周辺の多くの住民が落下物・墜落事故の危険リスクや騒音などの影響を受ける羽田新ルート計画。滑走路を増設すれば問題が解決するのかと思いきや、そうではないという話。
国交省の見解「新しい滑走路を作ったとしても…」
2020年東京オリンピック・パラリンピックで羽田新ルートの増便が実現したあと、さらに第5滑走路(E滑走路)を増設し増便する計画があることをご存じだろうか。
国交省が運営しているサイト「羽田空港のこれから」に公開されているFAQ冊子v.5.1.2に、新たな滑走路については「飛行経路を適切に設定しなければ便数を増やすことはできない」と記されている(P32)。
Q10 新たな滑走路を作ればよいのではないですか。
- 東京湾上空や滑走路の周辺は大変混雑しています。
- 仮に将来、新しい滑走路を作ったとしても、滑走路の使い方を見直し、飛行経路を適切に設定しなければ便数を増やすことはできないことがわかっています。
適切な飛行経路の設定とはどんなものなのか? 残念ながら滑走路増設について、これ以上の記述はない。
C滑走路に平行したセミオープンパラレル配置案
ところが、羽田新ルート計画案の元となった「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」が策定した「中間的な取りまとめ」(14年7月)の本文(P17)には、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催以降の増便方策として、「C滑走路に平行してセミオープンパラレルの位置に増設する案が最も優位である」と結論付けられている。
滑走路増設案は、空港処理能力拡大効果、工事費・工事期間、既存施設への影響などを総合的に勘案し、現在の 4 本の滑走路と平行に 1 本の滑走路を増設する場合の諸ケースを技術的に検証した。(中略)
空港処理能力試算値からは、C滑走路に平行してセミオープンパラレルの位置に増設する案が最も優位であると考えられる。
C滑走路に平行したセミオープンパラレルの位置とは、参考資料P39に掲載されている「滑走路の配置案」のうち、「③C滑走路に平行」とされているものである(次図、ピンク線囲み)。
工事費6,200~9,700億円程度、工事期間10~15年程度(地域との合意、関係者調整、環境アセスメントに必要な期間を除く)とされている。
上図の「③C滑走路に平行」を拡大したのが次図(ピンク線囲みが第5滑走路(E滑走路))。
新滑走路の増設については、国交省だけでなく東京都も18年10月29日に公表した「東京と日本の成長を考える検討会」報告書の本文のなかで、新滑走路増設の必要性を掲げている(P26)。
羽田空港のポテンシャルを最大限発揮させるとともに、東アジアの随一のハブ空港として機能させるためには、羽田空港の更なる機能強化に取り組み、国際線の増設や新滑走路増設などにより空港容量を拡大していく必要がある。
第5滑走路(E滑走路)が影響する地域
では、5滑走路(E滑走路)がC滑走路に平行してセミオープンパラレルの位置になった場合、同滑走路は都心のどのあたりを飛行するのか?
セミオープンパラレル(760m以上間隔)とされているので、次図のような飛行ルートが推定される。
すなわち、南風時のE滑走路到着ルートとしては、明治神宮外苑を南下して、青山一丁目、国立新美術館、六本木ヒルズ毛利庭園、麻布十番、三田の慶応、品川埠頭の上空を通過するのである。
(国交省がFAQ冊子v.5.1.2で公表している「南風時の新飛行経路案」にE滑走路到着ルート(推定)を追記)
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までに実施される羽田新ルート計画の影響を受ける港区民は3割(7万人)。でも、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催以降、第5滑走路(E滑走路)が運用されるとその被害はさらに広まることになる。
港区民にとって、現在進行中の羽田新ルート計画はほんの序章に過ぎない。第5滑走路(E滑走路)の悪夢が待っている。
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