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不都合な真実『住みたいまちランキングの罠』

住みやすいまちをめぐる様々な誤解や”不都合な真実”に光を当てたという、行政評論家 大原瞠氏の新書『住みたいまちランキングの罠』(光文社新書) 

どこに住めばいいのか頭を悩ませている人にお勧めの1冊。


もくじ

子供医療費が無料になる都心に住んだほうが実は損

千代田区と横浜市を例に、年間3万円程度の医療費助成に目を眩ませることなく、住むまちを選んだほうが賢いという著者の見方。

子供医療費が無料になる都心に住んだほうが実は損

(前略)たとえばの話ですが、子どもの医療費負担が高校3年生までタダの束京都千代田区と、厳密には小学校3年生(大目に見ても6年生)までしかタダにならない横浜市を比べて、住まいを決める際にはどちらを選んだほうが得でしょうか。

 一見、6~9年開の違いは大きいなあと思うかもしれませんが、先ほどの図表1-4に基づき想定される、平均的な年間医療費自己負担額は10~14歳が約2万7600円、15~18歳は約2万1600円です。

一方、両地域の不動産価格水準を考えてみてください。支払う住宅ローンや家賃・駐車場代の差は、少なくとも毎月数万円、年間では数十万円以上の差が出ますよね。あくまで、きわめて単純化した金勘定だけでいえば、年間3万円程度の医療費助成に目を眩ませることなく、住むまちを選んだほうが賢いといえないでしょうか

(P38-39/第1章 「子育てしやすい」をアピールするまちのウソホント)

※住む場所は学区で選べというのは、スタイルアクト社の代表取締役 沖 有人氏。

年収上位小学校を詳説!『マンションは学区で選びなさい』

ガラの悪いイメージのまちと犯罪データの不一致

川崎市はガラが悪い、足立区は犯罪が多いというのは、あくまでイメージであって、データはそうではないことを示しているという。

ガラの悪いイメージのまちと犯罪データの不一致

(前略)川崎市はガラが悪い、物騒だ、というイメージは、あくまでイメージであって、数字で証明されてはいないのです(むしろ川崎市は、大阪市や福岡市など、全国の20政令指定都市の中でも毎年トップをうかがう低犯罪都市であり、数字の上では明らかに安全なまちの部類に入ります)。

 また、足立区についても、かつてはもっと刑法犯認知件数が多かったのですが、区を挙げての「ビューティフルーウィンドウズ運動」などの取組により犯罪の発生抑止に努め、図表3-2の通り、ここ10年ほどの間に件数は激減しています。(以下略)

(P68/第3章 安全・安心なまちの裏事情)

※共助パワーが期待できるので安心できる下町。安全だが安心できない都心のタワーマンション。これからは下町の時代……。

これからは下町の時代!?『なぜか惹かれる足立区』

吉祥寺は、繁華街であるがゆえに実は物騒なまち

吉祥寺にとって最大の「不都合な真実」は、繁華街であるがゆえに実は物騒なまちであること。吉祥寺が属する束京都武蔵野市の人ロ1万人当たりの刑法犯認知件数は高めだという。

吉祥寺が住みやすいまちなのは「憧れ感」

(前略)つまり、「住みたいまち」ナンバーワンである吉祥寺とは、実際の利便性よりも、住むこと自体、あるいはそれを人に自慢できることによる精神的満足度などを加味した、住めたらいいね、住んでいる人がうらやましいね、といった感覚が雪だるま式に膨らみ、独り歩きした結果であって、アンケートで回答した人さえも、本当にそこまで住みたいと思っているから答えたわけではなく、彼らがみな実際に吉祥寺の物件探しをするとは限らないと考えられます。(中略)


 しかし、これら以上に、吉祥寺にとって最大の「不都合な真実」は、繁華街であるがゆえに実は物騒なまちであることだと著者は考えています。第三章で指摘した通り、吉祥寺が属する束京都武蔵野市の人ロ1万人当たりの刑法犯認知件数は高めです。漠然としたイメージはどうであれ、こういう数字はウソをつきませんので、吉祥寺は決して安全なまちとはいえないのです。遊びや買い物に出かけるまちとしてはありですが、子育てを含む、日々の生活を行うまちとしてはどうなのか、考えさせられますね。

(P145-148/第6章 イメージのよい、住みたいまちは本当に暮らしやすいか?)

※吉祥寺人気にあやかろうと、吉祥寺から遠く離れたエリアの住人でも「吉祥寺に住んでいる」ようなことを口にする。

「もうここ吉祥寺ちゃいますよ」 

本書の構成

全9章、237頁。

  • 第1章 「子育てしやすい」をアピールするまちのウソホント
  • 第2章 「子育てしやすい」環境とは何か
  • 第3章 安全・安心なまちの裏事情
  • 第4章 便利なまちにも落とし穴がある
  • 第5章 迷惑施設のあるまちは、意外に住みやすい?
  • 第6章 イメージのよい、住みたいまちは本当に暮らしやすいか?
  • 第7章 マンション購入を煽る「常識」に騙されるな
  • 第8章 まちの魅力向上と、あるべき住民負担について考える
  • 最終章 行政が「不毛な住みたいまちアピール」を止めて、本当にやるべきこと

住みたいまちランキングの罠

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2023年6月1日、このブログ開設から19周年を迎えました (^_^)/
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