読売新聞は8月22日、「(都は)国際競争力向上のためには首都空港のさらなる機能強化(第5滑走路増設)が不可欠だと判断した」ことを報じた。
落下物・墜落事故の危険リスクや騒音などの影響を受ける地区はさらに拡大する。
なぜ都は「さらなる機能強化が不可欠だと判断」したのか
読売は8月22日、とんでもない記事を掲載。
都は、国際競争力向上のためには首都空港のさらなる機能強化(第5滑走路増設)が不可欠だと判断したというのである。
羽田滑走路 増設協議へ…都と国 機能強化へ5本目
東京都は、発着枠の不足が課題となっている羽田空港で5本目となる滑走路の増設に向け、国土交通省との本格的な協議に着手する方針を固めた。国際競争力向上のためには首都空港のさらなる機能強化が不可欠だと判断した。都は2040年代までの都政長期計画を20年東京五輪・パラリンピック後に策定する方針で近く公表するたたき台に盛り込む。(中略)
国交省の検討によると、5本目の滑走路は、複数案のうち現在のC滑走路に並行して東京湾の沖合に増設する案が最も機能強化の効果が高く、その場合、発着回数はさらに年間約13万回増える見込み。(以下略)(読売新聞 8月22日)
なぜ、さらなる機能強化(第5滑走路増設)が不可欠だと判断したのが国交省ではなくて、東京都なのか?
来年3月の羽田新ルートの運用開始であれだけ苦労してきた国交省を見ているに、わざわざ都の役人が自発的に「さらなる機能強化が不可欠だと判断」することなどあるのだろうか。来年の都知事選の再選を目指す小池都知事が政権に貸しを作ったということはないのか。
つまりこういうことだ。政府は「(2020年以降に)『羽田空港に関する更なる増便』を行うことを検討していない」と答弁していることから(19年2月19日答弁書)、政府みずから第5滑走路の増設を言い出しにくい。そこで、政府は小池都知事の再選協力と引き換えに、都に「さらなる機能強化が不可欠だと判断」と言わしめたのではないのか。まあ、あくまでも推測の域は出ていないのだが……。
都議の先生方には、9月から始まる定例会で、そのあたりをシッカリと追及してほしいものだ。
さらなる機能強化(第5滑走路増設)の悪夢
第5滑走路(E滑走路)は、現在あるC滑走路に並行して設置される案が最有力。工事費6,200~9,700億円程度、工事期間10~15年程度(地域との合意、関係者調整、環境アセスメントに必要な期間を除く)とされている。
第5滑走路(E滑走路)が運用されると、明治神宮外苑を南下して、青山一丁目、国立新美術館、六本木ヒルズ毛利庭園、麻布十番、三田の慶応、品川埠頭の上空を通過することになる(次図)。
現在進行中の羽田新ルート計画(年間3.9万回増便)はほんの序章に過ぎない。第5滑走路(E滑走路)の増設で国際線の発着枠はさらに年間13万回も増加するからである(次図)。
地域の住民には、第5滑走路(E滑走路)の悪夢が待っている。
第5滑走路到着ルートが通過する地域名
「南風時のE滑走路到着ルート(推定)」に町丁目レベルの行政境界マップに重ねることにより、E滑走路到着ルートが通過する地域名が分かる。
たとえば、港区では落下物・墜落事故の危険リスクや騒音などの影響を受ける地区が拡大する(次図)。
拡大図(PDF:383KB)
第5滑走路(E滑走路)到着ルートが通過するのは17地域。うちC滑走路到着ルートも通過するのは2地域(朱書き)。
- 第5滑走路(E滑走路)到着ルート(17地域)
北青山2丁目、南青山2丁目、六本木7丁目、西麻布1丁目、西麻布3丁目、元麻布3丁目、元麻布2丁目、元麻布1丁目、南麻布1丁目、南麻布2丁目、三田5丁目、三田4丁目、高輪2丁目、芝浦4丁目、港南2丁目、港南1丁目、港南4丁目 - C滑走路到着ルート(15地域)
南麻布3丁目、南麻布4丁目、南麻布5丁目、西麻布2丁目、西麻布4丁目、南青山3丁目、南青山4丁目、南青山6丁目、北青山3丁目、高輪1丁目、高輪2丁目、高輪3丁目、白金台2丁目、白金台3丁目、港南2丁目
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