産情報サイト運営企業に違法広告撲滅のインセンティブは働いているのか?
「タマゴを生む鶏を殺してしまっては元も子もない」ということはないのか――。
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