2020年東京オリンピック・パラリンピック開催以降の方策として、第5滑走路(E滑走路)増設計画による増便が検討されているのに、なぜ政府は「更なる増便」を行うことを検討していないと回答したのか?
政府:「更なる増便」を行うことを検討していない
松原仁衆議院議員が5月7日に提出した「羽田空港への低空飛行ルートの採用方法に関する質問主意書」。
「羽田空港に関する更なる増便」を行うことを検討していない、という政府答弁。
質問
関係地域の個人、団体の中には、時間や天候によって低空飛行が限定された本計画に対し消極的な賛成をしている場合も極めて多いと認識している。
政府として現在の計画を超えて、2020年以降に羽田空港に関する更なる増便を検討しているか。もししている場合、何年度を目途に何便程度を想定しているかご答弁いただきたい。
回答
政府としては、現時点において、御指摘の「現在の計画を超えて」「羽田空港に関する更なる増便」を行うことを検討していない。
※詳しくは、「羽田新ルート|質問主意書(低空飛行ルートの採用方法)」参照。
第5滑走路(E滑走路)増設計画が存在しているのだが…
「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」が14年7月に策定した「中間的な取りまとめ」には、2020年東京オリンピック・パラリンピック以降の方策として、C滑走路に平行してセミオープンパラレルの位置に第5滑走路(E滑走路)を増設し、都心上空を飛行するルートが検討されている。
滑走路増設案は、空港処理能力拡大効果、工事費・工事期間、既存施設への影響などを総合的に勘案し、現在の 4 本の滑走路と平行に 1 本の滑走路を増設する場合の諸ケースを技術的に検証した。(中略)
空港処理能力試算値からは、C滑走路に平行してセミオープンパラレルの位置に増設する案が最も優位であると考えられる。
「中間的な取りまとめ」本文P17)
※詳しくは、「羽田新ルート|第5滑走路(E滑走路)増設の悪夢」参照。
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催以降の方策として、第5滑走路(E滑走路)増設計画による更なる増便が検討されているのに、なぜ政府は「更なる増便」を行うことを検討していないと回答したのか?
現時点において、「検討していない」だけであって、「将来増便しない」とは一言も言っていないという詭弁もさることながら、じつはこの政府答弁は、もっと奥が深い……。
政府答弁書に見るご飯論法
政府の回答で、「現在の計画を超えて」とカッコ書きにされているところがミソだ。カッコでくくって「現在の計画」に限定したうえで、「更なる増便」を検討していないというのである。
前提条件を限定したうえで答えるというのは、政府が得意とするご飯論法だ。ご飯論法とは、「朝ごはん食べましたか?」という質問に対して、「(パンは食べたが)ご飯は食べていません」と論点をズラす不誠実な論法のこと。
今回の政府答弁のどこが、ご飯論法なのか?
「現在の計画」とは、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて運営を開始しようとしている羽田新飛行経路案のことを指している。
つまり「現在の計画」は、「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までに実現し得る方策」に限定しているのであって、「2020年東京オリンピック・パラリンピック開催以降の方策」については質問された範囲外としているロジックなのだ。
わざわざ「2020年以降に羽田空港に関する更なる増便を検討しているか」と、2020年以降の増便の可能性を問われているのだが、「更なる増便」を行うことを検討していないとする政府答弁。ご飯論法としては成立している。
松原仁先生におかれましては、このご飯論法答弁を放置せずに、更なる追加質問で、鋭く切り込まれることを期待いたしたく。
あわせて読みたい
これまでに松原仁議員が提出した、羽田新ルートに係る質問主意書関連の記事:
- 19年5月23日:質問主意書(低空飛行ルートの採用方法)
- 19年5月23日:質問主意書(上皇陛下の仮住まい対策)
- 19年2月26日:質問主意書(羽田空港への低空飛行問題)
- 18年12月18日:質問主意書(羽田空港新飛行ルート案の変更)