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羽田新ルート|東京都「航空機騒音調査に係る検討会(第2回)」をひも解く

羽田新ルートが20年3月29日から運用開始されたことにより、東京都が昨年12月22日に学識経験者を入れた「 航空機騒音に係る環境基準・指定地域」の見直しのための第1回検討会が開催された(羽田新ルート|東京都「航空機騒音調査に係る検討会(第1回)」をひも解く)。

今年の3月29日・30日に第2回検討会が書面開催されたことはほとんど知られていないのではないだろうか。

※第3回目の検討会の開催は、「航空需要や国の固定化回避検討会の状況を見て判断するという主旨の説明があった」と議員が都環境局に確認した(6月18日追記)。


もくじ

筆者が第2回検討会の開催を知った経緯

東京都環境局は羽田新ルートの運用が開始されて以降、羽田新ルート周辺の騒音測定局(5か所)で測定した騒音モニタリング結果(速報値)を祝祭日を除く毎日公表している。筆者はその速報値をグラフ化し、適宜ブログに投稿し続けている(羽田新ルート|東京都の騒音測定データを可視化※随時更新 )。

ところが、今年の4月1日以降、「測定地点の移設準備作業のため」として、北風時に羽田空港を出発して荒川に沿って北上するルートの騒音を測定していた小松川第2中学校に設置された測定局のデータが欠測する事態が生じているのだ。同測定局は暗騒音が大きい首都高7号線に隣接していて、筆者が以前からその測定データの適正に疑問を呈していた場所である(測定場所に隣接している首都高7号線の影響)。

最大騒音レベル(北風時)都測定データ
羽田新ルート|東京都の騒音測定データを可視化※随時更新」より

さすがに50日近くもデータ欠測し続けているのは、「測定地点の移設作業に時間がかかり過ぎではないか」と5月20日、江戸川区選出の都議さん(共産党)に向けてツイートしたところ同日、同都議さんから測定局移設に係る資料を教えていただき、第2回目検討会が開催されたことを知るに至ったのである。

 

第2回目検討会が開催されたことについては、東京都HPの新着情報にも、環境局HPの新着情報にも掲載されていないうえに、環境局HPの深い階層で「航空機騒音に係る環境基準」のページに埋もれていたので(次図)、羽田新ルートの情報収集のために高いアンテナを張っている筆者でさえ気が付くことができなかった。

 

第1回目の検討会のときも、筆者が東京都の公文書開示請求してようやく議事要旨がHPで公開されたという経緯がある(資料の公開までの経緯)。第2回検討会の存在を都民に積極的に知らせようとしない環境局の姿勢はもっと非難されてもいいのではないだろうか。

航空機騒音調査に係る検討会(第2回)

  • 第2回 会議次第
  • 資料1 東京国際空港における指定地域の見直し検討に係る騒音基礎調査等の時期の変更について
  • 資料2 東京国際空港騒音モニタリング地点の移設について(案)
  • 議事要旨

検討会資料をひも解く

第2回検討会として配布された資料のなかから、興味深い内容を中心に以下に整理する。

指定地域の見直し検討に係る騒音基礎調査等の時期の変更

「 現状の羽田空港において指定地域の見直し検討を進めると、本来の騒音状況を反映しない形で地域を指定してしまう可能性」があるため、「当面の間、騒音基礎調査の実施時期を後ろ倒しにする」としている。

  • 現在、羽田空港に係る騒音源である航空機の質的(航空機種)・量的(航空便数)変化が起こっており、平常時と大きく乖離
  • また、羽田空港の運用について、国が技術的な面で検討を進めており、今後、騒音の発生状況が大きく変化することも想定

(資料1の2枚目)

騒音モニタリング地点の移設

小松川第二中学校は暗騒音が大きく飛行騒音を適切に測定できていないことからモニタリング地点を小松川図書館に移設することになった。

第 1 回検討会において示した、東京国際空港周辺航空機騒音予備調査結果(令和 2 年 7 月28日から 8 月24日まで実施)において図1、図2に示すとおり江戸川区立小松川図書館の測定環境が良好であり、小松川第二中学校と比較するとより多くの航空機騒音が観測されていることから、別紙のとおりモニタリング地点を江戸川区立小松川図書館へ移設する。

(資料2の1枚目)

小松川第二中学校(次図)は暗騒音が大きいので、騒音発生回数が過小評価されている(小松川図書は飛行高度が高くなるので騒音レベルが小さくなることに留意)。

最大騒音レベル別・機種(大中小)別騒音発生回数比較


小松川第二中学校(青線)は小松川図書(赤線)より環境騒音が大きい(次図)。

小松川第二中学校(青線)は小松川図書(赤線)より環境騒音が大きい


移設距離は約450m(首都高7号線からの距離は約420m)。小松川図書での騒音測定値は首都高7号線からの影響は受けにくくなるが、飛行高度が高くなるので騒音レベルが小さくなることに留意する必要がある

移設距離は約450m(首都高7号線からの距離は約420m)

【参考】騒音対策区域に指定されるメリット※再掲

※21年3月13日投稿記事「羽田新ルート|東京都「航空機騒音調査に係る検討会(第1回)」をひも解く」の再掲

この検討会は、「航空機騒音調査に係る検討会設置要綱」(改正13年7月25日)に基づき設置されている。同検討会の目的は「都内の飛行場に係る環境基準地域類型指定地域について技術的な助言等を得る」こと。

第2条(設置目的)

  • 「航空機騒音に係る環境基準について(昭和48年12月27日環境庁告示第154号)」を受け、都内の飛行場に係る環境基準地域類型指定地域について技術的な助言等を得るため、検討会を設置する。

じつはこの条文には大切なことが記されている。以下に解説する。

環境基本法第16条(環境基準)2項で、環境基準地域類型指定地域について、航空機騒音は適用除外とされている。

 

では、航空機騒音はどうなるのかといえば、「航空機騒音に係る環境基準(昭和48.12.27 環境庁告示第154号)」の地域の類型ごとに知事が指定する地域は「航空機騒音に係る環境基準の地域類型の指定(1976年11月1日告示第1068号)」で定められることになっている。

本検討会の結果を踏まえ「航空機騒音に係る環境基準の指定地域」に指定されると、住宅防音工事や生活保護等世帯空気調和機器稼働費など、国からの補助が受けられるメリットがあるのだ(次図)

騒防法に基づく空港周辺環境対策事業
騒防法に基づく空港周辺環境対策事業|国交省

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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